Windows Updateを適用した直後から、ゲームのfpsが下がった、あるいは急に落ちるようになった。GPUも設定も変えていないのに、という相談です。
疑うべきは、直前に入ったWindows Updateです。2026年8月に配信された更新では、実際に複数のゲームでクラッシュが報告されており、開発元も原因を認めています。そしてこれは今回に限った話ではありません。この1年だけでも、同様の不具合は繰り返し起きています。
この記事では、いま起きている実例を入り口にしつつ、特定のKB番号に依存しない切り分け方を中心に解説します。KB番号は毎月変わりますが、症状が出た時期とアップデートの時期を突き合わせ、ロールバックして再現するか確かめるという手順そのものは、次に別の更新で同じことが起きても使えます。
2026年8月、ARC RaidersとTHE FINALSが落ちるようになりました
Microsoftは2026年8月11日、Windows 11向けの累積更新プログラムKB5121003を配信しました(Microsoft公式)。OS Build 26200.9168および26100.9168が対象で、Windows 11 version 25H2・24H2向けに400件超のセキュリティ修正を含む、月例の大型更新です。
配信から数日後、Embark Studiosが開発する「ARC Raiders」と「THE FINALS」で、ゲーム中に強制終了する不具合が相次いで報告されました。「Hang detected on GameThread」や「EXCEPTION_ACCESS_VIOLATION」といったエラーのほか、Windowsごと予期せず再起動する、画面が突然黒くなる、HDR表示が崩れる、Windows HelloのPINが再登録を求められるといった報告も出ています(Windows Latest)。
Embark Studiosは公式Discordで、このクラッシュがKB5121003に起因すると認めています。原因は「inpoutx64.sys」という、Razerのツールなどに含まれるカーネルレベルのポートアクセスドライバで、Windows Updateによってこのファイルとの互換性が崩れたと説明しています。当面の回避策として、inpoutx64のサービスを停止・削除する手順を案内しています。
一方、Microsoft公式のWindowsリリースの正常性ページには、この問題は2026年8月19日時点で掲載されていません。ゲーム側の不具合として開発元が認めていても、Windows側の公式ページに載るとは限らないという点は覚えておいてください。公式ページに何も書かれていないことは、無関係だという証明にはなりません。
同じことは、この1年で少なくとも2回起きています
KB5121003が特別なわけではありません。過去の事例を並べると、Windows Updateとゲームの相性問題は年に何度も起きていることが分かります。
- 2026年1月13日|KB5074109
- 配信後、NVIDIA製GPU環境で15〜20fps程度のフレームレート低下、画面の乱れ(アーティファクト)、突然の黒画面が報告されました。イベントログにはGPUドライバのリセットやnvlddmkm関連のエラーが記録され、NVIDIAは調査中の暫定策として「KB5074109をアンインストールすること」を案内しました。XDA Developers
- 2025年10月14日|KB5066835
- 「アサシン クリード シャドウズ」で深刻なスタッターとfps低下が発生し、シーンによっては最大で50%前後まで落ち込む報告もありました。NVIDIAは約1か月後の11月19日、対策版の「GeForce Hotfix Display Driver 581.94」を公開して収束させています。NVIDIA公式サポート
3件に共通しているのは、Windows Update単体ではなくGPUドライバとの組み合わせで症状が出ている点です。原因の切り分けでGPUドライバの入れ直しが有効な理由は、ここにあります。
Windows Updateが原因かどうかを切り分ける手順
多くの人は、いきなり「アップデートが怪しい」と決めつけて即ロールバックするか、逆に「アップデートとは関係ないだろう」とパーツやゲーム側を先に疑うか、どちらかに偏りがちです。実際には順番があります。以降の手順はWindows 11を基準にしていますが、Windows 10でも大枠は同じです。
- 1. 症状が出た時期を特定する
- 直前に何をしたかを思い出してください。Windows Update、ゲーム側のパッチ、GPUドライバの更新、グラフィック設定の変更が同じタイミングで重なっていることもあります。複数思い当たる場合は、最も新しく適用されたものから疑います
- 2. Windows Updateの履歴を確認する
- 設定からWindows Updateを開き、「更新の履歴」でインストール日時とKB番号を確認します。症状が出た日に近い日付の更新があれば、そこが起点です
- 3. 該当のKB番号で報告の有無を調べる
- MicrosoftのWindowsリリースの正常性ページで既知の問題として載っているか確認します。ただしKB5121003のように、開発元やユーザーの間で広く報告されていても、公式ページには載っていないことがあります。載っていないからといって無関係と判断しないでください
