Battlefield 6やCall of Duty: Modern Warfare 4を起動しようとしたら、性能とは関係ないところで弾かれた。そんな相談が増えています。原因はたいていSecure BootかTPM 2.0が無効になっていることで、どちらもBIOS(UEFI)側の設定です。
結論から言うと、有効化そのものは難しい作業ではありません。マザーボードのメーカーによってメニューの名前と場所が違うだけで、やることは共通しています。この記事ではASUS・MSI・Gigabyte・ASRockの4社について、実際のメニュー名まで含めて手順をまとめました。
もう一つ、この記事で必ず触れておきたいことがあります。メモリ整合性(VBS)については「有効にすれば安全で万事解決」ではありません。VALORANTやLeague of LegendsのVanguard On-Demandはメモリ整合性が有効であることを求める一方、NARAKA: BLADEPOINTのように有効だと逆に起動できないタイトルもあります。この記事は有効化の手順を扱いますが、同時に無効化が必要になる場面についても正直に書きます。
そもそも何を有効にしようとしているのか
作業に入る前に、3つの機能がそれぞれ何をしているのかを押さえておきます。名前が似ているので混同しがちですが、担当している場所が違います。
- Secure Boot(セキュアブート)
- UEFI(マザーボードのファームウェア)の機能です。OSが起動する前の段階で、ブートローダーやドライバのデジタル署名を検証し、署名のない不正なプログラムが起動プロセスに割り込むのを防ぎます。Windowsが立ち上がるより前、いちばん最初の関門にあたります
- TPM 2.0(Trusted Platform Module)
- 暗号鍵の生成・保管を専門に行うセキュリティチップ、またはその機能です。マザーボードに物理チップとして載っている場合と、CPU内蔵の機能(IntelのPTT、AMDのfTPM)として提供される場合があります。BitLockerの暗号化キーの保管や、Windows Helloの生体認証情報の保護などに使われます
- メモリ整合性(VBS/HVCI)
- Windows側の機能です。CPUの仮想化支援機能を使い、OSのカーネルとは別の隔離された領域を作ります。その領域内で、カーネルモードで動くドライバが署名済みの安全なコードだけであることを検証するのがHVCI(Hypervisor-Protected Code Integrity)です。設定画面の「コア分離」の中にある「メモリ整合性」のスイッチがこれにあたります
Secure BootとTPM 2.0はUEFI(ファームウェア)側、メモリ整合性はWindows側の機能という違いがあります。前者2つはBattlefield 6やCall of Duty: Modern Warfare 4のアンチチートが起動条件として要求するもので、後者はVALORANT・League of LegendsのVanguard On-Demandが要求する項目の一つです。どのゲームがどの機能を要求するかは、当サイトの性能は足りているのに遊べないゲームにも一覧があります。
なお、EA公式のBattlefield 6システム要件表では「TPM 2.0 Enabled」「UEFI SECURE BOOT Enabled」と並んで「HVCI Capable」「VBS Capable」という項目も載っています。ここでの「Enabled」は文字どおり有効化必須、「Capable」は対応していること(=CPUや対応OSがその機能を使える状態であること)を指す表記で、両者は同列ではありません。メモリ整合性そのものを常時オンにすることまでは、BF6は求めていないということです。
Windows側でいまの状態を確認する
BIOSに入る前に、まず現在どうなっているかを確認します。Windowsキー+Rで「ファイル名を指定して実行」を開き、以下のコマンドを入力してください。
- msinfo32 でSecure Bootの状態を見る
- システム情報が開きます。「システム要約」の一覧にある「BIOSモード」がUEFI、「セキュアブートの状態」が「有効」になっていれば問題ありません。「BIOSモード」がレガシーの場合、Secure Bootはそもそも有効化できません
- tpm.msc でTPMの状態を見る
- 「TPM 管理」が開きます。「TPMは使用する準備ができています」と表示されれば有効です。「互換性のあるTPMが見つかりません」と出た場合は、BIOSでTPM自体が無効になっています
- windowsdefender://coreisolation/ でメモリ整合性の状態を見る
- スタートメニューで「コア分離」と検索しても同じ画面が開きます。「メモリ整合性」のスイッチがオン・オフのどちらかを確認してください
- msinfo32 でマザーボードのメーカーも分かります
- システム情報の「システム要約」には「ベースボードの製造元」「ベースボードの製品」という項目もあります。ここでASUS・MSI・Gigabyte・ASRockのどれかを確認しておくと、この後のBIOS操作で迷いません
- GPT形式かどうかも確認する
- ディスクの管理を開き、対象ディスクを右クリックして「プロパティ」→「ボリューム」タブの「パーティションのスタイル」を見ます。MBRと表示されている場合、Secure Bootを有効にする前にGPTへの変換が必要です。手順はWindows 11へのアップグレード手順で扱っているMBR2GPTを参照してください
BIOSモードがレガシー、あるいはディスクがMBRだった場合は、この記事のBIOS操作の前にもう一段階作業が必要になります。無理に進めるとWindowsが起動しなくなるので、バックアップを取ってから慎重に進めてください。
BIOS/UEFIでの有効化手順(メーカー別)
