フリーランス・個人事業主のゲーミングPC経費ガイド|減価償却と家事按分【2026年】

配信・動画編集・デザインなど、ゲーミングPCの性能が仕事にも活きる個人事業主は増えています。ただし「ゲーミングPC」という名前だけで身構える必要はなく、経費にできるかどうかは金額と使い方次第で決まる、他のパソコンと同じ話です。この記事では、金額別の処理方法、2026年4月に変わった税制改正、プライベート使用がある場合の家事按分まで、実務の流れに沿って整理します。

そもそも、ゲームで遊ぶ用途は経費にできない

まず前提として、経費にできるのは事業に使った部分だけです。配信・動画編集・デザイン・プログラミングといった事業用途で使うからこそ、購入費用の一部(または全部)を経費にできます。プライベートでのゲームプレイのためだけに買ったPCを全額経費にすることはできません。事業用途とプライベート用途の両方があるなら、次に説明する「家事按分」で事業分だけを切り出す必要があります。

金額別の処理方法

パソコンの経費計上は、購入金額によって扱いが変わります。まず全体像を整理します。

購入金額白色申告青色申告(青色申告特別控除の要件を満たす場合)
10万円未満消耗品費として全額その年の経費に同左
10万円〜20万円未満一括償却資産として3年間で均等に経費化一括償却資産(3年均等)と、少額減価償却資産の特例(即時償却)のどちらかを選べる
20万円〜40万円未満通常の減価償却(耐用年数4年)少額減価償却資産の特例で全額を即時償却できる
40万円以上通常の減価償却(耐用年数4年)通常の減価償却(耐用年数4年)

一括償却資産(10万円〜20万円未満)は白色・青色どちらでも使える方法で、購入金額を3年間で均等に経費化します。一方、少額減価償却資産の特例は青色申告者だけが使える特例で、10万円以上40万円未満(改正前は30万円未満)なら購入した年に全額を経費にできます。つまり10万円〜20万円未満の範囲は、青色申告者なら「一括償却資産」と「少額減価償却資産の特例」のどちらを使うか選べる、という点に注意してください(通常は、その年に全額経費にできる特例のほうが有利です。ただし特例には年間300万円までという上限があるため、他の設備投資と合わせて上限を超える場合は一括償却資産を選ぶこともあります)。白色申告の場合はこの特例が使えないため、20万円以上のパソコンは通常の減価償却(後述する耐用年数4年での分割計上)が必要になります。

なお、これらの金額判定は税込経理なら消費税込みの価格、税抜経理なら税抜価格で行います。たとえば108,000円(税込)のPCは、税込経理なら「10万円以上」、税抜経理なら「10万円未満」と判定が変わることがあるので、自分の経理方式でどちらに該当するか確認しておきましょう。

2026年4月の税制改正で、上限が30万円→40万円に拡大

少額減価償却資産の特例は、2026年3月31日までの取得なら30万円未満、2026年4月1日以降の取得は40万円未満が対象です。取得日(購入日)で判定が変わる点に注意してください。この改正で、青色申告者が即時償却できる範囲が広がり、ハイエンド寄りのゲーミングPC(RTX 5070 Ti〜5080クラス)でも一括で経費にしやすくなりました。なお、年間の上限額は300万円までで、こちらは改正後も変わりません。

少額減価償却資産の特例は青色申告者限定
白色申告の場合はこの特例が使えないため、20万円以上のパソコンは通常の減価償却が必要になります。青色申告の要件を満たしているかどうかで、選べる選択肢が変わります。
取得日で判定基準が変わる
2026年3月31日までに取得(購入)したものは30万円未満、4月1日以降の取得は40万円未満が特例の対象です。決算月をまたぐ購入では、この境界を意識しておくとよいでしょう。
償却資産税の申告は原則として必要
少額減価償却資産の特例を使って所得税・住民税の計算上は全額を経費にした場合でも、地方税である償却資産税(固定資産税の一種)の申告は原則として市区町村に対して必要です。ただし、同一市区町村内で保有する償却資産の評価額の合計が免税点(150万円未満)であれば、申告をしても実際の納税は発生しません。個人事業主がパソコン1台程度を保有する場合は納税が発生しないことも多いですが、他の設備投資と合算されるため、詳しくは税理士や自治体の窓口に確認してください。

通常の減価償却(40万円以上、または特例を使わない場合)

パソコンは税法上「器具備品」に分類され、法定耐用年数は4年です。40万円以上のパソコンや、白色申告で20万円以上のパソコンは、この耐用年数に沿って複数年に分けて経費計上します。

個人事業主は原則「定額法」
毎年同じ金額を計上する方法です。耐用年数4年の定額法償却率は0.25。たとえば40万円のパソコンなら、40万円×0.25=10万円を4年間、毎年経費計上します。
法人は原則「定率法」
未償却残高に対して一定の償却率を掛ける方法で、初年度の経費計上額が大きくなります。個人事業主が法人化した場合など、方式が変わる可能性がある点は覚えておきましょう。

