携帯ゲーミングPCの選び方は、長らく「安さと手軽さならSteam Deck、互換性ならWindows機」で説明できました。
ところが2026年、この前提が崩れています。各機種が軒並み3〜7万円値上がりし、Steam Deckの価格優位が消えたためです。しかも値上げ幅はSteam Deckのほうが大きく、いまでは同容量のWindows機より高くなっています。
この記事では、2026年8月時点の実際の価格を確認したうえで、では何を基準に選ぶべきかを整理します。価格で選べなくなったぶん、判断軸ははっきりしました。
2026年、携帯ゲーミングPCは軒並み値上がりしました
まず事実確認からです。主要機種の価格が、この1年でどう動いたかを並べます。
- Steam Deck OLED 512GB — 84,800円 → 137,980円
- 2026年3月6日に15,000円、6月1日にさらに約38,000円の値上げ。2度の改定で5万円以上上がりました
- Steam Deck OLED 1TB — 99,800円 → 167,980円
- 同じく2度の改定を経ています
- ROG Xbox Ally — 89,800円 → 129,800円
- 2026年5月14日に40,000円の値上げ
- ROG Xbox Ally X — 139,800円 → 169,800円
- 2026年2月に30,000円の値上げ
値上げの理由として、Valveはメモリとストレージのコスト上昇を挙げています。これは当サイトがずっと追いかけてきた、デスクトップPCの高騰とまったく同じ原因です。携帯機も例外ではなかったということになります。
背景はゲーミングPCはいくら値上がりしたのかとメモリ不足は2028年まで続く?にまとめています。
「Steam Deckは安い」はもう成立しません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。値上げ幅に差があったため、機種間の順位が入れ替わりました。
主要な携帯ゲーミングPCの価格(2026年8月時点・税込)
Steam DeckはValve(KOMODO)、ROG Xbox AllyはASUS、Legion GoはLenovoの国内価格
同じ512GBで比べると、Steam Deck OLEDが137,980円、ROG Xbox Allyが129,800円。Steam Deckのほうが8,180円高くなりました。
上位帯も同様です。Steam Deck OLED 1TBが167,980円、ROG Xbox Ally Xが169,800円とほぼ同額ですが、中身はかなり違います。Ally XはRyzen AI Z2 Extremeにメモリ24GBで、Steam Deckの16GBを上回ります。
つまり、「安いからSteam Deck」という選び方は、2026年の日本では成立しません。Steam Deckを選ぶ理由は価格以外に求める必要があります。
判断軸はSteamOSかWindowsか
価格で選べなくなったぶん、判断軸ははっきりしました。どちらのOSで動くかです。
- SteamOS(Steam Deck)
- Arch Linuxベースの専用OSです。電源を入れればすぐゲーム画面が立ち上がり、スリープ復帰も速く、携帯機としての完成度は高い。ただしWindowsでしか動かないゲームがあります
- Windows 11(ROG Xbox Ally・Legion Go)
- PCとまったく同じなので、原理的にはすべてのゲームが動きます。Game PassやEpic、他のストアもそのまま使えます。ただしOSが携帯機向けに作られていないぶん、操作や電力管理で手間がかかる場面があります
ここは好みの問題ではなく、遊ぶタイトルで決まります。次で具体的に説明します。
SteamOSでは遊べないゲームがあります
Steam Deckを検討するうえで、いちばん重要な確認事項です。
SteamOSはLinuxベースなので、Windowsのゲームは互換レイヤー(Proton)を通して動かします。ほとんどのタイトルはこれで問題なく動くのですが、アンチチートだけは別です。
- なぜ動かないのか
- 対戦ゲームのアンチチートは、Windowsの深い部分(カーネル)に入り込んで監視する仕組みです。Linuxはこの領域へのアクセスを制限しているため、Protonでは再現できません
- 動かない代表例
- Valorant(Vanguard/ランクマッチには必須)、Fortnite、Call of Duty(RICOCHET)、バトルフィールド6(Javelin)、Destiny 2、PUBGなど
