「ゲーミングPCを買うついでに、動画編集もできるようにしたい」——よくある相談です。

結論からお伝えすると、兼用は問題なく成立します。ゲーム用に組んだPCは、そのまま制作にも使えるだけの土台を持っています。

ただし注意点がひとつあります。制作で詰まる場所は、ゲームで詰まる場所と違うのです。多くの方はGPUを上げようとしますが、実際に足を引っ張るのはメモリとストレージです。しかもBTOの標準構成は、そこが最も薄くなっています。

この記事では、どこにお金をかけるべきかを、具体的な数字とともに整理します。

ゲームと制作では、効く場所が違います

まず仕組みの整理からです。動画編集の作業は、大きく2つの場面に分かれ、それぞれ効くパーツが違います。

プレビュー再生(編集中)
エフェクトを適用した映像をリアルタイムで処理するため、CPUとGPUが同時にフル稼働します。加えて、素材を展開しておくためのメモリが効きます
書き出し(エンコード)
CPUのマルチコア性能と、GPUのハードウェアエンコーダの両方が効きます。NVENCを使うとCPUのみの場合に比べて2〜5倍の速度で書き出せます

ゲームでは基本的にGPUが主役で、当サイトでも「同じ予算ならCPUよりGPU」とお伝えしてきました。制作ではこの原則がそのまま当てはまりません。CPU・GPU・メモリ・ストレージが、それぞれ別の場面で効いてくるためです。

最初に詰まるのはメモリです

ここが実際の壁になります。動画編集で必要なメモリ容量は、扱う解像度で段階的に変わります。

フルHD編集 — 16GBが最低ライン
この範囲であれば、ゲーミングPCの標準構成でもこなせます
4K編集 — 32GBが必須
Adobe Premiere Proの公式推奨でも、4Kメディア以上は32GB以上とされています。ここが分岐点です
カラーグレーディング・After Effects多用 — 32〜64GB
エフェクトを重ねるほどメモリを使います
8K素材・大量のノード処理 — 64GB以上
業務用途の領域です

そして、BTOゲーミングPCの標準構成はメモリ16GBです。当サイトで追いかけている実売価格を見ても、20万円台から30万円台のモデルはほぼ例外なく16GB DDR5・SSD 500GBという構成になっています。

つまり、ゲーム用に買ったPCで4K編集を始めようとすると、真っ先にメモリで詰まります。GPUがどれだけ強くても関係ありません。

メモリの選び方そのものはメモリの選び方にまとめています。

次に詰まるのはストレージです

そしてもうひとつ、見落とされやすいのがストレージです。こちらは計算してみると深刻さが分かります。

4K/60fpsの動画素材は、1分あたり400MBから1GB程度になります。1時間撮れば24GBから60GB。プロ向け機材の高画質モード(ALL-Intra)では、1分あたり2〜3GB以上になることもあります。

4K/60fpsの素材が占める容量の目安

1分あたり400MB〜1GBとして計算。撮影機材と設定で変動します

5時間ぶん300GB
3時間ぶん180GB
1時間ぶん60GB
10分ぶん10GB

ここでSSD 500GBという標準構成を思い出してください。実際に使える容量は約465GBで、そこにWindowsとゲームが入ります。大作ゲームは1本100GBを超えるものもあるため、数本入れれば200〜300GBは埋まります。

残るのは150〜250GB程度。4K素材なら2〜4時間分で満杯です。

一般的な目安としても、フルHD編集で500GB〜1TB、4K編集なら1〜2TB以上が推奨されています。標準構成の500GBは、制作を兼ねるには明らかに足りません。

作業用と保存用は分けるのが基本です

容量を増やすだけでなく、使い分けも重要です。

システム用(1TB程度)
OSとアプリケーション、そしてゲームを入れます
作業用(2TB以上)
編集中の素材とプロジェクトファイルを置きます。速度が効くのでSSDが望ましいところです
保存用(外付けなど)
完成した動画と、当面使わない素材を退避させます。ここは速度より容量とコストが優先です

