「去年見たときはもっと安かったはずなのに」——ゲーミングPCを調べ直した人が、いま共通して抱く感覚だと思います。実際そのとおりで、グラフィックボードもBTO完成品も、この数か月で明確に値上がりしています。

ただ、値上がりの話は感覚論になりがちです。「4割値上げ」といった見出しだけが流れてきて、では自分が買おうとしている20万円台のPCが実際いくらになったのかは、誰も教えてくれません。

この記事では、2026年8月10日時点の実売価格を、こちらでショップ公式ページを直接見て記録した数字でまとめます。あわせて、当サイトが7月に記録した価格と比較して、この3週間で何が起きたのかも示します。そして最も重要な点として、いま見えている値上がりは、まだ第一波にすぎないという話をします。

先に結論

長く待てば安くなる、という展開はまず期待できません。理由は単純で、値上がりの原因が需要ではなく部品の調達コストそのものにあるからです。

こういう人判断理由
いま必要としている買ってよい待っても下がる材料がなく、むしろ第二波が控えています
1〜2か月なら待てるセールを狙う需要は冷えており、在庫調整のセールは出ます
半年〜1年先の話いま考えなくてよい相場が読めません。時期が来てから調べ直すのが賢明です
予算を上げるか迷っている早めに決める上位GPUほど値上がり率が高く、待つほど届かなくなります

「買い時を待つ」という戦略は、価格が波打っている相場でこそ有効です。いまは波ではなく、下からじりじり押し上げられている状態なので、待つこと自体があまり報われません。

グラボ単体はどれだけ上がったか

まずパーツ単体から見ます。グラフィックボードの最安価格を日次で追跡しているデータ(2026年8月10日時点)を整理すると、こうなります。

GPU現在の最安直近30日6か月間の最安値最安値からの上昇
RTX 5060 8GB59,600円+10.8%49,980円+19.2%
RTX 5060 Ti 8GB69,600円+12.3%59,800円+16.4%
RTX 5060 Ti 16GB103,800円+12.9%81,800円+26.9%
RTX 5070 12GB108,799円+13.6%94,980円+14.5%
RTX 5070 Ti 16GB176,800円+13.2%152,980円+15.6%
RTX 5080 16GB238,800円+23.5%193,414円+23.5%

全モデルが直近30日で上昇しています。注目したいのは上位モデルほど上昇率が高いことで、RTX 5080は1か月で23.5%も上がりました。半年間の最安値と比べると、RTX 5060 Ti 16GBが+26.9%と最も開いています。

つまり、「もう少し予算を足して上のGPUに」という考え方のコストが、月単位で上がり続けているわけです。迷っている間に、狙っていたランクが予算の外に出ていく。これがいま起きていることです。

BTO完成品の実売価格

では完成品はどうか。ここは基準を固定して測ります。ドスパラ(GALLERIA)の公式ページで、各GPU帯の最安構成を本日(2026年8月10日)直接確認しました。ショップを1社に固定するのは、月ごとに比べたときに数字がぶれないようにするためです。

GPU最安の実売その価格で載る構成型番
RTX 5060204,980円Ryzen 7 5700X+16GB DDR4+500GBXGR7M-R56-GD
RTX 5060 Ti 16GB234,980円Ryzen 7 5700X+16GB DDR4+500GBXGR7M-R56T16G-GD
RTX 5070284,980円Ryzen 7 7700+16GB DDR5+500GBXPR7M-R57-GD
RTX 5070 Ti309,980円Ryzen 7 7700+16GB DDR5+500GBXPR7M-R57T-GD
RTX 5080399,980円Ryzen 7 7700+16GB DDR5+1TBXPR7A-R58-GD

まず目を引くのが、エントリーであるRTX 5060搭載機ですら20万円を超えていることです。しかもその20万4,980円で載るのは、2022年発売のRyzen 7 5700XにDDR4メモリ、ストレージは500GB。「20万円あればそれなりのゲーミングPCが買える」という感覚は、もう通用しません。

そしてもうひとつ、最安構成はどれも割り切った内容だという点を強調しておきます。表の5モデルのうち4モデルはストレージが500GBです。同じRTX 5060搭載機でも、ストレージを1TBにしたモデル(FGR7M-R56-W)は23万4,980円で、500GBとの差は3万円あります。

つまり表の数字は「そのGPUを積んだ最も安い形」であって、快適に使える標準構成の価格ではありません。ここを混同したまま予算を組むと、注文画面で数万円の上振れに直面します。

