電源ボタンを押しても、ファンの音もLEDの光も一切ない。何度押しても同じ。そんなときは、いきなり故障を疑って分解する前に、確認すべき順番があります。
この記事では、電源が入らない症状を「完全に無反応」と「電源は入るがOSまで届かない」の2段階に分けて、それぞれ何を確認すればどこまで原因を絞れるかを順番に解説します。コンセント周りの基本確認から、マザーボードのデバッグLED、CMOSクリア、電源ユニット単体の動作確認まで、実際に手を動かせる範囲をすべて含めています。
同じ「電源」というキーワードでも、いったんゲームが始まってから画面が消える症状や、起動して使えているのに再起動してしまう症状は原因がまったく別です。この記事はその手前、「ボタンを押した瞬間に何も起きない」「起きてもWindowsの画面まで届かない」という段階だけを扱います。切り分けの最後まで進んでも原因が特定できない場合や、保証期間内のBTOパソコンで分解に不安がある場合の判断基準もまとめました。
3段階に分けて考える
「電源が入らない」と一口に言っても、実際に起きていることは大きく3つに分かれます。まずどの段階かを確定させないと、見当違いの場所を探し続けることになります。
- ①完全に無反応 — ファンもLEDも一切動かない
- 電源ボタンを押しても、ケースファンが回る気配も、マザーボードやメモリのLEDが光る様子もない状態です。この記事の前半で扱う本命の症状で、電源が全くパソコン内部に届いていない可能性が高い段階です
- ②電源は入るがOSまで届かない — ファンは回る、LEDは点くが画面が出ない
- 電源ボタンを押すとファンが回転し、マザーボードのLEDも点灯するのに、モニターに何も映らない、あるいは数秒で止まる・再起動を繰り返す状態です。この記事の後半で扱います
- ③画面は出るが不安定 — 起動後にフリーズ・再起動・黒画面になる
- Windowsのロゴやデスクトップまでは表示されるのに、使用中に落ちる、勝手に再起動する、ゲーム中だけ画面が消えるといった症状です。これはこの記事の対象外で、専用の記事があります。ブルースクリーンや勝手な再起動が起きるならゲーム中にブルースクリーンが出る原因、ゲーム中に画面が消えてグラボのファンだけ全開になるならゲーム中に黒画面になりグラボのファンが全開になる原因を先に確認してください
以下では①と②を順番に見ていきます。①のほうが原因の候補が少なく、確認も単純なので、まずそちらから始めてください。
完全に無反応な場合にまず確認すること
ファンもLEDも一切動かないときは、パソコン内部の部品を疑う前に、電源が実際にパソコンへ届いているかを確認します。ここを飛ばして分解を始めると、単純な原因を見逃したまま無駄な作業を増やすことになります。
- コンセントに直接挿してみる
- 延長コードや電源タップ、テーブルタップ経由で使っている場合は、いったん壁のコンセントへ直接挿し直してください。タップ自体のスイッチが切れている、内部のヒューズが切れている、他の機器の過負荷でブレーカーが落ちているといった原因は珍しくありません。同じタップの別の家電が動くかどうかも確認します
- 電源ケーブルを挿し直す
- パソコン本体側と電源ユニット側の両方で、ケーブルが根元までしっかり挿さっているか確認します。3ピンの電源ケーブルは奥まで水平に挿さっていないと接触不良になることがあります。可能なら別の電源ケーブルに交換して試すと切り分けが早くなります
- 電源ユニット背面のロッカースイッチを確認する
- 電源ユニットの背面には「0」と「1」が書かれたスイッチが付いています。誤って「0」(オフ)側に切り替わっていないか確認してください。一度オフにしてから10秒ほど待ち、再びオンにするだけで直ることもあります
- 周辺機器をすべて外して最小構成にする
- 外付けHDD、USBメモリ、プリンター、ドッキングステーションなど、パソコンにつながっている周辺機器をいったんすべて取り外してから電源を入れてみます。特定の周辺機器がショートしていたり、USB給電に異常があったりすると、電源投入自体を妨げることがあります
- 内部に残った電気を放電する
- シャットダウンや停電の直後は、マザーボードや電源ユニットにわずかに電気が残っていることがあります。電源ケーブルを抜いた状態で電源ボタンを10〜30秒ほど押し続けると、内部に残った電気が抜けます。ドスパラも公式に、電源ケーブルを抜いた状態で電源ボタンを長押しする放電方法を案内しています(ドスパラ公式
)。数分置いてから電源ケーブルを挿し直し、起動を試してください - 電源ボタン自体を疑う
