Samsung Electronicsが、世界的なメモリ不足は2028年まで続く可能性があるとの見通しを示しました。一時的な品薄ではなく、AIサーバー向けのHBMや大容量DRAM、データセンター向けSSDへの需要が急増していることが背景にあります。さらにSK hynixは、2027年がメモリ業界史上でもっとも供給の厳しい年になると予測しており、需要が供給能力を上回る状態は2030年以降まで続く可能性があるとしています。
メモリ不足が長期化すれば、影響を受けるのはAIサーバーだけではありません。自作PC向けのDDR5メモリ、M.2 SSD、グラフィックボード、ゲーミングノートPC、BTOパソコンにも価格上昇が波及する可能性があります。本記事では、Samsung、SK hynixなどが示した最新見通しをもとに、メモリ不足が続く理由とゲーミングPC市場への影響、DDR5やSSDを今買うべきかを解説します。
Samsungがメモリ不足は2028年まで続くと予測
Samsung Electronicsは2026年7月30日の決算発表で、世界的なメモリ不足が今後さらに深刻化し、2028年まで続くとの見通しを示しました。同社でメモリ戦略マーケティング室長を務めるキム・ジェジュン上級副社長(Executive Vice President)によると、ほぼすべての顧客が複数年にわたる供給契約を求めているといいます。
Samsungは世界の大手データセンター事業者5社と供給契約を締結しており、さらに別の大手5社とも契約交渉を進めています。契約期間は少なくとも5年間で、前払い金や最低価格の設定が含まれるケースもあります。Samsungは今後、メモリ生産量の60〜70%を長期契約で販売する方針です。
これは、メモリメーカー側が現在の不足を短期的な現象ではなく、数年間続く構造的な問題として見ていることを意味します。
2027年は2026年よりも供給が厳しくなる可能性
Samsungの説明では、2026年中に供給できなかった需要が2027年へ持ち越されるため、2027年は2026年よりも需給が厳しくなる可能性があります。新しい半導体工場を建設しても、設備の導入から量産開始までには数年単位の時間が必要です。既存工場の生産能力を増やす場合も、製造装置や電力、用地、人材の確保が必要になります。そのため、需要が急増したからといって、すぐにDRAMやNANDフラッシュの生産量を増やせるわけではありません。
Samsungは2026年の不足分が2027年へ持ち越され、大幅な供給増がなければ不足状態が2028年まで続くと見ています。ただし、「2028年になれば不足が完全に解消する」という意味ではありません。正確には、少なくとも2028年までは需給が厳しい状態が続く可能性が高く、2029年以降については不確実性が大きいという見通しです。
SK hynixは2027年を「史上最悪の供給不足」と予測
Samsungよりも厳しい見通しを示しているのがSK hynixです。同社のクァク・ノジョンCEOは、2026年7月のNasdaq上場に合わせたインタビューで、2027年について「供給面では業界史上最悪の年になる」と述べています。同社は積極的に生産能力を拡大しているものの、顧客からの需要増加に設備投資が追いつかず、需要が同社の供給能力を上回る状態は2030年以降まで続く可能性があると予測しています。
SK hynixは、NVIDIAのAI向けGPUなどに使用されるHBMで高いシェアを持つメーカーです。AI関連企業からの注文状況を把握しやすい立場にあるSK hynixが、2030年以降も需要超過が続く可能性を示している点は重要です。
金融機関のUBSも、世界のDRAM市場は少なくとも2028年第2四半期まで供給不足が続くと予測しています。UBSの見通しは、以前「2027年第1四半期まで」としていたものを後ろ倒しした経緯があり、AI需要の拡大とともに今後さらに上方修正される可能性もあります。
メモリ不足が長期化する最大の理由はAI需要
今回のメモリ不足は、一般的なパソコンやスマートフォンの販売台数が急増しているためではありません。最大の要因は、生成AIやクラウドサービスを支えるデータセンター向け需要です。AIサーバーには、通常のサーバーよりも大量のメモリが搭載されます。GPUの周辺には高速なHBMが必要になり、CPU側にも大容量のDDR5メモリが必要です。さらに、AIモデルの学習データや推論データを保存するため、大容量かつ高速なエンタープライズSSDも大量に使用されます。
AI向けデータセンターが増えるほど、HBM、サーバーDRAM、NANDフラッシュの需要が同時に増加する構造です。SamsungもHBM4の売上高が2026年第3四半期に3倍以上へ増えると予想しており、AI向けメモリを今後の成長分野として重視しています。
HBMの増産で一般向けDDR5が不足する理由
HBMとデスクトップPC用DDR5メモリは、完成品としては異なる製品です。しかし、どちらもDRAMを製造する工場の生産能力を使用します。メモリメーカーが利益率の高いHBMやサーバー向けDRAMの生産を優先すれば、一般消費者向けDDR5に割り当てられる生産能力は相対的に減少します。HBMは複数のDRAMチップを積層し、高度な実装やパッケージングを行う必要があります。通常のDRAMより製造工程が複雑であり、製造装置や検査工程にも大きな負担がかかります。
その結果、AI向けHBMの注文が増えるほど、PC用DDR5の供給を簡単には増やせない状態になります。ただし、HBMが増産されたからといって、必ず同じ割合でDDR5が不足するわけではありません。製造ライン、契約、製品構成はメーカーごとに異なるため、HBM需要とPC用DDR5価格が完全に連動するとは限りません。それでも、限られた設備投資がAI向け製品へ集中すれば、一般向けメモリの値下がりを妨げる要因になります。
DDR5メモリの価格は今後どうなる?
