ゲームをインストールしようとしたら、進捗バーが「容量を確保しています」の表示のまま数分、あるいは数十分たっても動かない。ネットワークの転送量は0bpsのまま、パーセント表示も止まっている。マウスは動くのにSteamの画面だけ反応しない。こうした状態に遭遇したことがある方は少なくないと思います。
この症状の原因は、空き容量が足りているかどうかとはほとんど関係ありません。実際に足を引っ張っているのは、書き込み先のディスクがこの処理に向いていない、常駐セキュリティソフトが割り込んでいる、Steamのダウンロードキャッシュが壊れている、という3系統に絞られます。この記事では、それぞれの原因がなぜ起きるのかをディスクの仕組みまで踏み込んで説明したうえで、本当に処理が進んでいるのか、完全に停止しているのかを見分ける方法と、直し方の手順をまとめます。
なお、表示上は空き容量が十分にあるはずなのに「ディスクの空き容量が不足しています」というエラーメッセージが出る場合は、この記事とは別の原因です。Steamで空き容量は足りているのにアップデートできない原因で扱っているので、そちらを先に確認してください。この記事が対象にしているのは、エラーは出ず進捗バーが「容量を確保しています」の表示のまま動かなくなる、見た目上のフリーズです。
「容量を確保しています」の間、Steamは何をしているか
Steamの配信システムであるSteamPipeは、ゲームのアップデート時に古いパックファイルを残したまま新しいパックファイルを作り、完成後に入れ替えるという方式を取っています。Valveの開発者向けドキュメントでは、25GBのパックファイルを更新する場合、変更内容が数バイトでも新しい25GBのファイルを丸ごと作り直す必要があり、この処理はクライアント側のストレージ性能によって非常に遅くなることがあると説明されています。
新規インストール時の「容量を確保しています」も考え方は同じです。ダウンロードしたデータを書き込む前に、Steamはインストール先のディスク上に、ゲーム一式が収まる分の領域をあらかじめ用意します。これは、ダウンロードの途中で空き容量が尽きて失敗することを防ぐための処理で、Steamコミュニティのユーザー間でも「ダウンロードが失敗しないよう、先に領域を確保してから中身を埋めていく処理」だという説明がよく共有されています。あくまでコミュニティ内での経験則であり、Valveが公式に技術仕様として公開しているわけではありませんが、実際の挙動とはおおむね一致しています。
ここで重要なのは、この処理はまだ本格的なダウンロードが始まる前の段階で行われることが多い、という点です。ネットワークの転送量が0bpsのまま止まっているように見えても、回線やダウンロードサーバーの問題ではないケースがほとんどです。疑うべきはネットワークではなく、書き込み先のディスクだと考えてください。
外付けHDD/SSDの書き込みが極端に遅くなる理由
同じ「20GB前後のゲーム」でも、内蔵のNVMe SSDなら数十秒で終わる処理が、外付けドライブでは数十分から数時間かかることがあります。差が出る一番の理由は、USB接続だからというより、ドライブの内部方式にあります。
SMR方式のHDDは書き込みが得意ではない
近年の大容量な外付けHDD(特に2.5インチのポータブルタイプ)には、SMR(瓦記録、Shingled Magnetic Recording)という方式を採用したモデルが増えています。SMRは、記録トラックを瓦屋根のように一部重ねて配置することでプラッタ1枚あたりの容量を増やす技術です。読み出しは通常のCMR方式とほぼ変わりませんが、書き込みには弱点があります。一度書き込んだトラックの上に別のトラックが重なっているため、その部分だけを書き換えようとすると、周囲の重なったトラックごと丸ごと読み出して再構成する処理(リード・モディファイ・ライト)が必要になるためです。
多くのSMR方式HDDには、この弱点を緩和するために書き込みを一時的に受け止める非シングル記録のキャッシュ領域が用意されています。ただし、その容量はドライブ全体からすればわずかで、大容量ゲームのインストールで発生する書き込み量はすぐにこのキャッシュを使い切ってしまいます。キャッシュを使い切った後は、前述のリード・モディファイ・ライトが発生し続けるため、体感できるほど速度が落ち込みます。「容量確保中」の進捗が序盤は動いていたのに、途中からぴたりと止まったように見える場合、このキャッシュ切れが起きている可能性があります。
使っている外付けHDDがSMRかどうかは、型番をメーカーの製品仕様(Recording Technology欄など)で確認するか、CrystalDiskInfoのような無料ツールで型番を調べたうえでメーカーの一覧表と照合する必要があります。パッケージや商品ページに明記されていないことも多いため、判断がつかない場合は「ゲーム用途には向かない可能性がある」と考えておいたほうが安全です。
QLC方式のSSDも似た現象が起きる
