「ゲーミングPCの電気代」を検索すると、どの記事もだいたい同じ式が出てきます。消費電力(kW)×使用時間×31円/kWh。当サイトの以前の版もこれで計算していました。

ところが、この式で出した数字は実際の請求額より安く出ます。理由は3つあり、どれも計算式そのものの問題ではなく、代入している単価と、数えていないコストの問題です。

この記事では、2026年8月時点で確認できる単価に置き換えて、電気代を計算し直します。

理由1 よく使われる31円/kWhは2022年7月改定の数字です

電気代の試算でほぼ必ず登場する31円/kWhは、公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会(家電公取協)が定めている「電気料金の目安単価」です。家電のカタログに書かれている「1時間あたり約○円」も、この単価で計算されています。

問題は改定日です。家電公取協のよくある質問ページを見ると、現在の31円/kWhは令和4年7月22日改定と明記されています。2022年7月です。

つまり、いま出回っている電気代の試算は、4年前の平均単価で計算されていることになります。この4年で電気料金は上がっているので、当然ながら実態より安く出ます。

実際、大手BTOメーカーのドスパラが公開しているゲーミングPCの電気代の解説ページも31円/kWhで計算していて、しかもこの単価を「2024年7月の全国平均」と説明しています。単価の出どころが曖昧なまま引き継がれている、という状況が見て取れます。

これは誰かの怠慢というより、目安単価という仕組みの性質です。カタログ表記の統一のために全国一律の数字を置いているだけなので、自分の請求額を知りたい人が使う数字ではありません

理由2 ゲーミングPCの電気は「一番高い段階」で課金されます

ここがいちばん見落とされている点です。

日本の家庭向け電気料金の多くは三段階料金を採用しています。使用量が増えるほど単価が上がる仕組みです。東京電力エナジーパートナーのスタンダードS(規制料金の従量電灯Bと単価は同一)を例に取ると、次のようになっています。

段階使用量単価(税込)
第1段階〜120kWh29.80円/kWh
第2段階121〜300kWh36.40円/kWh
第3段階301kWh〜40.49円/kWh

ここで大事なのは、ゲーミングPCは既存の生活に上乗せされる消費だということです。

冷蔵庫も照明も洗濯機も、PCを買う前から動いています。その上にPCの消費電力が積み上がるので、PCが使った分は全部、一番後ろの段階の単価で課金されます。平均単価ではなく、限界の単価で効いてくるわけです。

たとえば月260kWhを使っている一般的な世帯(東京電力のモデル試算で使われる水準)に、月47kWhほど使うゲーミングPCが加わったとします。合計は307kWhです。このとき増えた47kWhのうち、40kWhは第2段階の36.40円、残り7kWhは第3段階の40.49円で課金されます。加重平均すると約37円/kWhです。

すでに月300kWhを超えている世帯なら、PCの分は最初から最後まで40.49円/kWhです。

31円との差は、前者で19%、後者で31%になります。この記事では以降、控えめな側を取って36.40円/kWhで計算します。使用量が多い世帯は40.49円に読み替えてください。

理由3 夏はエアコンの電気代が別途かかります

3つ目は、電気料金の話ではなく物理の話です。

PCが消費した電力は、ほぼ全部が熱になって部屋に出ます。 PCは電力を使って何かを外部に出力する機械ではないので、入った電気エネルギーはすべて機内で熱に変わり、ファンが室内へ排出します。消費電力400WのPCは、400Wの電気ストーブとほぼ同じ量の熱を部屋に足していることになります。

冷房中は、この熱をエアコンが外に運び出します。つまり夏は、PCの電気代とは別に、PCの熱を追い出すためのエアコンの電気代がかかります。

どれくらいかかるかは、エアコンの効率(COP)で決まります。COPは冷房能力÷冷房時の消費電力で、この値が大きいほど少ない電力で多くの熱を動かせます。売れ筋の6畳用エアコンで確認すると、ダイキンのS225ATES-Wは冷房能力2.2kWに対し冷房時の定格消費電力が580Wなので、COPは約3.8です。

熱を1動かすのに必要な電力は1/3.8、つまり約26%。400WのPCなら、その熱を外に出すために約105Wぶんの電気代が追加でかかる計算になります。

冬は逆です。PCの熱がそのまま暖房の足しになるので、エアコン暖房を使っている家では暖房の電力が減ります。ただし同じ機種の暖房時COPは2.2kW÷470Wで約4.7と冷房より効率が良いため、減る量は約21%にとどまります。夏に26%増えて冬に21%減る、という非対称になります。

なお、この計算はあくまで定格運転時のCOPを使った目安です。実際のエアコンは負荷に応じて出力を変えるので効率は変動しますし、冷房を使わない季節や、PCを置いていない部屋を冷やしている時間には当てはまりません。