プライベートでも使うなら「家事按分」が必須

配信・動画編集用に組んだゲーミングPCでも、同じ機体でプライベートのゲームも遊ぶなら、購入費用の全額を経費にすることはできません。事業で使った割合だけを切り出す「家事按分」が必要です。

按分の基準は使用時間・使用日数が一般的
1日のうち何時間を事業(配信・編集作業など)に使い、何時間をプライベートに使っているかを基準に、事業利用割合を算出するのが一般的です。「按分の基準」自体に法律上の厳密な決まりはありませんが、税務調査で説明できる合理的な根拠が必要です。
記録を残しておくことが重要
配信スケジュール、稼働ログ、作業時間の記録などを残しておくと、按分の根拠として説明しやすくなります。何割を経費にしたか、その理由とあわせてメモしておく習慣をつけましょう。
「完全に事業専用」なら100%も可能
事業専用のPCと、プライベート用の別のPCやゲーム機を分けて使っている場合は、事業用PCの購入費用を100%経費にできる余地があります。ただし実態が伴っている必要があり、名目上分けているだけでは認められません。

按分割合の具体的な目安は、配信内容や仕事の実態によって大きく変わるため、判断に迷う場合は税理士に相談することをおすすめします。

BTO購入時の価格帯選びのヒント

税制上の区切り(10万円・20万円・40万円)を意識して構成を組むと、経費処理がシンプルになります。たとえば予算別ガイドの20万円台〜30万円台のクラスであれば、青色申告なら少額減価償却資産の特例で購入した年に全額を経費にできる可能性が高く、複数年にわたる減価償却の管理が不要になります。一方、40万円を超えるハイエンド構成(RTX 5080クラス以上)を選ぶ場合は、通常の減価償却が前提になる点を踏まえて予算を検討するとよいでしょう。

20万円台〜30万円台
青色申告なら即時償却の対象になりやすく、事務処理がシンプルです。RTX 5060 Ti 16GB〜RTX 5070クラスが視野に入ります。
40万円未満に収める
2026年4月以降の取得なら、この範囲までは青色申告の特例で即時償却できます。RTX 5070 Tiクラスまでなら収まることがあります。
40万円以上
通常の減価償却が前提になります。RTX 5080クラス以上を検討する場合は、複数年での経費計上を織り込んで資金計画を立てましょう。

よくある質問

Q.ゲーミングPCというだけで経費にできませんか?

A.「ゲーミング」という名称は関係なく、事業に使っているかどうかで判断されます。配信・動画編集・デザインなど事業用途に使うのであれば、他のパソコンと同じ基準で経費にできます。プライベートのゲームプレイのためだけの購入は経費にできません。

Q.少額減価償却資産の特例は誰でも使えますか?

A.青色申告をしている個人事業主・中小企業者が対象です。白色申告の場合はこの特例が使えないため、10万円〜20万円未満は一括償却資産(3年均等)、20万円以上は通常の減価償却で処理します。青色申告者は、10万円〜40万円未満(改正前は30万円未満)のパソコンをこの特例で即時償却できます(10万円〜20万円未満は一括償却資産との選択制)。

Q.2026年4月の改正で何が変わりましたか?

A.少額減価償却資産の特例の対象上限が、30万円未満から40万円未満に拡大されました。2026年3月31日までの取得は30万円未満、4月1日以降の取得は40万円未満が基準になります。年間300万円という上限額は変わっていません。

Q.家事按分の割合はどう決めればいいですか?

A.使用時間や使用日数など、事業とプライベートの利用実態に基づいた合理的な基準で算出するのが一般的です。法律上の厳密な計算式はありませんが、税務調査で説明できるよう、稼働記録などを残しておくことが重要です。具体的な割合に迷う場合は税理士に相談しましょう。

Q.個人事業主とプライベートで同じPCを使うのはリスクがありますか?

A.使用実態に見合わない割合で経費計上すると、税務調査で否認されるリスクがあります。事業用とプライベート用を分けられるなら分けたほうが管理はシンプルですが、兼用する場合は使用時間の記録など、合理的な説明ができる準備をしておきましょう。

まとめ・次に読みたい記事

フリーランス・個人事業主のゲーミングPC経費は、10万円未満は消耗品費、10万円〜40万円未満は青色申告なら即時償却(一括償却資産との選択制になる10万円〜20万円未満を含む)、40万円以上は通常の減価償却という金額のラインを押さえるのが基本です。2026年4月の改正で即時償却の上限が40万円未満に広がったので、購入タイミングと金額の両方を意識すると経費処理がシンプルになります。プライベートでも使うなら、家事按分の根拠を残しておくことを忘れずに。