長らく「ゲーミングPCのGPUはGeForce」が当たり前でした。ところが2026年8月、その前提が実売価格の面から崩れかけています。
価格.comのグラフィックボード人気売れ筋ランキング(2026年8月6日〜12日集計)を見ると、1位と2位をRadeonが占めています。しかもGeForceとの価格差が尋常ではありません。
ただし、この記事で最も伝えたいのはそこではありません。単体のグラフィックボードで8万円あった価格差が、BTO完成品では5,000円まで縮むという点です。同じ日に両方を確認して分かりました。BTOで買うつもりの人にとっては、こちらのほうが重要です。
先に結論
- 自作する・グラボ単体で買う
- Radeonが圧倒的に有利です。RX 9070 XTはRTX 5070 Tiの約半額で、ラスタライズ性能は平均5%差しかありません。浮いた8万円はCPUやメモリに回せます。
- BTO完成品を買う
- 価格差はほとんど期待できません。同じドスパラでRX 9070 XT機とRTX 5070 Ti機の差は5,000円でした。選択肢の数でもGeForceが上なので、無理にRadeonを選ぶ理由は薄くなります。
- パストレーシングを使うタイトルを狙う
- GeForce一択です。重いレイトレーシングではNVIDIAが依然として大きく先行しています。
- 動画編集・配信・ローカルAIもやる
- GeForceです。NVENCとCUDAの優位は価格差で埋まりません。
- 純粋にゲームのfpsだけを求める
- 単体で買うならRadeonが最もコストパフォーマンスに優れます。
単体グラボの実売はここまで開いています
まず数字を見ます。価格.comの人気売れ筋ランキング(2026年8月6日〜12日集計)から、上位に入った主要モデルの実売価格です。2回取得して順位と価格が一致することを確認しています。
グラボ単体の実売価格(価格.com 売れ筋上位より)
2026年8月6日〜12日集計。RadeonとGeForceで同クラスを並べた。数値が小さいほど安い
注目すべきはRX 9070 XTの99,800円とRTX 5070 Tiの179,800〜198,000円です。この2つは競合するクラスで、後述するとおり性能もほぼ互角です。それで8万円開いています。
エントリー側も同様で、RX 9060 XT 16GBが60,800円、RTX 5060 Ti 16GBが103,800円。同じ16GBで4万円以上の差があります。
売れ筋上位20製品の内訳はGeForce 12製品・Radeon 8製品でしたが、1位と2位はRadeonでした。パーツを自分で選ぶ層は、すでにこの価格差に反応しているということです。
なお参考までに、上位に入っていたRTX 5090は795,000〜860,000円、RTX 5080は292,000円でした。上位帯の価格上昇はGeForce側でとくに激しくなっています。
性能は本当に近いのか
安いのは分かりました。では性能はどうなのか。ここは正直に書きます。用途によって答えがまったく変わります。
52本規模のゲームで比較した検証をもとに整理すると、次のようになります。
- ラスタライズ(通常描画)はほぼ互角
- RX 9070 XTはRTX 5070 Tiに対して、1440p・4Kのいずれでも平均5%遅いという結果です。8万円の価格差を考えれば、実質的に互角と言っていい範囲です。
- ただしタイトルごとの振れ幅が非常に大きい
- Call of Duty: Black Ops 6ではRX 9070 XTが1440pで約22%・4Kで約19%速くなります。一方でGrand Theft Auto V EnhancedやGears 5では3割前後遅くなるという結果も出ています。平均値だけで判断せず、自分が遊ぶタイトルで確認する必要があります。
- パストレーシングはNVIDIAが圧倒
- 重いレイトレーシング、とくにパストレーシングではNVIDIAの優位が明確です。Doomを1440p・パストレーシングで動かした検証では、RTX 5070 TiがRX 9070 XTより63%速いという結果でした。ただしそのRTX 5070 Tiでも31fpsしか出ておらず、どちらも実用的とは言えない領域である点は付け加えておきます。
- エントリー帯は検証によって幅がある
- RX 9060 XT 16GBとRTX 5060 Ti 16GBの比較は、1440pラスタライズで1%差とする検証がある一方、52本規模ではNVIDIAが14%速いとする結果もあります。テスト条件やレイトレの有無で変わるため、幅を持って見てください。
- 消費電力はRadeonが有利な場面も
- RX 9060 XT 16GBはRTX 5060 Ti 16GBより20W低いとされています。電源容量や発熱の面ではプラスに働きます。
まとめると、ラスタライズ中心で遊ぶならRadeonの価格差が効き、パストレーシングを求めるならGeForceという切り分けになります。
ところがBTOでは差が消えます
ここがこの記事の核心です。
上の話はグラフィックボードを単体で買う場合の話でした。当サイトの読者に多いBTO完成品ではどうなるのか。同じ2026年8月13日に、ドスパラの公式ページで確認しました。
- GALLERIA XGC5M-97XT-GD(Radeon RX 9070 XT)