- 4. アップデートをロールバックして再現するか確かめる
- 疑わしい更新をアンインストールし、同じ症状が消えるかを確認します。消えればアップデートが原因、消えなければ別の原因を疑う番です。具体的な手順は後述します
- 5. Windowsの「ゲーム最適化」機能を切り替えて試す
- ロールバックできない更新や、ロールバックしても直らない場合は、GPUスケジューリングやゲームバーの機能を個別にオン・オフして絞り込みます
- 6. それでも直らなければGPUドライバを疑う
- 更新そのものではなく、更新後に不安定になったGPUドライバとの組み合わせが原因のことがあります。クリーンインストールで切り分けます
Windowsの「ゲーム最適化」機能を切り替えてみる
ここでいう「ゲーム最適化」は、主にハードウェアアクセラレータによるGPUスケジューリング(HAGS)と、Xbox Game Bar・ゲームモードの2つを指します。どちらもWindows Updateそのものが自動でオフにするわけではありませんが、KB5074109やKB5121003のようにGPUドライバの挙動へ影響する更新が入った直後は、この2つを切り替えて反応を見ると原因を絞り込みやすくなります。
ハードウェアアクセラレータによるGPUスケジューリング
GPUに渡すフレームのスケジューリングを、OS側のソフトウェアではなくGPU側のハードウェアに任せる機能です。多くの環境ではオンのままで問題なく、待機時間の短縮につながります。ただし特定のドライババージョンとの組み合わせで不安定になる例が報告されており、KB5074109のケースでもGPUドライバのリセットがイベントログに記録されています。アップデート直後に不安定さを感じたら、この機能を切り替えて反応を見る価値があります。
- 確認・変更する場所
- 設定 → システム → ディスプレイ → グラフィック → 「既定のグラフィックス設定を変更する」を開き、「ハードウェアアクセラレータによるGPUスケジューリング」のスイッチを切り替えます。同じ画面にある「ウィンドウ表示のゲームを最適化する」のチェックも合わせて確認してください。こちらのオン/オフでfpsが変わったという報告もあります
- 試し方
- オンで不安定ならオフにして再起動し、同じ場面で再現するか確認します。逆にオフの状態で重いと感じている場合はオンにして試してください。どちらが安定するかはドライバのバージョンや環境によって変わります
Xbox Game Barとゲームモード
Xbox Game Barのオーバーレイやバックグラウンド録画は、ゲームの描画に割り込む形で動作します。Windows Update後にオーバーレイ関連の不具合が増えることもあるため、いったん止めて反応を見るのは一般的な切り分け手順です。
- ゲームモードの確認
- 設定 → ゲーム → ゲームモードで、オン・オフを切り替えられます
- Xbox Game Barの背景録画を止める
- 設定 → ゲーム → キャプチャで「バックグラウンドで録画する」をオフにします。使っていないなら、Game Bar自体を無効にしてもかまいません
アップデートをロールバックする具体的な手順
切り分けの結果、疑わしい更新が絞れたらロールバックを試します。更新の種類によって手順が変わるので、まずどちらのタイプかを確認してください。
- 品質更新(月例の累積更新)の場合
- KB5121003やKB5074109のような毎月配信される更新はこちらです。設定 → Windows Update → その他のオプション → 更新履歴 → 関連設定の「更新プログラムのアンインストール」を開き、対象の更新を選んで「アンインストール」をクリックします。日数の制限はありませんが、次の月例更新が配信されると一覧から消えることがあります
- 機能更新(バージョンが上がるタイプ)の場合
- 24H2から25H2への切り替えのような大型更新はこちらです。設定 → システム → 回復 → 回復オプションの「戻す」から実行します。既定では切り替えから10日以内が期限で、それを過ぎると通常は選べません。DISMコマンドで期限を最大60日まで延長する方法もありますが、切り替え直後にすぐ試すのが確実です
- 起動しない場合はWinREから
- 電源ボタンの長押しによる強制終了を2〜3回繰り返すと、回復環境(WinRE)が自動的に起動します。「トラブルシューティング」→「詳細オプション」→「更新プログラムのアンインストール」から、直近の品質更新または機能更新を外せます
- コマンドで指定のKBだけを外す
- 設定アプリの一覧に出てこない場合は、管理者権限のコマンドプロンプトで
wusa /uninstall /kb:5121003のようにKB番号を指定して実行する方法もあります
なお24H2から25H2への切り替えは、通常の品質更新とは別枠のロールバック期限(10日以内)が設けられています。それとは別に、24H2自体が2026年10月13日でサポートを終える点も押さえておいてください。有効化パッケージによる自動移行の仕組みや確認すべき設定はWindows 11 24H2のサポート終了と確認すべきことにまとめています。
