ゲーミングPCを何年か使っていると、動作音が大きくなったり、以前より温度が高くなったり、フレームレートが落ちてきたりします。

こうしたとき、多くの人はまずパーツの買い替えを考えます。ですが2026年はグラフィックボードもSSDも高騰している局面です。買い替える前に、まず数百円から数千円でできることを試す価値があります。

この記事では掃除とメンテナンスの手順を整理します。ただし手順の説明だけではありません。掃除で直る症状と、掃除しても直らない症状の見分け方を先に示します。原因が別のところにあるなら、いくら掃除しても報われないからです。

先に結論 — 症状から原因を切り分ける

作業を始める前に、自分の症状がどれに当てはまるか確認してください。

症状掃除で直るか疑うべき原因
ファンの音が全体的に大きくなった直る可能性が高い埃の蓄積によるエアフロー低下
高負荷時だけ温度が急に上がる直る可能性があるグリスの劣化、ヒートシンクの目詰まり
ゲーム中にfpsが落ちる(発熱と連動)直る可能性があるサーマルスロットリング
ポンプ付近からガリガリ音がする直りません簡易水冷のポンプ故障
起動直後から温度が高い直りにくいクーラーの取り付け不良、ポンプ停止
fpsが落ちたが温度は正常直りませんドライバ、ゲーム側の更新、CPU/GPU性能不足
特定のファンだけ回らない直りませんファン単体の故障、配線

掃除が効くのは、埃によってエアフローが落ちている場合と、グリスが劣化している場合です。それ以外の原因なら、掃除に時間をかけても状況は変わりません。

上の表で「直りません」に当てはまる場合は、それぞれの記事を参照してください。ポンプの異音は簡易水冷が壊れかけるとどうなる?、ファンが回らない場合はケースファンは1つの端子に何個まで接続できる?が参考になります。

パーツが高いいま、掃除がいちばん安く効く

2026年8月時点で、グラフィックボードは直近30日で1割から2割超上昇し、1TBのNVMe SSDは2024年の約2.5倍で高止まりしています(詳しくはゲーミングPCはいくら値上がりしたのか)。

その一方で、掃除とグリス塗り替えにかかる費用はこの程度です。

やること費用の目安得られる効果
エアダスターで埃を飛ばす数百円〜1,000円程度エアフロー回復、ファン回転数の低下
CPUグリスの塗り替え1,000〜2,500円程度劣化していれば温度低下(報告では5〜15℃)
ケースフィルターの清掃0円吸気量の回復

GPUを買い替えれば10万円前後、PCごとなら20万円以上という局面で、数千円で温度が下がるなら試さない手はありません。アップグレードで延命すべきか、買い替えるべきかでも整理しましたが、いまは大きな投資を避けて安い手から打つのが合理的です。

作業を始める前に

安全のための手順です。ここを飛ばすと、パーツを壊すリスクがあります。

1. 電源を切り、電源ケーブルを抜く
スリープではなく、完全にシャットダウンしてからケーブルを抜いてください。
2. 体の静電気を逃がす
ドアノブなどの金属部分に触れるか、静電気防止手袋を使います。静電気は目に見えないまま基板を傷めます。
3. 作業場所を決める
埃が舞うので、屋外かベランダが理想です。室内なら新聞紙を敷いてください。
4. 元の配線を撮影しておく
ケーブルを外す場合、戻せなくなると困ります。スマートフォンで撮っておくと安心です。

必要な道具はエアダスター、マイクロファイバークロス、柔らかいブラシ、プラスドライバーの4点です。グリスを塗り替えるなら、それに加えてCPUグリスと無水エタノール、キッチンペーパーがあれば足ります。

エアダスターの正しい使い方

ここでやり方を間違えると、掃除したのに壊すという結果になります。

掃除機は使わない
内部に掃除機を当てるのは避けてください。強い吸引は静電気を発生させ、小さな部品を吸い込む危険もあります。吸い出すのではなく、エアダスターで吹き飛ばすのが基本です。
ファンの羽根は固定してから吹く
風を当てるとファンが空転します。これはベアリングに負荷をかけるうえ、モーターが発電機のように働いて逆起電力が生じ、回路に悪影響を与えるとされています。綿棒やプラスチック製のスティックで羽根を軽く押さえてから吹いてください。
缶は強く振らない、逆さにしない
強く振ったり、逆さや極端に傾けた状態で長時間噴射すると、冷却液が液体のまま噴き出して結露の原因になります。缶は立てたまま、短く区切って使ってください。
外側から内側ではなく、奥から手前へ
埃を内部の奥へ押し込まないよう、抜けていく方向を意識します。ケースの通気口から外へ出す流れを作ってください。