ここからが本題です。共通しているのは「CSM(レガシーBIOS互換モード)を無効にする」→「Secure Bootを有効にする」→「TPM(PTT/fTPM)を有効にする」という3ステップですが、メニューの場所と名前がメーカーごとに違います。
| メーカー | Secure Bootの場所 | TPM(PTT/fTPM)の場所 |
|---|---|---|
| ASUS | Boot → Secure Boot → OS Type を「Windows UEFI mode」に | Advanced → PCH-FW Configuration(Intel)/AMD fTPM configuration(AMD) |
| MSI | Settings → Advanced → Windows OS Configuration でUEFIに切替後、Settings → Security → Secure Boot | Settings → Security → Trusted Computing |
| Gigabyte | Boot(Advanced Mode)→ CSMをDisabled → Secure BootをEnabled → Secure Boot ModeをCustom | Settings → Miscellaneous → Intel Platform Trust Technology/AMD CPU fTPM(機種によりPeripheralsやTrusted Computing内のことも) |
| ASRock | Boot → CSM をDisabled → Security → Secure Boot → Secure Boot ModeをCustom | Intel: Security → Intel Platform Trust Technology/AMD: Advanced → CPU Configuration → AMD fTPM |
- ASUSの場合
- 起動時にDeleteキーでBIOSに入り、F7でAdvanced Modeへ。「Boot」タブの「Secure Boot」を開き、「OS Type」を「Windows UEFI mode」に変更するとSecure Boot自体が有効化されます。TPMはCPUによってメニュー名が変わり、Intel環境は「Advanced」内の「PCH-FW Configuration」→「TPM Device Selection」でPTTを選択、AMD環境は「AMD fTPM configuration」で「Firmware TPM」を選択します。ASUS公式サポート情報
で製品ごとの差分も確認できます - MSIの場合
- Deleteキー連打でBIOSへ。「Settings」→「Advanced」→「Windows OS Configuration」でBIOSのモードをUEFIに切り替えると、Secure Bootのメニューが表示されるようになります。その後「Settings」→「Security」→「Secure Boot」で有効化。TPMは同じく「Settings」→「Security」→「Trusted Computing」を開き、「Security Device Support」をEnabledにしたうえで「TPM Device Selection」からIntel環境ならPTT、AMD環境ならAMD CPU fTPMを選びます
- Gigabyteの場合
- F2キーでAdvanced Modeに入り、「Boot」タブでまず「CSM」を「Disabled」にします。CSMを無効にしないとSecure Bootの項目自体が表示されません。続けて「Secure Boot」を「Enabled」、「Secure Boot Mode」を「Custom」に設定し、「Restore Factory Keys」で鍵を復元します。TPMは「Settings」→「Miscellaneous」内のIntel Platform Trust Technology/AMD CPU fTPMが基本ですが、機種やBIOSのバージョンによって「Peripherals」や「Trusted Computing」に置かれていることもあります
- ASRockの場合
- F2キーでBIOSに入り、「Boot」→「CSM」を「Disabled」に。次に「Security」タブの「Secure Boot」で「Secure Boot Mode」を「Custom」にし、「Key Management」から「Install Default Secure Boot Keys」を選んでからSecure Bootを「Enabled」にします。「Disable the CSM in Setup」という警告が出る場合は、CSMの無効化が反映されていないので設定を保存し直してください。TPMはIntel環境なら「Security」タブ内のIntel Platform Trust Technology、AMD環境なら「Advanced」→「CPU Configuration」内のAMD fTPM Switchにあります
BTOで購入したPCの場合、マザーボードのメーカーが標準構成に明記されていないことも多いです。標準モデルは「B760チップセット搭載」のような表記にとどまる会社が多い一方、ツクモのG-GEARはASRock B760 Pro RSやASUS TUF GAMING B860-PLUS WIFIといった型番まで公開しており、フロンティアのFREX∀RはFRZシリーズがMSI製、FRXシリーズがASUS製と案内しています。自分のPCがどれかを知りたい場合は、前段のmsinfo32で「ベースボードの製造元」を見るのが確実です。BTOのスペック表の読み方全般はゲーミングPCのスペック表の見方にまとめています。
有効化する前に確認しておきたいこと
作業自体はBIOS画面の中で完結しますが、いくつか事前に知っておくと安心できる点があります。
- TPMやSecure Bootを有効にしてもデータは消えません