- ケースの電源ボタンが陥没したまま戻らない、押した感触がおかしい場合は、ボタンやケーブル側の故障の可能性があります。次の項目で、ボタンを経由せずに起動できるか確認する方法を説明します
ここまでで直らない場合は、電源ユニットそのものかマザーボード側の問題を疑う段階に進みます。
ケースの電源ボタンを経由せずに起動を試す
電源ボタンを押しても無反応なとき、原因がボタン側にあるのか、ボタンの先にある電源ユニットやマザーボード側にあるのかを切り分けられます。
マザーボードには、ケースの電源ボタンからのケーブルをつなぐ「PWR_SW」というピンヘッダーがあります。ケースのフロントパネルケーブルを外し、マイナスドライバーの先端でPWR_SWの2本のピンを一瞬だけ軽く触れさせると、電源ボタンを押したのと同じ信号が送られます。これで電源が入るなら、ケースの電源ボタン本体か、そこからマザーボードまでのケーブルに問題があります。ボタンやケーブルを交換すれば直る見込みが高くなります。
この方法でも無反応なら、原因はケースのボタンより奥、つまり電源ユニットかマザーボード側にある可能性が高くなります。PWR_SWピンの位置はマザーボードによって異なるため、作業前に取扱説明書でピンの配置を確認してください。ショートさせるのはPWR_SWの2ピンのみで、それ以外のピンには絶対に触れないでください。
マザーボードのスタンバイLEDで一次切り分けをする
多くのマザーボードには、電源ユニットから常時給電されている「スタンバイ電源LED」が付いています。これはATX電源の5VSB(+5V Standby)という回路で、コンセントから交流電源が供給されている限り、パソコン本体の電源を入れる前から点灯している小さなLEDです。
- スタンバイLEDが点灯している場合
- 電源ユニットからマザーボードまでは電気が届いています。この状態で電源ボタンを押しても無反応なら、マザーボード側の初期不良、CPUの未装着・接触不良、電源ボタン自体の故障などを疑う段階に進みます
- スタンバイLEDが点灯していない場合
- 電源ユニットからマザーボードへ電気が届いていません。ここまでの基本確認(コンセント・電源ケーブル・電源ユニットのスイッチ)をもう一度見直したうえで、電源ユニット自体の故障を疑います
スタンバイLEDが無いマザーボードもあります。その場合は、24ピン電源コネクタを挿した状態でチップセットファンやRGBイルミネーションがわずかに反応するかどうかで代用できることがありますが、確実ではありません。次に説明するデバッグLEDが搭載されているモデルなら、そちらのほうが確実な判断材料になります。
ファンは回るのに画面が出ない場合はデバッグLEDを見る
電源ボタンを押すとケースファンが回転し、マザーボードのLEDも点灯するのに、モニターに何も映らない場合は、②の段階に進んでいます。ここから先は、マザーボードに搭載されているデバッグLED(自己診断ランプ)を確認します。
ミドルレンジ以上のマザーボードには、CPU・DRAM・VGA・BOOTという4つのLEDが並んでいるのが一般的です。ASUSはQ-LED、MSIはEZ Debug LEDという名称で搭載しており(ASUS公式)、正常起動時は各LEDが一瞬ずつ点灯してすべて消えていきます。どこかのLEDが点灯したまま止まっている場合は、そこで自己診断が引っかかっていることになります。GIGABYTEの一部モデルは4つのLEDではなく、2桁の英数字でより細かいコードを表示する方式を採用しています。表示される段階は同じでも、メーカーによって見た目が違う点は覚えておいてください。
- CPU(赤)で止まっている場合
- CPUを認識できていません。CPUをソケットから一度取り外し、向きを確認して再装着してください。ソケットのピンが曲がっていないかも確認します。新しく購入したCPUをそのまま取り付けた場合は、マザーボードのBIOSがそのCPUの発売より前のバージョンで、対応していない可能性もあります。この場合はCPUなしでBIOSを更新できるBIOS Flashbackの使い方を確認してください
- DRAM(黄)で止まっている場合
- メモリを認識できていません。メモリをスロットから外し、金色の端子部分を軽く清掃してから、スロットに対して垂直にしっかり奥まで挿し直します。複数枚挿している場合は1枚だけにして起動を試し、どのスロット・どのモジュールが原因かを絞り込みます
- VGA(白)で止まっている場合
- グラフィックボードを認識できていません。カードをスロットから抜き、端子とPCI Expressスロットの汚れを確認してから、ラッチが固定される位置までまっすぐ挿し直します。補助電源ケーブルが根元まで挿さっているかも合わせて確認してください