SSD側にも同じ構図があります。TLC・QLC方式のSSDの多くは、NANDの一部をSLC相当として動かす擬似SLCキャッシュを備えており、キャッシュ内に収まる間は高速に書き込めます。しかし、キャッシュを使い切ると、本来のQLC・TLCセルへ直接書き込む速度まで落ちます。
QLC方式SSDはキャッシュを使い切るとHDD以下の速度まで落ちることがある
Samsung 870 QVO(1TBモデル)のレビュー値をもとにした目安。実際の速度は容量・空き容量・製品によって異なる
TechPowerUpのレビューでは、Samsung 870 QVO(1TBモデル)は約42GB分の疑似SLCキャッシュを使い切ると転送速度が100MB/s以下まで落ち込み、一般的なHDDより遅くなると報告されています。SATA接続で「SSDだから速いはず」と思っていても、大容量ゲームを一気にインストールする用途では、キャッシュ切れによってHDD並み、あるいはそれ以下の速度まで落ち込むことがあるという点は覚えておいて損はありません。
頻繁に起きるなら買い替えも選択肢
たまに時間がかかるだけなら待てば済みますが、毎回のように「容量確保中」で長時間止まる外付けドライブを使い続けている場合は、ドライブそのものの見直しを検討したほうが早く解決することがあります。USB 3.2 Gen2に対応したポータブルSSD(たとえばSamsung ポータブルSSD T7のようなモデル)であれば、ランダムな書き込みへの弱さによる極端な失速は基本的に起きません。
なお、中古の外付けHDD/SSDは、SMRかどうかやこれまでの書き込み量といった情報を確認する手段がなく、初めての1台としてはおすすめしません。特にHDDは使用時間が長いほど故障のリスクが上がるため、保存用途以外での中古利用は避けたほうが無難です。
本当に時間がかかっているだけか、完全に止まっているかを見分ける
対処に進む前に、いま起きているのが「遅いだけ」なのか「フリーズしている」のかを切り分けます。ここを飛ばしてSteamを強制終了すると、進行中の処理を最初からやり直すことになりかねません。
- タスクマネージャーでディスクの動きを見る
- Ctrl、Shift、Escキーでタスクマネージャーを開き、「パフォーマンス」タブから書き込み先のディスクを選びます。「アクティブな時間」や「書き込み速度」の数値が動いているなら、遅いなりに処理は進んでいます。低速な外付けHDDやキャッシュ切れ後のSSDでは、書き込み速度が数MB/s〜数十MB/s程度まで落ち込んだまま推移することがあり、これ自体は異常ではありません。
- リソースモニターでSteamのファイル書き込みを確認する
- WindowsキーとRキーを押し「resmon」と入力して実行します。「ディスク」タブを開き、steam.exeやsteamwebhelper.exeがどのファイルへ書き込んでいるか、書き込みバイト数が時間とともに増えているかを確認してください。同じ数値のまま動かない状態が数分以上続く場合は、フリーズしている可能性が高くなります。
- 経過時間の目安で判断する
- 内蔵SSDであれば、数十GB規模のゲームでも通常は数十秒から数分で終わります。低速な外付けHDDでは数十分かかること自体は珍しくなく、Steamコミュニティでも「同じ100GBのゲームが別のドライブでは45秒、別の環境では数時間かかった」という報告があります。ただし、ディスクのアクティブな時間が0%のまま30分以上変化しない場合は、遅いのではなく止まっていると判断してよいでしょう。
ディスクが実際に動いているなら、そのまま完了を待つのが安全です。何時間待っても書き込みがまったく発生していない場合は、次の手順に進んでください。
常駐セキュリティソフトが割り込んでいないか確認する
容量確保からダウンロードにかけては、新しく作られる、あるいは中身が書き換わるファイルが短時間に大量発生します。常駐型のセキュリティソフトのリアルタイム保護は、ファイルが作成・変更されるたびに動作する仕組みが一般的なため、この場面ではもっとも負荷がかかりやすいタイミングのひとつです。Microsoft Defenderを含め、スキャンが書き込みより先に終わらないと、Steam側の処理は待たされます。
ここで「Steamのライブラリフォルダをまるごとスキャン対象から除外する」という方法がよく紹介されますが、当サイトではゲーミングPCにセキュリティソフトは必要かで説明した理由から、フォルダ単位の除外はおすすめしていません。ゲームのインストール先はMODやランチャー、外部から追加されるツールなど、実行ファイルが増え続ける場所です。そこを丸ごと検査対象から外すのは、本来もっとも検査しておきたい場所を検査しなくする行為になります。
- どのプロセスが引っかかっているか確認する
- タスクマネージャーの「プロセス」タブを開き、「ディスク」の列で並べ替えます。「Antimalware Service Executable」や、使用しているセキュリティソフトのスキャンプロセスが、容量確保やダウンロードの最中に高い数値を示していないか確認してください。