- 動くもの
- ValveのVACを使うCounter-Strike 2やDota 2は動きます。BattlEyeとEasy Anti-CheatもProtonに対応していますが、スタジオ側が有効にする必要があるため、対応済みかはタイトルごとに変わります
そして重要なのは、Epic・Riot・Bungieといった大手がSteamOS対応に動いていないという点です。2026年中にValorantやCall of Dutyが遊べるようになる見込みは薄いと見られています。
遊びたい対戦ゲームがこのリストにあるなら、選択肢はWindows機の一択です。ここは価格や好みで妥協できる部分ではありません。
なお、この「遊べないゲームがある」という壁は、Valveの据え置き機でも同じです。Steam Machineは買いかでも同じ論点を扱っています。据え置きのゲーム機と比べる場合はPS5とゲーミングPCはどっちを買うべきかもあわせてどうぞ。
主要3機種の性格
- Steam Deck OLED(137,980円〜)
- 7.4型OLED。SteamOSの完成度が最大の武器で、設定をいじらずにすぐ遊べます。省電力性も高く、軽めのタイトルを長時間遊ぶ用途に向きます。前述のとおり価格優位は失われました
- ROG Xbox Ally(129,800円)
- Ryzen Z2 A(4コア8スレッド)/16GB/512GB/7型フルHD 120Hz/約670g。Windows機の入門にあたる位置づけで、性能は控えめですが互換性の制約がありません
- ROG Xbox Ally X(169,800円)
- Ryzen AI Z2 Extreme(8コア16スレッド)/24GB LPDDR5X-8000/1TB/約715g。この帯では性能重視の選択肢です。ドックを使えば外部モニターとキーボード・マウスで据え置きのようにも使えます
- Legion Go Gen 2(189,000円)
- 8.8型OLED(1920×1200・144Hz)/Ryzen Z2 Extreme/32GB/1TB。画面が大きく、コントローラーが着脱できるのが特徴です。2025年12月の国内発売時の想定売価なので、購入前に最新価格をご確認ください
実際にどのくらい動くのか
いちばん気になる部分だと思います。結論から言うと、重量級タイトルは「動くが、かなり妥協した設定で」という水準です。
実測の例を挙げます。
- サイバーパンク2077
- Ryzen Z2 Extremeで平均47fps(Steam Deck向け画質プリセット+FSRバランス+1080p、電力枠25W時)。前世代のZ1 Extremeは42fpsでした
- モンスターハンターワイルズ
- Z1 Extremeの場合、720pの低設定にフレーム生成を併用して45fps、しかも電力枠28Wが必要でした。携帯機にとってはかなり重い部類です
- 軽めのタイトル
- インディー作品やターン制、少し前の名作であれば、画質を落とさずに快適に動きます。携帯機が本領を発揮するのはこの領域です
数字を見てのとおり、重量級を遊ぶにはアップスケーリングとフレーム生成が前提になります。これらの技術についてはアップスケーリング横断ガイドで解説しています。
電力枠で性能が変わる点にご注意ください
携帯機ならではの注意点がもうひとつあります。同じ機種でも、設定した電力枠(TDP)によって性能が変わります。
先ほどのサイバーパンク2077では、25W設定で47fpsだったZ2 Extremeが、17W設定では39fpsまで落ちます。電力を絞れば当然性能も下がるわけです。
これが意味するのは、バッテリー駆動時と電源接続時で体感が変わるということです。カタログの性能は電力枠を高くしたときの数字であることが多いので、「外に持ち出して長時間遊ぶ」使い方では、その性能をそのまま期待しないほうが安全です。
なお、Ryzen Z2 Extremeは前世代からの向上が控えめで、メモリ帯域が性能を制限しているという指摘もあります。世代が新しいから大幅に速い、という単純な話ではありません。
デスクトップの代わりになるか
当サイトは購入決定を扱うサイトなので、ここも正直にお答えします。代わりにはなりません。併用するものです。
携帯機のAPUは、消費電力の枠が15〜35W程度に収まるよう作られています。デスクトップ用のグラフィックボードとは前提が違うため、重量級タイトルを高画質で遊ぶ性能はありません。画面も7〜8.8型で、解像度はフルHD前後です。
- 携帯機が向く使い方