なお、価格はショップによって大きく変わります。同じGPUでも数万円の差が出るのは珍しくないため、実際に買うときは必ず複数社を比較してください。この記事で1社に固定しているのは、あくまで時系列で比べるための定点として扱うためです。

23日で3万5,000円上がった実例

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

当サイトでは記事執筆の前に必ずBTO各社の実売価格を確認し、その結果を日付とともに記録しています。2026年7月18日に確認した際、ドスパラのRTX 5070搭載機は廉価CPU構成で24万9,980円からでした。

そして本日、同じドスパラのRTX 5070搭載機一覧を確認したところ、最安は28万4,980円になっていました。

確認日ドスパラ RTX 5070搭載機の最安
2026年7月18日249,980円
2026年8月10日284,980円+35,000円(+14.0%)

23日間で3万5,000円、率にして14%です。同じショップの、同じGPU帯の、同じ「最安構成」という条件で比べています。

体感で「高くなった気がする」という話ではなく、実際に3週間でこれだけ動いています。そしてこの間、特別なニュースがあったわけでもありません。日々じりじりと上がっているだけです。

同じ期間、RTX 5060 Ti 16GB搭載機についても、7月18日時点では複数ショップを横断して19万9,800円からという記録が残っていましたが、現在ドスパラの最安は23万4,980円です。こちらは比較の基準(ショップ横断か単一ショップか、構成の内容)が揃っていないため上昇率としては扱いませんが、下限が切り上がっている傾向は共通しています。

ちなみに今回の調査では、他媒体が「RTX 5060搭載で18万7,000円から」と紹介していたモデルを確認したところ、現在の構成はRTX 5060ではなくRadeon RX 9060に変わっていました。値上がり局面では構成の入れ替えも頻繁に起こるため、まとめ記事の価格をそのまま信じるのは危険です。この記事の数字をすべてショップ公式ページで直接確認しているのは、そのためです。

なお値上がりの度合いはメーカーで差があり、GeForce側のほうが激しくなっています。その結果どうなったかはRadeonは買いか(単体は8万円安いのにBTOでは5,000円差)で検証しました。

値上げはどこから来ているのか

原因をたどると、話は上流のメーカーに行き着きます。時系列で並べると、連鎖がはっきり見えます。

2026年7月 - AMDがAIB各社へ約10%の値上げを通知
グラフィックボードを製造するメーカー(AIB)向けの供給価格が上がりました。この時点ではまだ店頭価格に大きくは反映されていません。
2026年7月下旬 - NVIDIAの値上げ幅が判明
GeForce向けGPUキットの値上げ幅がVRAM 2GBあたり約19ドルと報じられました。適用は2026年第3四半期からで、VRAMの調達価格が従来のほぼ2倍に達したことが理由とされています。
2026年8月1日 - 国内代理店が卸価格を改定
CFD販売がGIGABYTE製グラフィックボードの国内卸価格を、8月1日受注分から現行比で約120〜140%へ引き上げました。対象はRTX 5000シリーズやRX 9000シリーズなど。未出荷の注文残についても、従来価格での確保が難しい場合はキャンセルを相談するとしています。
そして完成品へ
パーツの仕入れ値が上がれば、BTO完成品の価格もそれに追随します。上で示した3週間で3万5,000円という動きは、この連鎖が下流に届いた結果です。

ここで冷静に見ておきたいのが、卸価格の改定と店頭価格は同じものではないということです。CFDの改定は法人向けの卸売価格に関するもので、小売価格が同じ日に一斉に20〜40%上がると決まったわけではありません。実際の反映時期と幅は、各店の在庫状況や仕入れ条件によって変わります。

とはいえ、仕入れ値が上がって小売価格が据え置かれる状態が長く続くことはありません。時間差はあっても、方向は決まっています

「16GB版を選べ」の前提が崩れつつある

ここは実務的に効いてくる話なので、独立して書いておきます。

NVIDIAの値上げはVRAM 2GBあたり約19ドルという形をとっています。つまり値上げ額はVRAM容量に比例します。搭載量別に換算すると、次のようになります。

VRAM容量想定される上乗せ額該当モデルの例
8GB約1.2万円RTX 5060 / RTX 5060 Ti 8GB
12GB約1.9万円RTX 5070
16GB約2.5万円RTX 5060 Ti 16GB / RTX 5070 Ti / RTX 5080
32GB約5万円RTX 5090

これまで当サイトを含め、多くの解説が「RTX 5060 Tiの8GB版と16GB版は価格差がわずかなので、迷わず16GB版を選ぶべき」と書いてきました。VRAM 8GBでは足りない場面が増えている以上、これ自体は正しい助言でした。