- どちらもハードウェア・ファームウェアのセキュリティ機能で、ストレージの中身を初期化するような操作ではありません。設定を変えるだけでファイルが消える心配はしなくて大丈夫です
- ただしBitLockerで暗号化されている場合は回復キーを控えておく
- Windows 11は24H2以降、TPM 2.0とSecure Bootが有効な環境ではセットアップ時にドライブの暗号化(デバイスの暗号化/BitLocker)が自動的に有効になっていることがあります。この状態でTPMのリセットやSecure Bootの有効・無効を切り替えると、起動時に48桁の回復キーを求められることがあります。作業前にMicrosoftアカウントの回復キー管理ページ
でキーを確認しておくと安全です - レガシーBIOS(CSM有効)のままではSecure Bootを選べない
- Secure BootはUEFIモードでの起動が前提です。CSMが有効なままだとメニュー自体がグレーアウトしていたり、そもそも表示されなかったりします。先にCSMを無効化してください
- ディスクがMBR形式だとUEFI起動に切り替えられない
- CSMを切ってUEFI専用にすると、MBR形式のディスクからは起動できなくなります。Windows標準のMBR2GPTツールでGPTに変換してから作業してください。失敗するとWindowsが起動しなくなる操作なので、事前のバックアップは必須です
- 設定変更後は必ず保存して再起動する
- F10キー(メーカーによって異なる場合があります)で変更を保存し、再起動して正常にWindowsが立ち上がることを確認してください。起動しない場合は、CSM・Secure Boot・ブート順序のどれかが噛み合っていない可能性が高いです
メモリ整合性(VBS)は「有効にすれば解決」ではありません
ここが誤解されやすいところなので、あらためて整理します。
メモリ整合性はマルウェア対策として優れた機能で、VALORANTとLeague of LegendsのVanguard On-Demand(2026年6月24日発表)は、これを含む5項目(Windows 11 25H2・UEFIモード+Secure Boot・TPM 2.0・VBS/メモリ整合性・IOMMU)をすべて満たした環境でのみ、アンチチートを常駐させずゲーム起動中だけ動かせるようにしています。この条件を満たすメリットは大きく、Riotによれば対応プレイヤーは全体の約34%とされています。
ところが同じメモリ整合性が、別のゲームでは起動そのものを妨げます。
- NARAKA: BLADEPOINTは有効だと起動できない
- アンチチート「NeacProtect」がメモリ整合性と正面から競合し、「please disable HVCI_KMCI」というエラーメッセージとともに起動できません。設定の「コア分離」からメモリ整合性をオフにする必要があります。詳しくはNARAKA: BLADEPOINT向けゲーミングPCで扱っています
- Windows自体が非対応ドライバを検知してブロックすることもある
- NeacProtectのようにゲーム側が積極的に拒否するケースとは別に、Windowsがメモリ整合性を有効化しようとした際、署名されていない・互換性のないドライバを検知して自動的に無効へ戻す安全機構もあります。この場合はコア分離の画面に「非互換のドライバー」という警告と、該当ドライバの一覧が表示されます
- 有効にするとfpsが落ちるという報告もある
- 海外メディアの検証では、RTX 4090環境でも平均約5%、タイトルによっては最大15%以上のfps低下が確認されています。原因は、CPUの仮想化処理がゲームの描画パイプラインにオーバーヘッドを加えるためです。fpsを最優先するゲーム専用機では、無効のままにする判断もありえます
つまり、Secure BootとTPM 2.0はUEFI側の設定なのでBattlefield 6やCall of Duty: Modern Warfare 4のために有効にしても問題は起きにくい一方、メモリ整合性はWindows側の機能で、遊ぶタイトルによって最適な状態が違います。「セキュリティ機能はすべて有効にしておけば安全」という単純な話ではなく、普段遊ぶゲームに合わせてオン・オフを使い分ける必要がある、というのがこの記事の結論です。両方を頻繁に切り替えるなら、そのたびに再起動が必要になる点も踏まえて、複数タイトルを併用する場合はどちらを優先するか決めておくと迷いません。この構図はブルースクリーンの原因としても表れることがあり、ゲーム中にブルースクリーンが出る原因のアンチチートの節でも扱っています。
よくある失敗
- CSMを無効にせずSecure Bootを探して見つからない
- 多くのメーカーで、CSMが有効なままだとSecure Bootのメニューが表示されないかグレーアウトしています。まずCSMをDisabledにしてください
- TPMを有効にしただけでSecure Bootも有効になったと思い込む
- この2つは別々の設定です。片方だけ有効にして、もう片方を確認せずに終えてしまう人がいます。msinfo32で両方を確認してから作業を終えてください
- BitLockerの回復キーを控えずに設定変更する
- Windows 11 24H2以降は暗号化が自動で有効になっている環境が増えています。回復キーが手元にないまま起動できなくなると、Microsoftアカウントのページから探すところから始めることになります
- メモリ整合性を有効にしたまま「NARAKAが起動しない」と悩む
- エラーメッセージに「HVCI_KMCI」と出ていれば、原因はメモリ整合性です。コア分離の設定からオフにしてください
- ディスクがMBRのままUEFI専用に切り替えて起動不能になる
- CSMを無効化する前に、ディスクの管理でパーティションのスタイルを必ず確認してください。MBRのままではUEFI専用モードから起動できません
よくある質問
Q.Secure BootとTPM 2.0を有効にすると、いま入っているデータは消えますか?