- Core Ultra 5 225F / 16GB DDR5 / 500GB Gen4 SSD = 304,980円〜
- GALLERIA XPR7M-R57T-GD(GeForce RTX 5070 Ti)
- Ryzen 7 7700 / 16GB DDR5 / 500GB Gen4 SSD = 309,980円〜
差はわずか5,000円です。 メモリもストレージも同じ構成で、しかもRadeon側のCPUはCore Ultra 5 225Fと下位、GeForce側はRyzen 7 7700です。条件を揃えて考えれば、実質的にBTOでは価格差がないどころか、GeForce側のほうが割安とすら言えます。
単体では8万円あった差が、BTOでは5,000円。Radeonの価格メリットは、BTOで買う人にはほとんど届いていません。
理由は推測になりますが、BTOの価格は本体全体の構成とショップの値付けで決まるため、GPU単体の仕入れ差がそのまま反映されるとは限らない、ということだと考えられます。ショップ側が売れ筋のGeForce機を戦略的に安く出している可能性もあります。
エントリー帯を見ると、RX 9060 XT 16GB搭載のTHIRDWAVE AD-R7A96G-01B(Ryzen 7 7700)が189,980円〜でした。こちらは選択肢として成立します。ただしRadeon搭載機はGeForce搭載機に比べてラインナップが少ないため、構成の自由度では劣ります。
この「単体とBTOで結論が変わる」という構造は、BTOと自作はどっちが安いかで扱った論点と地続きです。Radeonの価格差を取りに行くなら、自作かパーツ指定できるショップを選ぶ必要があります。パーツを個別に選べる店についてはパソコンショップSEVENと主要BTOの比較にまとめました。
なお「新品が高いなら中古で」という選択肢も、いまは分が悪くなっています。実売で並べた結果は中古グラボは買いか(新品Radeonのほうが安い)に書きました。
Radeonを選ぶ前に確認すること
価格が魅力的でも、用途によっては選ぶべきでない場面があります。
- パストレーシングを使うタイトルを遊ぶか
- サイバーパンク2077や黒神話:悟空のようにパストレーシングを売りにするタイトルを本気で動かすなら、GeForceを選んでください。ここは価格差で埋まりません。
- 動画編集や配信をするか
- NVIDIAのNVENCは、RTX 50世代で第9世代となりH.264/H.265の4:2:2にネイティブ対応しました。書き出し時間に直接効きます。詳しくはゲーミングPCでできることにまとめています。
- ローカルAIを使うか
- 画像生成AIやローカルLLMはCUDAを前提にしたツールが多く、Radeonでは動作しない、あるいは手間がかかる場面があります。この用途があるならGeForceです。
- DLSSが必要なタイトルがあるか
- DLSSはGeForce専用です。ただしRadeonにもFSRがあり、後述のとおり状況は変わりつつあります。
- 遊ぶタイトルでの実測を確認したか
- 前述のとおりタイトル差が±20〜30%と大きいため、平均値だけで決めないでください。
FSR 4.1で前提が変わりました
Radeonが敬遠されてきた大きな理由が、アップスケーリングの弱さでした。ここが2026年に入って変わっています。
2026年6月22日のAdrenalin 26.6.2で、FSR 4.1がRadeon RX 7000シリーズにも対応しました。300本超のタイトルが対象です。さらにRX 9000シリーズであれば、MLベースのフレーム生成やレイ再生成といったFSR Redstoneの機能も使えます。
かつての「Radeonはアップスケーリングが弱いから避ける」という判断は、少なくとも超解像に関しては根拠が薄くなりました。どのGPUで何が使えるかはDLSS・FSR・XeSSの対応早見表に整理しています。
ただしフレーム生成のML版とレイ再生成はRX 9000シリーズ限定です。RX 7000で使えるようになったのは超解像だけなので、そこは混同しないでください。
こういう人はこっち
- 自作で、ラスタライズ中心にゲームだけする
- Radeon。RX 9070 XTが99,800円でRTX 5070 Tiと平均5%差なら、8万円の差は他のパーツに回すほうが総合的に速いPCになります。
- 自作で、パストレーシングや配信もする
- GeForce。価格差はありますが、代替が効かない領域です。
- BTO完成品を買う
- GeForceで問題ありません。価格差が5,000円しかない以上、対応の幅が広いGeForceを選ぶのが無難です。ただしエントリー帯のRX 9060 XT機は選択肢になります。
- 予算を最優先で、遊ぶのは軽めのタイトル
- Radeon。RX 7600が39,500円、RX 9060 XT 16GBが60,800円という価格は、同クラスのGeForceにない水準です。
- 何を遊ぶか決まっていない
- GeForce。対応の幅広さが効いてきます。判断基準がない段階でRadeonを選ぶと、後から「これができない」に当たる可能性があります。
なお、ここで挙げた価格は2026年8月時点のものです。2026年はGPU価格の変動が激しく、数週間単位で相場が動いています。実際に買うときは必ず最新を確認してください。
よくある質問
Q.2026年8月時点で、RadeonとGeForceはどちらが買いですか?