- BOOT(緑)で止まっている場合
- 起動デバイスを認識できていません。SSDやHDDへのSATAケーブル、M.2 SSDの装着を確認します。BIOSの起動順序(Boot Order)が正しいドライブを指しているかどうかも確認してください
メモリとグラフィックボードを外して挿し直す作業をする前に、必ず電源ユニット背面のスイッチをオフにし、電源ケーブルを抜いてください。ケース内のLEDが完全に消えたことを確認してから作業します。また、作業の前にドアノブなど金属部分に手を触れて、体に帯電した静電気を逃がしてください。目に見えない静電気でも基板を傷めることがあります。掃除を兼ねて内部を開ける際の一般的な注意点はゲーミングPCの掃除・メンテナンス完全ガイドにまとめています。
なお、電源投入直後に「ピー」「ピピッ」といったビープ音が聞こえる場合は、その回数やパターンでも原因が絞れます。ただしこれはマザーボードにビープスピーカー(圧電スピーカー)が別途取り付けられている場合に限られ、多くの完成品BTOパソコンでは搭載されていないため、無音でもマザーボード側は正常に自己診断を続けています。音が出ないからといって焦らず、デバッグLEDのほうを優先して確認してください。
CMOSクリアを試す
デバッグLEDを一通り確認しても症状が変わらない場合や、直前にBIOSの設定を変更した、オーバークロックを設定した、メモリの周波数設定を変えた直後から起動しなくなった場合は、CMOSクリアを試します。CMOSクリアは、BIOSに保存されている設定を工場出荷時の状態へ戻す作業です。設定の不整合が原因で起動できなくなっている場合、これだけで直ることがあります。
- ジャンパピンを使う方法
- 電源ケーブルを抜いた状態で、マザーボード上の「CLRTC」「CLR_CMOS」などと書かれた2本のピンを、ドライバーの先端やジャンパーキャップで数秒間ショートさせます。作業後は必ずジャンパーピンを元の位置に戻してください。戻し忘れると次回起動できなくなります
- 背面のCMOSクリアボタンを使う方法
- 上位モデルの一部には、電源ユニットのスイッチを入れたまま背面から押せる専用ボタンが付いています。電源ケーブルを挿した状態でボタンを一度押すだけで設定がリセットされます
- ボタン電池を抜く方法
- 上記の手段がない場合は、マザーボード上のボタン電池(CR2032)を一度抜き、数分置いてから挿し直します。電池を抜く前に必ず電源ケーブルを抜いてください
CMOSクリアを行うと、BIOSで変更していたブート順序やファンカーブなどの設定もすべて初期値に戻ります。作業前にBIOSの設定内容をスマートフォンで撮影しておくと、後で元に戻す手間が減ります。手順の詳細はマザーボードごとに異なるため、型番を確認したうえで取扱説明書やメーカーサイトの記載を優先してください。
電源ユニット単体の動作確認について
ここまでの手順で直らない場合、最後に疑うのは電源ユニット本体です。電源ユニットが本当に発電しているかどうかを、パソコンから外した状態で確認する方法として「ペーパークリップテスト」が知られています。24ピンコネクタのPS_ONピンとGNDピンをクリップや導線で短絡させ、電源ユニット単体でファンが回るかを見る方法です。
このテストは、電源ユニット内部の回路を扱う作業であり、ピンの位置を間違える、他のピンに触れるといったミスがあると、ショートによる火花や部品の破損、金属部分に触れた際のやけどにつながる可能性があります。知識に自信がない場合は、無理にペーパークリップテストを行わないでください。電源ユニットの導通だけを安全に確認したいなら、電気工作の知識がなくても使える市販のPSUテスターを使うか、手持ちに動作確認済みの別の電源ユニットがあればそちらへ一時的に交換して切り分けるほうが安全です。あるいは、ここまでの切り分け結果を持って購入店やメーカーのサポートへ相談する方法もあります。
新しく電源ユニットを選び直す場合の容量の目安や、ATX 3.1がなぜ3.0の上位互換ではないかといった選定基準はゲーミングPCの電源ユニットの選び方で解説しています。
それでも直らないときの判断基準
コンセントからの通電確認、デバッグLEDでの切り分け、CMOSクリアまで試して症状が変わらない場合、原因は電源ユニット、マザーボード、CPUのいずれかの故障である可能性が高くなります。ここから先は、部品を実際に交換して切り分けるか、専門知識のある人に見てもらう領域です。