- 恒久的な除外より、一時停止やスケジュール変更を先に試す
- 該当していた場合も、フォルダ単位で除外するのではなく、まずフルスキャンの実行時間をインストール作業と重ならない時間帯にずらします。多くのセキュリティソフトには、一定時間だけリアルタイム保護を一時停止する機能があり、恒久的な除外設定よりもリスクを小さく抑えられます。
- どうしても除外が必要なら実行ファイル単位に絞る
- 特定の実行ファイルだけが繰り返し引っかかることが分かっている場合に限り、フォルダ全体ではなくそのファイル単位で除外を検討してください。Windowsセキュリティでは「ウイルスと脅威の防止」の「設定の管理」から「除外の追加または削除」で設定できますが、除外は保護を弱める操作なので範囲は最小限にとどめます。
原因別の直し方
ここまでの内容を踏まえたうえで、実際に試す手順を優先度の高い順にまとめます。
- STEP1|ディスクが本当に止まっているか確認する
- 前述のタスクマネージャーとリソースモニターの手順で、書き込みが継続しているかを確認します。動いているなら、遅くても待つのがもっとも確実な対処です。
- STEP2|PCとSteamを完全に再起動する
- タスクトレイのSteamアイコンを右クリックして完全に終了し、PCを再起動してからSteamだけを起動し直します。一時的な処理の詰まりであれば、これだけで再開することがあります。
- STEP3|ダウンロードキャッシュをクリアする
- 「Steam」「設定」「ダウンロード」から「ダウンロードキャッシュをクリア」を実行します。実行後はSteamへの再ログインが必要になり、進行中だったダウンロードやインストールはやり直しになりますが、インストール済みの他のゲームやセーブデータが削除されるわけではありません。
- STEP4|外付けドライブの取り外しポリシーを確認する
- 外付けHDD/SSDを使っている場合、デバイスマネージャーの「ディスクドライブ」から対象ドライブのプロパティを開き、「ポリシー」タブを確認します。「クイック取り出し」ではなく「高パフォーマンス」を選ぶと書き込みキャッシュが有効になり、体感速度が改善することがあります。ただしこの設定を有効にした状態でケーブルを抜くとデータ破損の原因になるため、取り外す際は必ずタスクバーの「安全な取り外し」を使ってください。
- STEP5|常駐セキュリティソフトの動作を確認する
- 前述の手順で、スキャンプロセスがインストール作業と重なっていないか確認します。重なっている場合はフォルダの除外ではなく、スキャン時間の調整や一時停止機能を先に試してください。
- STEP6|ゲームファイルの整合性を確認する
- 対象ゲームを右クリックし、「プロパティ」「インストール済みファイル」から「ゲームファイルの整合性を確認」を実行します。中断されたインストールの管理情報が崩れている場合、この操作で修復できることがあります。
- STEP7|Steamライブラリフォルダを修復する
- 「設定」「ストレージ」を開き、対象ドライブのメニューからライブラリの修復を実行します。Steamがそのドライブへ正常に読み書きできる状態を修復する処理です。
- STEP8|chkdskとSMARTでディスクそのものを確認する
- 管理者としてターミナルを開き、対象ドライブに対して「chkdsk D: /scan」のように実行します(ドライブレターは環境に合わせて変更してください)。ファイルシステムの問題が見つかった場合は「chkdsk D: /f」で修復します。あわせてCrystalDiskInfoのようなツールでSMART情報を確認し、注意や異常の表示が出ていないかも見ておきます。chkdskはファイルシステムレベルの問題を直すツールで、ディスク自体の物理的な劣化までは直せません。SMART・イベントログを含めたより詳しい切り分けはSSDの使用率が100%でPCが固まる原因にまとめています。
- STEP9|Steam本体をクリーンインストールする
- ここまでで直らない場合は、Steamクライアント側の設定や管理情報が崩れている可能性があります。進行中の処理を止めてSteamを完全終了し、Windowsの「設定」「アプリ」からSteamをアンインストールします。アンインストール後もインストール済みゲームが入った「steamapps」フォルダは基本的に残るため、念のため別の場所へコピーしてバックアップしておくと安全です。そのうえでSteam公式サイトから最新のインストーラーを取得し、同じ場所に再インストールします。ログイン後、以前と同じ場所にsteamappsフォルダが残っていれば、Steamがそのまま認識し、ゲームを再ダウンロードせずに済みます。別ドライブに保存していた場合は「設定」「ストレージ」からそのドライブをライブラリフォルダとして追加し直してください。
よくある質問
Q.「容量を確保しています」でどれくらい待てばいいですか?