BTOで注文するときは、SSDを1TB以上にしたうえで、増設用のスロットが空いているかを確認しておくと、あとから作業用を足せます。

GPUは、ゲーム用に選んだ時点で足りていることが多いです

ここが意外に思われる部分かもしれません。

DaVinci Resolveで4K編集をする場合、VRAM 8GB以上のGPUが強く推奨されています。裏を返せば、8GBあれば4K編集の土俵には乗るということです。

当サイトが20万円台の本命としてお伝えしているRTX 5060 Ti 16GBは、VRAMを16GB積んでいます。つまりゲーム目的でこのクラスを選んだ時点で、動画編集に必要なVRAMはすでに満たしていることになります。

だからこそ、GPUを1ランク上げるより、その予算をメモリ32GBとSSD 1TB以上に回すほうが、制作では確実に効きます

もちろん例外もあります。DaVinci Resolveは編集ソフトの中でもGPUの影響が大きく、CPUの性能差よりGPUの性能差のほうが体感に出るとされています。DaVinciを本格的に使うなら、GPUに配分する意味はあります。ただしそれでも、メモリ16GBのままでは頭打ちになります。順番としては、まずメモリとストレージです。

GPUごとにできることの整理はゲーミングPCでできることは?にまとめました。

CPUには、ゲームと制作で分岐があります

もうひとつ、判断が分かれるのがCPUです。

ゲーム性能を最優先するなら、当サイトでも繰り返しお伝えしているとおり3D V-Cacheを積んだX3Dシリーズが最強格です。ただし書き出し時間を短くしたいなら、話が変わります。

書き出しはマルチコア性能が効く処理です。Ryzen 7 9800X3Dは8コアですが、Ryzen 9クラスなら16コアに届きます。同じ予算なら、ゲーム重視か書き出し重視かでCPUの選び方が変わるということです。

ゲームが主・制作が従
X3Dで問題ありません。書き出しはNVENCに任せれば、CPUのみの場合の2〜5倍で処理できます
制作の比重が高い
コア数の多いモデルを検討してください。長尺の書き出しを日常的に行うなら、この差は積み上がります

CPUの選び方はCPUの選び方で詳しく整理しています。

動画編集以外の制作でも、効く場所は違います

ここまで動画編集を中心に説明してきましたが、制作の種類によって効くパーツは変わります。簡単に整理しておきます。

イラスト制作
高解像度のキャンバスとレイヤーを大量に扱うため、メモリが効きます。一方でGPUへの依存は動画編集ほど高くありません。ゲーム用の構成なら、メモリを増やすだけでほぼ足ります
3DCG(Blenderなど)
GPUでレンダリングする場合、シーンがVRAMに収まらないと極端に遅くなるという特性があります。ここはVRAM容量が効いてくるため、16GBを積んでいる意味が大きい用途です
ローカルAI
画像生成や言語モデルを手元で動かす用途では、VRAM容量がそのまま扱えるモデルの上限になります。詳しくはゲーミングPCでできることは?で整理しています

共通しているのは、どの用途でもメモリを増やす価値が高いという点です。逆にGPUを上げる価値は用途によってばらつきます。迷ったらメモリから、と覚えておくと外しにくくなります。

実売価格でどう組むか

2026年8月14日時点の実売価格をもとに、現実的な組み方を整理します。

20万4,980円 — RTX 5060 Ti 16GB(要カスタマイズ)
THIRDWAVE AD-R5A56C-01B(Ryzen 5 7500F/16GB DDR5/500GB SSD)。メモリ32GB・SSD 1TBへの増設を前提にしてください。GPUのVRAMは16GBあるので制作にも足ります
28万4,980円 — RTX 5070(要カスタマイズ)
GALLERIA XPR7M-R57-GD(Ryzen 7 7700/16GB DDR5/500GB SSD)。同じくメモリとSSDの増設が前提です
38万9,980円 — RTX 5070+Ryzen 7 9800X3D
GALLERIA XDR7A-R57-GD。最初から32GB DDR5・1TB SSDを積んでいます。増設の手間を省きたいならこの帯が素直です