GPU別に電気代を計算し直す

以上を反映して計算します。使用条件は1日4時間・30日、単価は36.40円/kWh、夏のエアコン負荷はCOP3.8で26%上乗せとします。

システム全体の消費電力は、NVIDIA公式が公表しているGPUの合計グラフィックスパワー(TGP)に、ゲーム中のCPU消費とその他パーツ(マザーボード・メモリ・SSD・ファン)を足した積み上げの目安です。

GPUシステム全体の目安月の電気代夏(エアコン込み)
RTX 5060約260W1,136円1,435円
RTX 5060 Ti約295W1,289円1,628円
RTX 5070約390W1,704円2,153円
RTX 5070 Ti約440W1,922円2,429円
RTX 5080約530W2,315円2,926円
RTX 5090約745W3,254円4,112円

参考までに、NVIDIA公式のTGPはRTX 5060が145W、5060 Tiが180W、5070が250W、5070 Tiが300W、5080が360W、5090が575Wです。上の表はこれにCPUとその他を足しています。

従来どおり31円/kWhで計算すると、RTX 5070クラスは月1,451円でした。この表の夏の数字は2,153円なので、約1.5倍です。第3段階の40.49円が適用される世帯なら2,395円で、1.65倍になります。

ただし、この表は上振れ側の目安として読んでください。ゲーム中にGPUがTGPいっぱいまで使い切るとは限りませんし、多くのゲームはGPU側がボトルネックになるのでCPUの消費電力はTDPよりかなり低く収まります。軽いタイトルや、後述するfps上限を設定している環境では、これより下がります。

一方で、RTX 5090だけは家計に見える差になります。1日4時間でも夏場は月4,000円を超えます。RTX 5060との差は冷房を使わない時期で月2,118円、冷房期で月2,677円なので、冷房を4か月使うとして年間およそ2万7,600円です。5年使えば13万円を超えます。上位GPUを検討している人は、ランニングコストも本体価格の一部として考えたほうが現実的です。

いま安くなっているのは補助金のおかげです

2026年8月現在、電気代には政府の値引きが入っています。資源エネルギー庁の電気・ガス料金支援によると、低圧(一般家庭)の値引き単価は次のとおりです。

対象値引き単価(電気・低圧)
2026年7月使用分3.5円/kWh
2026年8月使用分4.5円/kWh
2026年9月使用分3.5円/kWh
2026年10月使用分〜現時点で予定なし

8月だけ値引き額が大きいのは、エネ庁の説明によれば「暑さが厳しい8月分は、7月と9月より約2割多い使用量を想定」しているためです。

重要なのは支援が9月使用分で終わるという点です。10月以降の継続は、この記事の執筆時点で発表されていません。つまり何もしなくても、10月使用分から単価が3.5円/kWh上がります

さらに、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)も2026年度は4.18円/kWhで、2025年度の3.98円から上がっています。こちらは2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用されます。初めて4円台に乗りました。

秋以降に「急に電気代が上がった」と感じたら、多くの場合はPCの使い方が変わったのではなく、この2つが理由です。

契約アンペアが足りないと基本料金も上がります

見落としやすいコストがもうひとつあります。

ゲーミングPCを導入してブレーカーが落ちるようになると、契約アンペアを上げることになります。東京電力スタンダードSの基本料金は次のとおりです。

契約アンペア基本料金(月額・税込)
20A623.50円
30A935.25円
40A1,247.00円
50A1,558.75円
60A1,870.50円

30Aから40Aに上げると、月311.75円・年3,741円の固定費増です。使っても使わなくてもかかるので、電力量の節約では取り返せません。

とはいえ、ゲーミングPC単体で契約アンペアを上げる必要が出るケースは多くありません。RTX 5070クラスの400Wは100V換算で4A程度です。落ちるとしたら、エアコン・電子レンジ・ドライヤーなどの大電力家電と同時に使ったときで、PCはその引き金になっているだけです。落ちる時間帯と同時に動いている家電を確認してから判断してください。

電気代を実際に減らす方法

一般論ではなく、効果の大きい順に挙げます。

fps上限をモニターに合わせる
いちばん効果が大きい方法です。144Hzのモニターで300fps出しても表示されない分は捨てているだけで、GPUはその分の電力を消費しています。ゲーム側かNVIDIAアプリで上限を設定すると、負荷が下がった分だけ消費電力も下がります。軽いタイトルほど効果が大きくなります。
DLSS・FSRを有効にする
内部的に低い解像度で描画してから引き上げる技術なので、描画負荷そのものが下がります。画質の低下を抑えつつ消費電力を減らせるので、fps上限との併用が効きます。
使わないときはスリープにする
アイドル時でも数十Wは消費します。仮に50Wで1日16時間放置すると、月あたり24kWh・約874円です。ゲーム中の電気代より、つけっぱなしの時間のほうが効いていることは珍しくありません。
電力会社・プランを見直す
単価そのものを下げる方法なので、PCに限らずすべての電気代に効きます。三段階料金ではない定額単価のプランもあり、使用量が多い世帯では有利になることがあります。
夏はPCを置く部屋を工夫する
冷房している部屋にPCがあると、その熱を冷やす電気代がかかります。冷房していない部屋に置けるなら、この上乗せは発生しません。ただしPC自体の温度は上がるので、室温が高くなりすぎる環境では避けてください。

