「せっかく良いゲーミングPCを買ったのに、対戦ゲームでラグい」——これは本体の性能とは別の問題であることが多く、しかも回線を速いプランに変えても解決しないことがよくあります。

理由は単純で、回線速度(Mbps)とping(ms)は別の指標だからです。1Gbpsを10Gbpsにしても、pingはほとんど変わりません。

この記事では、pingが何で決まるのかを物理から整理したうえで、自分の環境で改善できる部分はどこかを切り分けます。お金をかけずにできることから順に説明しますので、機材を買い足す前に確認してみてください。

速度とpingは、測っているものが違います

最初にここを押さえてください。回線の広告に出てくる「最大1Gbps」「10Gbps」は速度の話で、pingとは別の指標です。

速度(Mbps・Gbps)= 一度にどれだけ運べるか
太さの話です。動画のダウンロードやゲームのインストールなど、大量のデータを運ぶ場面で効きます
ping(ms)= 往復にどれだけ時間がかかるか
速さの話です。ボタンを押してからサーバーに届き、結果が返ってくるまでの時間で、対戦ゲームの体感を決めます

対戦ゲームがやり取りするデータは、実はごくわずかです。自分の位置や入力といった情報を細かく送るだけなので、帯域はほとんど使いません。だから回線を太くしても、体感は変わらないのです。

もうひとつ、ジッターという指標も重要です。これはpingのばらつきのことで、平均pingが20msでも、10msと50msを行き来していれば、カクついたりワープしたりします。平均値より安定性のほうが体感に効く場面は少なくありません。

pingには物理的な下限があります

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

光ファイバーの中を進む光は、真空中の光速よりも遅くなります。ガラスの屈折率がおよそ1.5なので、秒速およそ20万kmです。つまり1kmあたり片道5マイクロ秒、往復で10マイクロ秒かかります。

この数字から、サーバーまでの距離だけで決まる理論上の最小pingが計算できます。

サーバーまでの距離で決まるpingの理論的な下限

直線距離をもとに、光ファイバー中の伝搬速度20万km/sで算出した往復時間。実際の経路は直線より長く、機器の処理も加わるため、実測はこれより大きくなります

東京〜米国東海岸(約10,850km)109ms
東京〜米国西海岸(約8,800km)88ms
東京〜シンガポール(約5,300km)53ms
東京〜福岡(約880km)9ms
東京〜大阪(約400km)4ms
同一都市圏(約50km)0.5ms

この数字は、どんな回線契約をしても下回れません。光の速度と距離で決まる物理的な制約だからです。

そして実際の経路は直線ではありません。海底ケーブルや中継地点を経由するため、実距離は直線の1.3〜1.5倍になることが普通です。さらに途中のルーターやスイッチでの処理時間も加わります。結果として、北米のサーバーに接続するゲームでは、実測100〜150ms程度が現実的な水準になります。

ここから導かれる結論は身も蓋もないものです。遊んでいるゲームのサーバーが海外にあるなら、回線やルーターに何をしても劇的には改善しません。まず確認すべきは、そのゲームに日本国内のサーバーがあるかどうかです。

改善できるのは3つの層のうち2つです

pingの内訳は、大きく3つに分けられます。どこを改善できるのかを整理しましょう。

① サーバーまでの距離(変えられません)
前述の物理的な下限です。できるのは、国内サーバーやより近いリージョンを選ぶことだけです
② 回線の方式と混雑(変えられます・効果大)
接続方式がPPPoEかIPoEかで、とくに夜間の遅延が大きく変わります。ここは無料で確認・改善できることがあります
③ 宅内の環境(変えられます・効果大)
Wi-Fiか有線か、ルーターの性能や設定、家族の同時利用。ここも自分でコントロールできる部分です

つまり②と③を潰してから、それでも足りなければ機材や回線を考えるというのが正しい順番です。逆にここを飛ばして高いルーターを買っても、原因が①なら何も変わりません。