重点的に掃除したいのは、ケースのフロントフィルター、CPUクーラーのヒートシンク、グラフィックボードのファンとフィン、電源ユニットの吸気口です。とくにヒートシンクのフィンの間は埃が詰まりやすく、ここが塞がると冷却性能が大きく落ちます。

ファンの構成やエアフローの考え方はPCケースの選び方にもまとめました。

グリスの塗り替えは2〜3年に1回

CPUとクーラーの間に塗られているグリス(熱伝導グリス)は、時間とともに乾いて性能が落ちます。2〜3年で乾く傾向があるとされ、劣化すると熱がクーラーへ伝わりにくくなります。

塗り替えの効果については、5〜15℃の低下という報告が多く、7〜12℃あたりの例がよく見られます。費用は1,000〜2,500円程度、作業自体は15分ほどです。

ただし注意点があります。これは劣化した状態から塗り替えた場合の話です。まだ状態の良いグリスを塗り直しても、大きな変化は期待できません。「何年使ったか」と「実際に温度が上がっているか」の両方で判断してください。

塗り方にも決まりがあります。

中央に米粒大を1点が基本
多く塗れば冷えるというものではありません。大量に塗るとCPUソケットの周囲にはみ出し、ピンやランドに付着してショートや接触不良を起こします。
古いグリスは無水エタノールで拭き取る
キッチンペーパーに含ませて、CPUとクーラーの接触面をきれいにします。拭き残しがあると新しいグリスの効果が落ちます。
クーラーは対角線の順にネジを締める
片側から一気に締めると圧力が偏り、接触が不均一になります。少しずつ対角線の順で締めてください。
作業後は必ず起動確認してからケースを閉じる
「CPU FAN ERROR」で起動しないケースがあります。原因と対処はCPUクーラー交換後にCPU FAN ERRORが出るにまとめました。

なお、グラフィックボードのグリス塗り替えは分解が必要になり、メーカー保証が無効になることがほとんどです。保証期間内なら手を出さないでください。

掃除しても直らないケース

ここが冒頭の切り分けの続きです。作業しても改善しない場合、原因は別のところにあります。

温度は下がったのにfpsが戻らない

温度が原因ではなかったということです。GPUドライバの問題、ゲーム側のアップデートによる要求上昇、あるいは単純にPCの性能がゲームに追いついていない可能性があります。

とくに近年は、同じゲームでもアップデートで重くなることがあります。当サイトでも、Dead by Daylightが2度のエンジン刷新を経ていることを扱いました。「前は動いていたのに」という感覚は、ゲーム側が変わっているだけの場合があります。

起動直後から温度が高い

埃やグリスの問題であれば、負荷をかけたときに差が出ます。アイドル状態から高いなら、クーラーの取り付け不良か、簡易水冷のポンプが動いていない可能性があります。

ポンプの回転数が0RPMになっていないか、異音がしないかを確認してください。詳しい見分け方は簡易水冷が壊れかけるとどうなる?にまとめています。

サーマルスロットリングを確認する

温度が原因かどうかを確かめる方法があります。サーマルスロットリングは、CPUが高温になったときにクロック周波数を下げて温度を抑える保護機能です。90℃以上の状態が続くと、動作が大きく低下します

HWiNFOやCore Tempといった無料のソフトで、負荷時のCPU温度とクロックを同時に見てください。温度が上がったタイミングでクロックが落ちているなら、冷却が原因だと判断できます。逆に温度が正常なのにfpsが出ないなら、冷却をいくら改善しても変わりません。

掃除の頻度の目安

フィルターの清掃 - 1〜3か月に1回
フロントやボトムのダストフィルターは、外して水洗いできるものが多くあります。ここが詰まると吸気量が落ち、内部全体の温度が上がります。いちばん手軽で効果が出やすい作業です。
内部の埃飛ばし - 半年〜1年に1回
ケースを開けてのエアダスター作業です。ペットがいる、床置きしている、喫煙環境といった条件では埃の溜まりが早いので、頻度を上げてください。
グリスの塗り替え - 2〜3年に1回
ただし年数だけで機械的に判断せず、実際に温度が上がっているかを見てから決めてください。
設置環境の見直し - 気づいたとき
床に直置きすると埃を吸いやすくなります。台に載せる、壁との距離を空けるだけでも変わります。