逆に、効果が小さいのに語られがちなものもあります。電源ユニットのグレード変更がその代表です。詳しくは次のよくある質問で扱います。

よくある失敗

「ワット数の大きい電源を買うと電気代が上がる」と思い込む

これは誤解です。電源ユニットの容量(650W、850Wなど)は取り出せる電力の上限であって、常にその電力を消費するわけではありません。850Wの電源に400Wの負荷をつなげば、消費するのは400W(+変換ロス)です。容量に余裕を持たせても電気代は増えません。電源選びの考え方は電源ユニットの選び方にまとめています。

節電のためにスリープを使わず毎回シャットダウンする

起動と終了を繰り返すこと自体の電力は無視できる程度ですが、待たされるストレスのほうが大きいことが多いです。数時間の離席ならスリープで十分で、消費電力はほぼゼロに近づきます。

エアコンを止めてPCを使う

夏場、電気代を気にしてエアコンを切ると、室温上昇でPCの冷却が効かなくなります。CPUやGPUが温度上限に達すると自動的に性能を落とすので、同じゲームを動かすのに時間がかかるようになり、結果として消費電力量が減らないこともあります。熱と騒音の関係はゲーミングPCの音と発熱で詳しく扱っています。

よくある質問

Q.結局、ゲーミングPCの電気代は月いくらですか?

A.1日4時間・RTX 5070クラスなら、2026年8月時点の単価で月1,704円、夏のエアコン負荷を含めると2,153円が目安です。RTX 5060クラスなら1,435円、RTX 5090クラスなら4,112円ほどになります。使う時間が倍になれば、電気代もほぼ倍です。

Q.電源ユニットの容量が大きいと電気代も上がりますか?

A.上がりません。容量は取り出せる電力の上限であって、消費する量ではありません。850Wの電源でも、負荷が400Wなら消費するのは400W(+変換ロス)です。余裕を持った容量を選んでも電気代は変わらないので、安心して選べます。

Q.80 PLUS認証のグレードで電気代は変わりますか?

A.変わりますが、差は大きくありません。負荷50%時の変換効率はBronzeで約85%、Goldで約90%です。出力400Wの場合、コンセントから引く電力はBronzeが約471W、Goldが約444Wで、差は約26Wです。1日4時間なら月およそ114円、年1,370円ほどの差になります。数年使えば価格差を回収できる場合もありますが、電気代だけを理由に上位グレードを選ぶほどの差ではありません。

Q.ノートPCのほうが電気代は安いですか?

A.安いです。ノート向けGPUは消費電力の枠が小さく設定されており、たとえばRTX 5070 Laptopは50〜100W、RTX 5060 Laptopは最大100Wです。デスクトップのRTX 5070が250Wであることを考えると、同じ名前でも消費電力はかなり違います。ただし性能もその分下がるので、電気代だけで選ぶ話ではありません。詳しくはノートとデスクトップの比較をご覧ください。

Q.つけっぱなしにするとどれくらいかかりますか?

A.アイドル時を50Wと仮定すると、1日16時間の放置で月24kWh・約874円です。ゲーム中ほどではありませんが、何もしていない時間に払っている金額としては小さくありません。長時間の離席はスリープにするのが確実です。

Q.電気代が理由でゲーミングPCをやめるべきでしょうか?

A.その必要はないと考えています。RTX 5060クラスなら夏でも月1,400円台で、1日4時間毎日遊べます。ゲーム1本の価格より安い金額です。ただしRTX 5090クラスは同じ条件で年間4万2,000円ほどかかるので、本体価格とあわせて判断する価値があります。

まとめ・次に読みたい記事

ゲーミングPCの電気代は、よくある「消費電力×時間×31円」の計算より1.5倍前後になるというのが、2026年8月時点で単価を確認した結論です。

理由は3つでした。31円/kWhが2022年7月改定の目安単価であること、ゲーミングPCの電気は三段階料金の一番高い段階で課金されること、そして夏はPCの発熱を追い出すエアコンの電気代が約26%上乗せされることです。

とはいえ、金額そのものはRTX 5060クラスで夏でも月1,400円台です。1.5倍という倍率のインパクトほど、家計への影響は大きくありません。本当に気にすべきなのは、RTX 5080以上を検討している場合と、1日8時間以上使う場合です。

なお、9月使用分で政府の補助金が終わります。10月以降は同じ使い方でも単価が3.5円/kWh上がるので、秋に請求額が増えても慌てないでください。