A.買い方によって答えが変わります。グラボ単体で買うならRadeonが圧倒的に有利で、RX 9070 XTが99,800円に対しほぼ同性能のRTX 5070 Tiは179,800円です。一方でBTO完成品では、ドスパラの同構成で差が5,000円しかありませんでした。自作ならRadeon、BTOならGeForceで問題ない、というのが現時点の結論です。
Q.RX 9070 XTとRTX 5070 Tiはどれくらい性能が違いますか?
A.52本規模の検証では、ラスタライズでRX 9070 XTが1440p・4Kとも平均5%遅いという結果です。ただしタイトル差が大きく、Call of Duty: Black Ops 6では逆にRadeonが約22%速くなります。パストレーシングではNVIDIAが大きく先行し、Doomの検証では63%の差がつきました。
Q.なぜBTOだと価格差が消えるのですか?
A.推測を含みますが、BTOの価格は本体全体の構成とショップの値付けで決まるため、GPU単体の仕入れ差がそのまま反映されるとは限りません。売れ筋であるGeForce機を戦略的に安く出している可能性もあります。いずれにせよ、Radeonの価格メリットを取りに行くなら自作かパーツ指定できるショップが必要になります。
Q.RadeonでもDLSSは使えますか?
A.使えません。DLSSはGeForce専用です。ただしRadeonにはFSRがあり、2026年6月22日のAdrenalin 26.6.2でFSR 4.1がRX 7000シリーズにも対応しました。RX 9000シリーズならMLベースのフレーム生成やレイ再生成も使えます。
Q.動画編集をするならどちらですか?
A.GeForceです。NVIDIAのNVENCはRTX 50世代で第9世代となり、H.264/H.265の4:2:2にネイティブ対応しました。書き出し時間に直接効くため、価格差では埋まりません。ローカルAIを使う場合も、CUDA前提のツールが多いためGeForceが無難です。
Q.RX 9060 XTとRTX 5060 Tiではどちらがいいですか?
A.価格では単体でRX 9060 XT 16GBが60,800円、RTX 5060 Ti 16GBが103,800円と4万円以上開いています。性能は検証によって幅があり、1440pラスタライズで1%差とするものから、52本規模でNVIDIAが14%速いとするものまであります。ゲーム中心ならRadeon、レイトレや制作用途も考えるならGeForceです。
Q.Radeonは不具合が多いと聞きますが本当ですか?
A.ドライバ起因の不具合が報じられることはあります。実際2026年6月にはWindows 10環境でRadeonが正常認識されない問題が発生し、後続バージョンで修正されました。ただしGeForce側にも同種の問題は起きます。決定的な差というより、購入後にドライバを最新にする習慣を持つべき、と考えるのが実務的です。
Q.いま買うべきですか、待つべきですか?
A.GPU価格はメモリ高騰の影響で上昇が続いており、待って安くなる見込みは薄い状況です。とくにGeForceの上位帯は値上がりが激しく、RTX 5090は795,000円を超えています。必要なら買う、というのが現時点の合理的な判断です。
まとめ・次に読みたい記事
2026年8月、グラフィックボードの実売価格は明確に動きました。価格.comの売れ筋で1位・2位をRadeonが占め、RX 9070 XTは99,800円、ほぼ同性能のRTX 5070 Tiは179,800円と8万円の差がついています。ラスタライズ性能は平均5%差なので、自作するなら差額をほかのパーツに回すほうが賢い選択です。
ただしBTO完成品では話がまるで変わります。同じ日にドスパラで確認すると、RX 9070 XT機が304,980円、RTX 5070 Ti機が309,980円で差はわずか5,000円。しかもRadeon側のCPUは下位でした。Radeonの価格メリットは、BTOで買う人にはほとんど届いていません。
用途の切り分けも忘れないでください。ラスタライズ中心ならRadeonの価格差が効きますが、パストレーシングではNVIDIAが63%速いという検証もあり、動画編集やローカルAIではCUDAとNVENCの優位が埋まりません。そしてタイトルによる振れ幅が±20〜30%と大きいため、平均値ではなく自分が遊ぶタイトルで確認するのが確実です。