保証期間内のBTOパソコンを使っている場合は、ここで分解を続ける前に一度立ち止まってください。多くのBTOメーカーは、故意または過失、改造に起因する故障を保証対象外としています。自分で内部を開けて部品を抜き差しした形跡があると、たとえそれが原因でなくても、保証を使う際の説明が面倒になることがあります。特にCMOSクリアやメモリの抜き差し程度であれば通常は問題視されないことが多いですが、電源ユニットの分解やペーパークリップテストのように内部の高電圧部分に触れる作業は避け、症状を具体的にメモしたうえでサポートへ連絡したほうが早く解決します。
- サポートに伝えると話が早い情報
- 「電源ボタンを押した直後に何が起きるか(無反応/ファンだけ回る/一瞬点いて消える)」「スタンバイLEDやデバッグLEDの状態」「放電・CMOSクリアを試したかどうか」をまとめて伝えると、原因の切り分けが早く進みます
- 焦げた臭い・異音・変色がある場合は即座に使用を中止する
- 電源ユニットやマザーボード周辺から焦げた臭いがする、コネクタが変色している、パチパチという異音がした場合は、これ以上通電を試さず、コンセントを抜いた状態でメーカーや購入店に相談してください
- 保証・修理の流れを先に把握しておく
- 標準保証の期間や送料の負担はメーカーによって大きく異なります。連絡する前にBTOパソコンが故障したときの修理ガイドで流れを確認しておくと、やり取りがスムーズです
よくある質問
Q.電源ボタンを押しても何も反応しません。まず何を確認すればいいですか?
A.電源タップではなくコンセントに直接挿し直し、電源ユニット背面のロッカースイッチがオンになっているか、電源ケーブルが根元まで挿さっているかを確認してください。それでも直らない場合は、電源ケーブルを抜いた状態で電源ボタンを10〜30秒ほど長押しして内部に残った電気を放電してから、もう一度試してください。
Q.ファンは回るのに画面が映りません
A.マザーボードのデバッグLED(CPU/DRAM/VGA/BOOTなど)がどこで止まっているかを確認してください。VGAで止まっているならグラフィックボードの挿し直し、DRAMならメモリの挿し直しから試します。ビープスピーカーが搭載されている環境ならビープ音のパターンでも切り分けられますが、多くの完成品BTOパソコンには搭載されていません。
Q.ペーパークリップテストは自分でやってもいいですか?
A.電源ユニット内部の回路を扱うため、ショートによる火花や部品破損、やけどのリスクがあります。知識に自信がない場合はおすすめしません。市販のPSUテスターを使うか、動作確認済みの別の電源ユニットに交換して切り分けるほうが安全です。
Q.CMOSクリアをすると何が起きますか?
A.BIOSに保存されている設定がすべて工場出荷時の状態に戻ります。オーバークロックやメモリの周波数設定、ブート順序の変更なども初期値に戻るため、作業前にBIOSの設定をスマートフォンで撮影しておくと元に戻す作業が楽になります。
Q.保証期間内なら自分で分解しないほうがいいですか?
A.メモリの抜き差しやCMOSクリア程度は通常問題になりにくいですが、電源ユニットの分解やペーパークリップテストのように内部の高電圧部分に触れる作業は避けたほうが無難です。改造や過失に起因する故障を保証対象外とするメーカーが多いため、症状をメモしたうえで先にサポートへ連絡することをおすすめします。
Q.焦げた臭いがする場合はどうすればいいですか?
A.これ以上通電を試さず、すぐにコンセントを抜いてください。コネクタの変色や異音を伴う場合も同様です。無理に電源を入れ直したり分解したりせず、メーカーや購入店に相談してください。
まとめ
電源が入らないときは、いきなり部品を疑わず、まず段階を確定させることが近道です。ファンもLEDも一切動かないなら、コンセント・電源タップ・電源ユニットのスイッチ・電源ケーブルという外側の確認を先に済ませ、それでも直らなければ放電を試します。ケースの電源ボタン自体を疑うなら、マザーボードのPWR_SWピンを直接ショートさせて反応を見る方法もあります。
ファンは回るのに画面が出ない場合は、マザーボードのデバッグLEDがCPU・DRAM・VGA・BOOTのどこで止まっているかを確認してください。止まっている箇所に応じてメモリやグラフィックボードを挿し直し、直前に設定を変更していたならCMOSクリアも試します。
電源ユニット単体の動作確認にはショート・火花のリスクがあるペーパークリップテストが知られていますが、無理に自分で行う必要はありません。ここまで試して原因が特定できない場合、あるいは保証期間内のBTOパソコンで分解に不安がある場合は、症状を具体的に整理したうえで、分解を進める前にサポートへ相談してください。