A.消えません。どちらもハードウェア・ファームウェアのセキュリティ機能で、ストレージを初期化する操作ではありません。ただしBitLockerでドライブが暗号化されている場合、設定変更後に起動時の検証が働き、回復キーの入力を求められることがあります。事前にMicrosoftアカウントの回復キー管理ページで確認しておくと安心です。
Q.自分のマザーボードがASUS・MSI・Gigabyte・ASRockのどれか分かりません
A.Windowsキー+Rで「msinfo32」を実行し、「システム情報」の「システム要約」にある「ベースボードの製造元」を見れば分かります。BTOで購入した場合、標準構成のスペック表にはチップセット名しか書かれていないことが多いため、この方法で確認するのが確実です。
Q.Secure BootのメニューがBIOSに見当たりません
A.多くの場合、CSM(レガシーBIOS互換モード)が有効になったままだと、Secure Bootのメニューが表示されないかグレーアウトします。Boot関連の設定からCSMを無効にしてから、あらためて探してください。それでも見つからない場合はBIOSのバージョンが古い可能性があるので、マザーボードメーカーの公式サイトから最新版に更新してみてください。
Q.メモリ整合性(VBS)は有効にしておくべきですか?
A.遊ぶタイトルによります。VALORANTとLeague of LegendsのVanguard On-Demandは有効であることを要求条件の一つにしていますが、NARAKA: BLADEPOINTは有効だと起動できません。両方を遊ぶ場合は、NARAKAをプレイするときだけ一時的にオフにするという運用が現実的です。fpsへの影響も報告されているため、常時有効にしておくかどうかは自分の遊び方で判断してください。
Q.TPMが「見つかりません」と表示されます。ハードウェアが壊れていますか?
A.壊れているとは限りません。近年のマザーボードは物理チップではなく、IntelならPTT、AMDならfTPMというCPU内蔵の機能でTPM 2.0に対応しています。この機能がBIOSで無効になっていると、Windows側からは「見つかりません」と表示されます。BIOSでPTTまたはfTPMをEnableにすれば認識されます。
Q.レガシーBIOS(CSM)のままではダメなのでしょうか?
A.Secure Bootを使う場合はダメです。Secure BootはUEFIでの起動が前提の機能で、CSMを無効にしてUEFI専用モードに切り替える必要があります。ただしCSMを切るとMBR形式のディスクから起動できなくなるため、事前にディスクの管理でパーティションのスタイルを確認し、MBRであればGPTに変換してから作業してください。
まとめ・次に読みたい記事
Secure Boot・TPM 2.0・メモリ整合性は、名前が似ているために混同されがちですが、担当する場所も、ゲームごとに求められる状態もそれぞれ違います。Secure BootとTPM 2.0はUEFI側の設定で、Battlefield 6やCall of Duty: Modern Warfare 4のように起動条件として一律に求められることが多く、有効にしておいて困ることはほとんどありません。
一方でメモリ整合性はWindows側の機能で、Vanguard On-Demandのように有効化を前提にするタイトルもあれば、NARAKA: BLADEPOINTのように無効化しないと起動できないタイトルもあります。「セキュリティ機能はすべてオンにしておけば安心」ではなく、自分が遊ぶゲームに合わせて設定する、という考え方を持っておくと、原因不明のトラブルに振り回されずに済みます。
作業を始める前には、msinfo32でBIOSモードとディスク形式を、tpm.mscでTPMの状態を確認してください。BitLockerで暗号化されている環境では、回復キーを控えておくことも忘れないようにしましょう。