A.ドライブの種類と性能によって大きく変わるため、一律の時間で判断するのは難しいところがあります。内蔵SSDなら数十GB規模のゲームでも数十秒から数分で終わることが多い一方、低速な外付けHDDでは数十分かかることもあります。目安として使えるのは経過時間そのものより、タスクマネージャーで見たディスクのアクティブな時間です。数値が動いているうちは処理が進んでいるので、そのまま待つのが安全です。
Q.外付けHDDにインストールすると必ず遅くなりますか?
A.必ずではありません。通常のCMR方式のHDDであれば、内蔵HDDと比べて極端に遅くなることは少ないです。ただし、大容量モデルに増えているSMR方式のHDDは、内部の書き込みキャッシュを使い切った後に速度が大きく落ち込む弱点があり、これが「容量確保中」で長時間止まる原因になっているケースがあります。
Q.セキュリティソフトを一時的に無効にしてもいいですか?
A.インストール作業中だけ一時停止する機能であれば、恒久的にフォルダを除外するよりリスクは小さくなります。ただし無効化している間はネットの閲覧や他の作業を控え、インストールが終わったらすぐに保護を再開してください。ゲームフォルダを丸ごと除外し続けるのはおすすめできません。理由は前述のとおりです。
Q.ダウンロードキャッシュをクリアすると、インストール済みのゲームは消えますか?
A.消えません。ダウンロードキャッシュのクリアは、Steamへの再ログインが必要になり、進行中のダウンロードやインストールはやり直しになりますが、すでにインストールされているゲームやセーブデータには影響しません。
Q.chkdskを実行すればこの症状は直りますか?
A.ファイルシステムレベルの問題が原因であれば改善する可能性があります。ただし、SMR方式のHDDやQLC方式のSSDが持つ書き込み速度の弱点は、ディスクの故障ではなく設計上の特性なので、chkdskやSMART確認では直りません。この場合は、ドライブの使い方を見直すか、書き込み性能に余裕のあるドライブへの置き換えを検討してください。
Q.何時間も止まっているように見えたら強制終了していいですか?
A.タスクマネージャーとリソースモニターで、ディスクへの書き込みが本当に0のまま長時間変化していないことを確認してからにしてください。書き込みが少しでも継続しているなら、遅いだけで処理は進んでいる可能性があります。完全に停止していることを確認したうえでSteamを終了し、PCを再起動してからやり直すのが安全な手順です。
まとめ
「容量を確保しています」で進まない、あるいはフリーズしたように見える症状は、空き容量の不足ではなく、書き込み先のディスクの性能や常駐ソフトとの競合が原因になっていることがほとんどです。SMR方式の外付けHDDやQLC方式のSSDは、内部のキャッシュを使い切った直後に書き込み速度が大きく落ち込む構造的な弱点を持っており、大容量ゲームのインストールではこの弱点がそのまま表面化します。
対処に進む前に、タスクマネージャーやリソースモニターで、ディスクへの書き込みが本当に止まっているのか、遅いだけで進んでいるのかを見分けてください。動いているなら待つのが確実で、完全に停止しているならPCとSteamの再起動、ダウンロードキャッシュのクリア、常駐セキュリティソフトの確認、chkdskとSMARTでのディスク診断、それでも直らなければSteam本体のクリーンインストールという順番で試してください。