まず、お金をかけずにできること

有線LANでつなぐ

いちばん効果が大きく、しかも数百円で済むのがこれです。

Wi-Fiは電波を共有する仕組みなので、電子レンジや近隣のアクセスポイント、家族の端末の影響を受けます。平均pingが多少良く見えても、ジッター(ばらつき)とパケットロスが出やすいのが問題です。対戦ゲームで「たまにワープする」「一瞬固まる」という症状は、これが原因のことがよくあります。

ルーターから机までLANケーブルを引けるなら、まずそれを試してください。カテゴリは6以上であれば十分で、高価なケーブルにする必要はありません。

なお、有線にしたのに切断されるという症状が出る場合は、省電力機能やドライバが原因のことがあります。詳しくは有線LANが頻繁に切れるときの対処にまとめています。

IPv6(IPoE)で接続できているか確認する

日本の光回線には、PPPoEとIPoEという2つの接続方式があります。

PPPoE(従来方式)
網終端装置という設備を経由します。ここに利用者が集中するため、夜間や休日に混雑して遅延が増えます
IPoE(IPv6・v6プラスなど)
網終端装置を通らずに接続するため、混雑の影響を受けにくく、速度と応答が安定します

「夜だけ重い」「休日だけラグい」という症状なら、PPPoEの混雑が原因である可能性が高いです。この場合、IPoEに切り替えるだけで改善することがあります。

契約しているプロバイダがIPoEに対応していれば、申し込みや対応ルーターへの交換で切り替えられます。多くの場合は追加料金なしなので、まずは自分の契約がどちらなのかを確認してみてください。

ルーターの置き場所と同時利用を見直す

Wi-Fiを使わざるを得ない場合は、ルーターを床や棚の裏に置かない、金属や水槽の陰にしない、といった基本を確認してください。また、家族が同時に動画を見ている時間帯にラグが出るなら、原因は回線ではなく宅内の取り合いです。

ゲーミングルーターは買う価値があるか

ここは正直にお答えします。効く人と効かない人がはっきり分かれます。

ゲーミングルーターは魔法の機材ではありません。買えばpingがゼロに近づくというものではなく、前述の①(物理的な距離)には一切効きません。

効果が期待できる人
家族が同時にネットを使う環境の方、5年以上前のルーターを使っている方、マルチギガ回線を契約したのにルーターが対応していない方
効果が小さい人
一人暮らしで他に大きな通信がない方、すでに有線接続で新しめのルーターを使っている方、原因が回線側の混雑や海外サーバーにある方

よく宣伝されるQoS(通信の優先制御)機能も、家庭内で動画やSNSとゲームの通信が混在している場合に、ゲームを優先してジッターを抑えるものです。同時に使っている人がいなければ、優先する相手がいないので効果は小さくなります。

また、QoSで優先されていても、そもそもWi-Fiの電波が弱ければ意味がありません。ルーターを買い替える前に、有線化を試すほうが確実です。

回線の乗り換えを検討すべきとき

ここまでを試しても改善しない場合に、はじめて回線の乗り換えが選択肢になります。

IPoEに変えても夜間だけ重い
建物内の設備を共有しているマンションタイプなどで、収容側が混雑している可能性があります
独自回線という選択肢
NTTの設備を多くの事業者が共有する光コラボ系に対し、独自の設備を持つ回線は混雑の影響を受けにくい傾向があります
工事と契約期間の確認を
乗り換えには工事が必要で、違約金が発生する場合もあります。改善が確実とは限らないため、費用に見合うかを冷静に判断してください

注意点として、回線事業者ごとのping実測値は、調査によって数字が大きく食い違います。同じ事業者について平均12msとする調査と、22msとする調査が並存しているのが実情です。測定条件(有線か無線か、時間帯、地域)が揃っていないためで、ランキングの数字をそのまま信じないほうが安全です。住んでいる地域と建物の条件のほうが、事業者の違いより大きく効きます。