ロールバックしただけでは、次のWindows Updateのタイミングで同じ更新が再配信され、症状がぶり返します。原因の切り分けが終わるまでは、設定 → Windows Update → 「更新を一時停止」から、最大5週間まで自動更新を止めておいてください。ただしセキュリティ更新も一緒に止まるため、長期間止めっぱなしにするのは避けてください。なお「一時停止」はHome・Proどちらでも使えますが、特定の不具合更新だけを長期的に避けるグループポリシーでの制御はProだけの機能です。エディションによる違いはWindows 11 HomeとProどちらを選ぶべきかで解説しています。
それでも直らないとき
ロールバックしても直らない場合は、更新そのものよりも、更新後に不安定になったGPUドライバとの組み合わせを疑います。
- GPUドライバをクリーンインストールする
- セーフモードで起動し、Wagnardsoft製のDDU(Display Driver Uninstaller)で既存のドライバを完全に削除してから、GPUメーカー公式サイトから最新版を入れ直します。上書き更新では設定や残骸が引き継がれ、同じ不具合が残ることがありますDDU公式サイト
- ブルースクリーンを伴う場合
- 停止コードから原因を絞り込む手順はゲーム中にブルースクリーンが出る原因にまとめています
- fpsは出ているのにカクつく場合
- 同期の設定やVBSが絡んでいることがあります。ゲームのカクつき・画面のズレを直す設定で切り分けてください
- 特定のゲームだけ起動できない場合
- Windows Update自体ではなく、Secure BootやTPM 2.0といった要件側が原因のことがあります。性能は足りているのに遊べないゲームで確認してください
DDUの詳しい手順や、そもそもドライバーを頻繁に更新すべきかという判断基準はGPUドライバーの更新方法とGame Ready/Studioの選び方で解説しています。
よくある質問
Q.Windows Updateを止め続けても大丈夫ですか?
A.セキュリティ更新も一緒に止まるため、長期間の停止はおすすめしません。一時停止は最大5週間で、期限が来ると自動的に最新の更新が適用されます。原因の切り分けが終わったら、なるべく早く再開してください。
Q.更新プログラムのアンインストールが一覧に出てきません
A.毎月配信される品質更新(累積更新)なら、次の月例更新が配信されたタイミングで一覧から消えていることがあります。24H2から25H2のような機能更新は、切り替えから10日を過ぎると設定アプリの「戻す」からは選べなくなります。どちらの場合も、管理者権限のコマンドプロンプトからwusaコマンドでKB番号を指定して試す方法が残っています。
Q.KB5121003が原因かどうか、どう見分ければよいですか?
A.設定のWindows Update内にある更新履歴で、症状が出た時期に近い日付の更新を確認してください。ARC RaidersとTHE FINALSでのクラッシュはEmbark Studiosが公式に認めていますが、Microsoft公式のWindowsリリースの正常性ページには2026年8月時点で掲載されていません。公式ページに載っていないことは、原因ではないことの証明にはなりません。
Q.GPUドライバとWindows Update、どちらを先に疑うべきですか?
A.Windows Updateの適用日と症状が出た日が近ければ、まずアップデート側を疑ってください。ドライバを自分で更新した記憶がないのにGPU関連のエラー(nvlddmkm等)が出ている場合は、Windows Update側がドライバの動作に影響しているケースが多いです。
Q.ハードウェアアクセラレータによるGPUスケジューリングは、オンとオフどちらがよいですか?
A.通常はオンのままで問題ありません。ただしWindows Updateの直後に不安定になった場合は、切り分けのために一度オフにして反応を見る価値があります。オフで安定するようならそのまま様子を見て、GPUドライバが更新されたタイミングで再度オンを試してください。
Q.アップデートが原因ではなさそうです。次に何を確認すればよいですか?
A.ブルースクリーンを伴うなら停止コードから、fpsは出ているのにカクつくだけならVBSや同期設定から確認してください。それぞれの切り分け手順は本文中のリンク先にまとめています。
まとめ・次に読みたい記事
Windows Updateの直後にゲームが重くなった、落ちるようになったと感じたら、まず更新履歴で日付を確認してください。2026年8月のKB5121003のように、Microsoft公式が問題として掲載していなくても、ゲーム開発元が原因を特定しているケースは珍しくありません。
切り分けの順番は、症状の時期を特定する、更新履歴を確認する、ロールバックして再現を確かめる、直らなければゲーム最適化機能を切り替える、それでも直らなければGPUドライバを入れ直す、の流れです。特定のKB番号を覚える必要はありません。この順番さえ押さえておけば、次に別の更新で同じことが起きても自分で対応できます。
ロールバックはあくまで一時しのぎです。根本的な修正版が配信されたら、更新の一時停止を解除して最新の状態に戻してください。