よくある失敗

切り分けずにいきなり掃除を始める
ポンプ故障やドライバの問題なら、掃除しても直りません。症状から原因を絞ってから作業してください。
掃除機で吸い出す
強い吸引は静電気を生み、小さな部品を吸い込む危険もあります。エアダスターで吹き飛ばすのが基本です。
ファンを空転させながら吹く
ベアリングへの負荷に加え、逆起電力で回路に悪影響を与えることがあります。羽根を押さえてから吹いてください。
グリスを塗りすぎる
多く塗っても冷えません。はみ出してソケットのピンに付着すると、ショートや接触不良の原因になります。中央に米粒大が基本です。
保証期間内にグラフィックボードを分解する
GPUのグリス塗り替えは分解を伴い、保証が無効になることがほとんどです。保証が残っているなら手を出さないでください。

よくある質問

Q.掃除でどのくらい温度が下がりますか?

A.状態によります。埃でヒートシンクやフィルターが塞がっていた場合は明確に効果が出ますが、もともときれいなら大きくは変わりません。グリスの塗り替えについては、劣化した状態からで5〜15℃の低下という報告が多く見られます。ただしこれはユーザーの環境報告であり、統制された測定ではない点にご注意ください。

Q.どのくらいの頻度で掃除すべきですか?

A.ダストフィルターは1〜3か月に1回、ケース内部の埃飛ばしは半年から1年に1回が目安です。ペットがいる、床に直置きしている、喫煙環境といった条件では埃が溜まりやすいので、頻度を上げてください。

Q.掃除機を使ってはいけないのはなぜですか?

A.強い吸引が静電気を発生させ、基板を傷めるおそれがあるためです。またネジやジャンパーのような小さな部品を吸い込む危険もあります。吸い出すのではなく、エアダスターで吹き飛ばしてください。

Q.エアダスターでファンを回してはいけないのですか?

A.避けてください。空転はベアリングに負荷をかけますし、モーターが発電機のように働いて逆起電力が生じ、回路に悪影響を与えるとされています。綿棒やプラスチック製のスティックで羽根を軽く押さえてから吹くのが安全です。

Q.CPUグリスは何年で塗り替えるべきですか?

A.2〜3年が目安とされています。ただし年数だけで決めず、実際に温度が上がっているかを確認してから判断してください。状態の良いグリスを塗り直しても効果は限定的です。

Q.グリスはたくさん塗ったほうが冷えますか?

A.冷えません。むしろ大量に塗るとCPUソケットの周囲にはみ出し、ピンやランドに付着してショートや接触不良を起こします。中央に米粒大を1点が基本です。

Q.掃除しても温度が下がりません。

A.原因が埃ではない可能性があります。起動直後から温度が高いならクーラーの取り付け不良か簡易水冷のポンプ停止、高負荷時だけならグリスの劣化を疑ってください。HWiNFOやCore Tempで負荷時の温度とクロックを見て、温度上昇とクロック低下が連動しているかを確認すると切り分けやすくなります。

Q.グラフィックボードのグリスも塗り替えるべきですか?

A.保証期間内なら手を出さないでください。GPUのグリス塗り替えは分解が必要で、保証が無効になることがほとんどです。保証が切れていて、かつ明確に温度が高い場合にのみ検討してください。

まとめ・次に読みたい記事

ゲーミングPCの掃除は、手順よりも先に切り分けです。動作音が大きくなった、温度が上がった、fpsが落ちた。その原因が埃やグリスなら掃除で改善しますが、ポンプ故障やドライバの問題なら、いくら作業しても変わりません。

そのうえで押さえたいのは3点です。掃除機ではなくエアダスターで吹き飛ばすこと、ファンの羽根は固定してから吹くこと、そしてグリスは中央に米粒大を1点にとどめること。この3つを守るだけで、掃除して壊すという事態は避けられます。

2026年はパーツが高騰しています。GPUを買い替えれば10万円前後、PCごとなら20万円以上という局面で、数百円のエアダスターと1,000円台のグリスで温度が下がるなら、まずそちらから試すのが合理的です。買い替えの検討は、それでも改善しなかったときで遅くありません。