自分のpingを測って切り分ける

原因を特定するには、順番に測るのが確実です。Windowsのコマンドプロンプトで次のように実行します。

① ルーターまで(宅内の確認)
ping 192.168.1.1(ルーターのアドレスは環境により異なります)。ここで1msを超える、あるいは値がばらつくなら、宅内のWi-Fiや配線に問題があります
② 国内の外部まで(回線の確認)
国内の大手サイトへpingを打ちます。夜だけ極端に悪化するなら、PPPoEの混雑や回線側の問題が疑われます
③ ゲーム内の表示(サーバーまで)
多くのゲームはping値を表示できます。①②が良好なのにここだけ高いなら、原因はサーバーまでの距離です

①が悪ければ宅内、②が悪ければ回線、③だけ悪ければ距離。この切り分けができれば、無駄な出費を避けられます。

よくある失敗

速いプランに変えればpingが下がると考える
1Gbpsから10Gbpsにしても、pingはほとんど変わりません。太さと速さは別の話です
海外サーバーのゲームで機材を買い足す
北米サーバーなら理論上でも約88ms、実測では100msを超えます。国内サーバーがあるかをまず確認してください
有線化を試さずにルーターを買う
最も効果が大きく最も安い対策が有線化です。順番を逆にすると、高い買い物をして変化がないという結果になりがちです
平均pingだけを見る
ばらつき(ジッター)のほうが体感に効くことがあります。平均が良くても不安定なら快適にはなりません
ランキングの実測値を鵜呑みにする
同じ事業者で12msと22msという調査結果が並存します。測定条件が揃っていないため、参考程度にとどめてください

よくある質問

Q.回線速度を上げればpingは下がりますか?

A.ほとんど下がりません。速度(Mbps)は一度に運べるデータ量、ping(ms)は往復にかかる時間で、別の指標だからです。対戦ゲームがやり取りするデータ量はごくわずかなので、帯域を増やしても体感は変わりません。

Q.pingはどこまで下げられますか?

A.サーバーまでの距離による物理的な下限があります。光ファイバー中の伝搬速度は秒速約20万kmなので、東京から米国西海岸なら理論上でも約88ms、実測では100〜150ms程度になります。国内サーバーであれば一桁msも可能です。

Q.ゲーミングルーターは買う価値がありますか?

A.環境によります。家族が同時にネットを使う、5年以上前のルーターを使っている、マルチギガ回線にルーターが対応していない、といった場合は効果が期待できます。一人暮らしで有線接続、かつ比較的新しいルーターを使っているなら、効果は小さいでしょう。買う前に有線化を試してください。

Q.夜になるとラグくなります。原因は何ですか?

A.接続方式がPPPoEの場合、網終端装置に利用者が集中して混雑している可能性が高いです。IPv6(IPoE)に切り替えると改善することがあり、多くの場合は追加料金なしで対応できます。まず契約している接続方式を確認してみてください。

Q.Wi-Fiと有線、どのくらい違いますか?

A.平均pingの差以上に、ばらつき(ジッター)とパケットロスに差が出ます。「たまにワープする」「一瞬固まる」という症状はWi-Fi特有のことが多く、有線にするだけで解消する場合があります。数百円のLANケーブルで試せるので、最初に検討する価値があります。

Q.光回線のping比較ランキングは信用できますか?

A.参考程度にとどめてください。同じ事業者について平均12msとする調査と22msとする調査が並存しており、測定条件(有線か無線か、時間帯、地域)が揃っていないためです。実際には、住んでいる地域や建物の条件のほうが事業者の違いより大きく効きます。

まとめ・次に読みたい記事

オンラインゲームのpingは、回線の速さではなくサーバーまでの距離と経路の混雑で決まります。光ファイバー中の伝搬速度から計算すると、北米サーバーでは理論上でも約88msが下限で、これはどんな契約をしても下回れません。

改善できるのは、回線の接続方式(PPPoEかIPoEか)と宅内の環境(有線かWi-Fiか)の2つです。しかもこの2つは、多くの場合お金をかけずに手を付けられます。有線化とIPoEの確認を先に済ませ、それでも足りなければ機材や回線を検討する。この順番を守るだけで、無駄な出費をかなり避けられます。