ただ、その前提は8GB版と16GB版の価格差が小さいことです。現在のグラボ単体の最安価格を見ると、RTX 5060 Ti 8GBが6万9,600円、16GB版が10万3,800円で、差は3万4,200円あります。そしてVRAM課金が本格適用されれば、この差はさらに開く方向に動きます。

とはいえ、結論として16GB版を推す方針は変えていません。VRAM 8GBは近年のタイトルで足を引っ張る場面が明確にあり、そこを削ると本末転倒だからです。変わったのは助言の理由づけのほうで、「差額がわずかだから」ではなく「差額を払ってでも必要だから」に変わりました。BTO完成品での価格差は各社の構成によって変わるため、注文前に8GB版と16GB版の価格差を必ず確認してください。

需要のほうは冷え込んでいる

値上げが続く一方で、買う側は明確に離れ始めています。

AMDの2026年第2四半期決算では、ゲーミング部門の売上が前年同期比31%減の7億7,900万ドルでした。CEOのLisa Su氏は、業界全体の部品コスト上昇がグラフィックボードの価格を押し上げ、需要の重しになったと認めています。同社は下半期もゲーミング売上が20%以上減少すると見込んでいます。

これは購入を検討している側にとって、悪い話ばかりではありません。需要が落ちれば在庫が積み上がり、在庫が積み上がればセールが出るからです。実際、値上げ局面でもBTO各社のセールは継続しています。

ただし期待しすぎないほうがよいのは、これがコスト構造の変化による値上がりだという点です。売れないから元の値段に戻す、という調整が効きにくい。セールで一時的に下がることはあっても、半年前の水準に戻ることは考えにくいと見ておくのが現実的です。

いま見えているのは第一波にすぎない

この記事で最も強調したいのがここです。

上に挙げた「30日で1割〜2割」「23日で3万5,000円」という数字は、AMDの通知とメモリ高騰が反映された分です。NVIDIAのVRAM値上げ(第3四半期から適用)と、CFDの卸価格改定(8月1日受注分から)は、まだ店頭価格に完全には行き渡っていません。

参考として、報じられている値上げ後の想定価格は次のとおりです。

GPU報道時点の最安値上げ後の想定8月10日の実際
RTX 5060約5.5万円6万〜6万8,000円程度59,600円
RTX 5070約10万円12万円以上108,799円
RTX 5090約70万円75万〜80万円程度

この見通しが報じられたのは7月下旬です。右端に本日の実売を並べてみると、RTX 5060はすでに想定レンジの入口に到達しています。予測が外れているのではなく、予測どおりに進行している最中だと読むべき数字です。

しかも値上げの対象は、GDDR7を採用する現行のRTX 5000シリーズだけではありません。GDDR6を使う旧世代モデルまで含まれる見通しとされています。「型落ちを安く買う」という逃げ道も、以前ほど確実ではなくなります。

この数字は現時点では見通しであり、実際にどこまで反映されるかは各社の判断次第です。ただ、下がる方向の材料が見当たらないことだけは確かです。

それでも買うなら、どう買うか

値上がり局面での立ち回りを整理します。

必要な時期が決まっているなら、待たない
半年後に買うつもりでも安くなる根拠がありません。使う予定が決まっているなら、早いほうが安く買える可能性が高い局面です。
GPUのランクを下げるより、他を削る
ゲーム性能を決めるのはGPUです。予算が足りないときは、ストレージを1TBから500GBに、メモリを32GBから16GBに落とすほうが、GPUを一段下げるより後悔が少なくなります。ストレージとメモリは後から増設できますが、GPUの載せ替えは手間もコストも大きいためです。
セールは積極的に使う
需要減で在庫調整が起きやすい局面です。各社のセール周期はゲーミングPCのセール時期とお得な買い方にまとめています。
複数社を必ず比較する
同じGPUでも、ショップによって数万円変わります。さらに同じショップの中でも、筐体グレードやストレージ容量で数万円動きます。1社・1モデルだけ見て決めないでください。
中古・型落ちは慎重に
値上がりで相対的に魅力が増して見えますが、旧世代GPUも値上げ対象に含まれる見通しで、中古相場も連動して上がりやすくなります。判断材料は中古ゲーミングPCは買っても大丈夫かを参照してください。