注目していただきたいのは、上位構成になると標準でメモリ32GB・SSD 1TBになるという点です。20万円台のモデルを買って増設するか、最初からその構成のモデルを選ぶか、という選択になります。

増設が苦にならないなら前者のほうが安く済みます。作業に慣れていない方や、保証面で不安がある場合は、最初から積んだモデルを選ぶのが確実です。価格帯ごとの選び方は予算別おすすめゲーミングPCにまとめています。

なお、動画編集を仕事として行う場合、PCの購入費は経費として扱える場合があります。フリーランスの経費ガイドも参考にしてください。

よくある失敗

制作のためにGPUを1ランク上げる
VRAM 8GB以上あれば4K編集の土俵には乗ります。同じ予算ならメモリとストレージに回すほうが確実に効きます
メモリ16GBのまま4K編集を始める
Premiere Proの公式推奨でも4Kメディア以上は32GB以上です。ここは削れません
SSD 500GBのまま素材を貯める
OSとゲームを入れた残りは150〜250GB程度。4K素材なら2〜4時間分で満杯になります
作業用と保存用を分けない
1台のSSDにすべてを置くと、すぐ容量が逼迫します。完成した動画は外付けに退避させる運用が現実的です
X3Dなら書き出しも最速だと考える
X3Dはゲームでは最強格ですが、書き出しはマルチコアが効く処理です。コア数の多いモデルに分があります

よくある質問

Q.ゲーミングPCで動画編集はできますか?

A.できます。ゲーム用に組んだPCは制作に必要な土台を備えています。ただしBTOの標準構成はメモリ16GB・SSD 500GBであることが多く、4K編集を行うならメモリ32GB・SSD 1TB以上への増設が前提になります。

Q.動画編集にはどのくらいのメモリが必要ですか?

A.フルHD編集なら16GBが最低ライン、4K編集では32GBが必須です。Adobe Premiere Proの公式推奨でも4Kメディア以上は32GB以上とされています。カラーグレーディングやAfter Effectsを多用するなら32〜64GB、8K素材なら64GB以上が目安です。

Q.制作のためにGPUを上げるべきですか?

A.優先度は高くありません。DaVinci Resolveの4K編集で強く推奨されるのはVRAM 8GB以上で、ゲーム目的でRTX 5060 Ti 16GBクラスを選んでいれば既に満たしています。同じ予算があるなら、メモリ32GBとSSD 1TB以上に回すほうが確実に効きます。

Q.SSDは何GB必要ですか?

A.4K編集なら1〜2TB以上が目安です。4K/60fpsの素材は1分あたり400MB〜1GB、1時間で24〜60GBになります。500GBの標準構成だとOSとゲームを入れた残りが150〜250GB程度で、4K素材2〜4時間分で満杯になります。

Q.書き出しを速くするには何が効きますか?

A.CPUのマルチコア性能と、GPUのハードウェアエンコーダ(NVENC)の両方です。NVENCを使えばCPUのみの場合に比べて2〜5倍の速度で書き出せます。長尺を日常的に扱うなら、コア数の多いCPUを選ぶ意味もあります。

Q.ゲーム用と制作用でPCを分けるべきですか?

A.多くの方には不要です。1台で兼用できるだけの性能は現行のゲーミングPCにあります。分けるより、1台のメモリとストレージを充実させるほうが費用対効果は高くなります。

まとめ・次に読みたい記事

ゲーミングPCで動画編集を兼ねることは、問題なく成立します。ただし詰まる場所がゲームとは違うという点だけ、押さえておいてください。

制作で最初に足を引っ張るのはメモリ、次にストレージです。4K編集にはメモリ32GBが必須で、SSD 500GBは4K素材2〜4時間分で埋まります。一方でGPUは、ゲーム用に選んだ時点で足りていることが多いため、上げる優先度は高くありません。

GPUを1ランク上げる予算があるなら、メモリ32GBとSSD 1TB以上に回してください。制作での体感は、そちらのほうが確実に変わります。