- インディーゲームや軽めのタイトル、積んだゲームの消化、移動中や布団の中での短時間プレイ。ドック接続でテレビに映す使い方も現実的です
- デスクトップが必要な使い方
- 重量級タイトルを高画質で、あるいは競技系を高フレームレートで遊ぶなら、携帯機では届きません。予算別おすすめゲーミングPCを参照してください
なお、13万円前後という価格帯は、デスクトップならRTX 5060クラスに手が届く金額です。2026年8月時点で、RTX 5060搭載のデスクトップは16万8,980円から見つかります。性能を求めるなら、同じ予算でも据え置きのほうが圧倒的に上という点は押さえておいてください。
こういう人に向きます
- デスクトップを持っていて、2台目として欲しい
- いちばん素直な使い方です。据え置きで重いゲーム、携帯機で軽いゲームという住み分けができます
- 遊ぶのが軽めのタイトル中心
- インディー作品やターン制ゲーム、少し前の名作なら十分快適に動きます
- 机に向かう時間が取れない
- 生活の都合でPCの前に座れない方にとっては、性能より「手に取れること」の価値が上回ります
逆に、これ1台でゲーム環境を完結させたい方には向きません。性能面でも、遊べるタイトルの範囲でも制約が出ます。その予算はデスクトップに充てたほうが満足度は高くなります。
よくある質問
Q.Steam DeckとROG Xbox Ally、どちらを買うべきですか?
A.遊びたいタイトルで決まります。ValorantやFortnite、Call of Duty、バトルフィールド6といったアンチチート必須の対戦ゲームを遊ぶなら、SteamOSでは動かないためWindows機(ROG Xbox Ally)の一択です。そうでなければSteam DeckのほうがOSの完成度は高く、すぐ遊べます。なお2026年8月時点では価格の優位はSteam Deckにありません。
Q.Steam Deckはなぜ値上がりしたのですか?
A.2026年3月6日と6月1日の2度にわたって改定され、512GBモデルは84,800円から137,980円になりました。Valveはメモリとストレージのコスト上昇を理由として挙げています。デスクトップPCの高騰と同じ原因で、携帯機も影響を受けた形です。
Q.携帯ゲーミングPCはデスクトップの代わりになりますか?
A.なりません。携帯機のAPUは消費電力15〜35W程度の枠で設計されており、重量級タイトルを高画質で遊ぶ性能はありません。13万円前後という価格帯は、デスクトップならRTX 5060クラスが狙える金額です。性能を求めるなら据え置きのほうが有利で、携帯機は2台目として考えるのが現実的です。
Q.SteamOSで遊べないゲームを教えてください
A.アンチチートがWindowsのカーネルに依存しているタイトルです。Valorant(Vanguard)、Fortnite、Call of Duty(RICOCHET)、バトルフィールド6(Javelin)、Destiny 2、PUBGなどが該当します。一方でCounter-Strike 2やDota 2は動きます。購入前に、遊びたいタイトルが対応しているかを必ず確認してください。
Q.Windows機のデメリットは何ですか?
A.OSが携帯機向けに設計されていないため、起動やスリープ復帰、電力管理、小さい画面でのWindows操作といった部分で手間がかかります。互換性という最大の利点と引き換えに、手軽さではSteam Deckに劣ります。
Q.いま買うべきですか、値下がりを待つべきですか?
A.値下がりを待つ根拠は薄い状況です。値上げの原因がメモリとストレージのコスト上昇であり、供給の正常化は2027年後半以降という見通しが優勢なためです。判断の考え方は今買うべきか待つべきかで整理しています。
まとめ・次に読みたい記事
2026年、携帯ゲーミングPCは軒並み3〜7万円値上がりし、Steam Deckの価格優位は失われました。同じ512GBで比べると、Steam Deck OLEDが137,980円、ROG Xbox Allyが129,800円です。
価格で選べなくなったぶん、判断軸ははっきりしています。SteamOSかWindowsか、そしてそれは遊びたいタイトルが動くかどうかで決まります。ValorantやFortnite、Call of Duty、バトルフィールド6を遊ぶなら、Windows機以外の選択肢はありません。
そして携帯機はデスクトップの代わりにはならず、2台目として考えるのが現実的です。価格や在庫は動きますので、購入前に各社の最新情報をご確認ください。