よくある失敗

半年前の相場感覚のまま予算を組む
相場は数か月単位で明確に動いています。過去の記事やまとめサイトの価格をそのまま信じず、必ず現在の実売を確認してください。この記事の数字も2026年8月10日時点のものです。
「4割値上げ」の見出しをそのまま受け取る
報じられたのは法人向け卸価格の改定です。店頭価格が同じ日に同じ幅で上がるわけではありません。
最安価格だけを見て予算を決める
最安構成はストレージ500GBや旧世代CPUといった割り切った内容です。標準的な構成では数万円上乗せされます。
「そのうち下がるだろう」で先送りする
原因が部品の調達コストにあるため、需要が減っても価格は戻りにくい構造です。待つこと自体にコストがあると考えてください。
予算内に収めるためにGPUを下げる
ゲーム性能への影響が最も大きいのがGPUです。削る順番はストレージ、メモリ、CPU、最後にGPUです。

よくある質問

Q.ゲーミングPCはいつまで値上がりしますか?

A.原因であるメモリ・VRAMの供給不足は2028年まで続くとの見通しが出ています。少なくとも2026年内に元の水準へ戻る材料は見当たりません。詳しくはメモリ不足は2028年まで続く?にまとめています。

Q.いま買うべきですか、待つべきですか?

A.使う予定が決まっているなら買ってよい局面です。待って下がる根拠がなく、むしろNVIDIAのVRAM値上げという第二波が控えています。1〜2か月なら待てるという場合は、セールを狙うのが現実的です。

Q.どのくらい値上がりしたのですか?

A.グラフィックボード単体では直近30日で1割〜2割超です。BTO完成品では、当サイトの記録でドスパラのRTX 5070搭載機の最安が7月18日の24万9,980円から8月10日の28万4,980円へ、23日間で3万5,000円(14%)上昇しました。

Q.なぜグラボがこんなに上がっているのですか?

A.AIデータセンター向けの需要でメモリの供給が逼迫し、VRAMの調達価格が従来のほぼ2倍になったためです。NVIDIAはこれをVRAM 2GBあたり約19ドルという形でAIB各社への供給価格に転嫁する方針で、国内代理店の卸価格改定も続いています。

Q.予算が足りないとき、どこを削ればいいですか?

A.ストレージ、メモリ、CPUの順です。GPUは最後まで守ってください。ストレージとメモリは後から増設できますが、GPUの載せ替えは手間もコストもかかります。

Q.型落ちGPUや中古なら安く買えますか?

A.以前ほど確実ではありません。値上げの対象はGDDR7の現行世代だけでなく、GDDR6を使う旧世代モデルにも及ぶ見通しとされています。新品が上がれば中古相場も連動して上がりやすくなります。

Q.RTX 5060 Tiは8GB版と16GB版のどちらを選ぶべきですか?

A.16GB版です。ただし理由が変わりました。以前は「価格差がわずかだから」でしたが、現在グラボ単体では3万4,200円の差があり、VRAM課金が本格化すればさらに開きます。それでもVRAM 8GBは近年のタイトルで明確に足を引っ張るため、差額を払う価値があります。BTOでの価格差は構成により変わるので、注文前に必ず確認してください。

Q.セールを待つ意味はありますか?

A.あります。AMDの決算では2026年第2四半期のゲーミング売上が前年比31%減で、需要は明確に冷え込んでいます。在庫調整のセールは出やすい状況です。ただし半年前の水準まで戻ることは期待しないでください。

上がっているのは本体価格だけではありません。電気代も政府補助の縮小と再エネ賦課金の上昇で上がっており、こちらはゲーミングPCの電気代で2026年8月時点の単価に置き換えて計算し直しています。

まとめ・次に読みたい記事

2026年8月時点のゲーミングPC市場は、部品の調達コストが押し上げる形で、じりじりと値上がりを続けている状態です。グラボ単体は直近30日で1割〜2割超、BTO完成品も追随し、当サイトの記録では23日間で3万5,000円上がった例がありました。

そして重要なのは、いま見えている数字がまだ第一波だということです。NVIDIAのVRAM値上げ(16GB搭載モデルで約2.5万円の上乗せ)は第3四半期から、国内代理店の卸価格改定は8月1日受注分から。これらが店頭に行き渡るのはこれからです。

需要が冷え込んでいるためセールは出ますが、原因がコスト構造にある以上、半年前の水準に戻ることは考えにくいでしょう。使う予定が決まっているなら待たない、予算が足りないならGPU以外を削る。これが2026年夏の現実的な立ち回りです。

なお、この記事の価格はすべて2026年8月10日時点でショップ公式ページを確認した数字です。相場は月単位で動くため、購入前には必ず最新価格をご確認ください。