メモリ不足が2028年まで続く場合、DDR5メモリは以前のような大幅値下がりを期待しにくくなります。特に影響を受けやすいのは、32GB以上の大容量構成です。現在のゲーミングPCでは、16GBよりも32GBが標準的な容量になりつつあります。最新ゲームを起動しながら、ブラウザ、Discord、録画ソフトなどを同時に使用する場合、32GBの方が安定しやすいためです。動画編集、配信、AIツール、仮想環境なども使用する場合は、64GBを選ぶユーザーも増えています。
需要が32GBや64GBへ移行する一方で供給が増えなければ、16GBよりも32GB×2枚や48GB×2枚といった大容量キットの方が値上がり額は大きくなりやすいでしょう。証券会社Jefferiesの四半期予測(2026年第3四半期に前期比40〜50%、第4四半期に30〜40%、2027年通年で前年比40〜45%の上昇)を掛け合わせて計算すると、2027年末までに2026年半ば比で2.5〜2.8倍程度に達する計算になります。特定のメディアがこの倍率をそのまま報じているわけではなく、複数四半期の伸び率を積み上げた推計値である点に注意してください。すべてのDDR5メモリが一律でこの倍率になるとは限りません。
メモリ価格には、半導体メーカー間の契約価格、業者間のスポット価格、メモリモジュールの卸売価格、国内ショップの販売価格など複数の段階があります。為替や国内在庫、メーカーの販売戦略によっても価格は変わるため、「2027年に必ず何倍になる」と断定するのは適切ではありません。
SSDも値上がりする可能性がある
今回の供給不足では、DRAMだけでなくNANDフラッシュにも注意が必要です。M.2 SSDは、データを保存するNANDフラッシュと、製品によってはキャッシュ用DRAMを使用します。AIデータセンターでは、学習データや生成データを保存するため、数十TB級のエンタープライズSSDが大量に導入されます。メモリメーカーがデータセンター向けNANDを優先すれば、一般向けSSDへ供給されるNANDフラッシュが減る可能性があります。
特に2TBや4TBのSSDは、1製品あたりに使用するNAND容量が大きいため、チップ価格上昇の影響を受けやすい製品です。ゲームのインストール容量は年々増えており、最新の大作ゲームを複数本入れると1TBでは不足するケースも珍しくありません。今後ゲーミングPCを購入する場合は、500GBや1TBで妥協して後から増設するより、価格差が小さいタイミングで2TBを選ぶ方が結果的に安くなる可能性があります。
グラフィックボードにも影響する?
メモリ価格の上昇は、グラフィックボードにも波及する可能性があります。グラフィックボードには、DDR5ではなくGDDR6、GDDR7などのグラフィックス用メモリが搭載されています。PC用DDR5とGDDRは別製品ですが、Samsung、SK hynix、Micronなど共通のメモリメーカーが供給しています。メモリメーカーがHBMやサーバーDRAMの生産を優先した場合、GDDRの供給量や契約価格にも影響が出る可能性があります。特にVRAMを16GB以上搭載する上位GPUは、1台あたりに使用するメモリ容量が大きいため、メモリ価格上昇の影響を受けやすくなります。
ただし、グラフィックボード価格はGPU本体の供給、為替、関税、メーカー在庫、販売店の仕入れ価格などにも左右されます。DDR5メモリが値上がりしたからといって、同じ時期にすべてのグラフィックボードが同じ割合で値上がりするわけではありません。
BTOゲーミングPCは自作PCより安くなる可能性
メモリやSSDの価格が上昇すると、自作PCよりもBTOゲーミングPCの方が安くなる場面が増える可能性があります。BTOメーカーは、メモリやSSDを個人ユーザーよりも大きな単位で仕入れています。長期契約や大量購入によって、価格上昇前の在庫を確保しているメーカーであれば、市販パーツが値上がりした後もしばらく旧価格に近い構成を販売できる場合があります。
一方で、在庫が切り替わったタイミングでは、メモリ増設やSSD増設のオプション価格が急に上がる可能性があります。本体価格を変えず、標準メモリを32GBから16GBへ減らしたり、SSDを2TBから1TBへ減らしたりする実質的な値上げも考えられます。ゲーミングPCを比較する際は、本体価格だけでなく、搭載メモリ容量、SSD容量、メモリ枚数、空きスロットの有無まで確認することが重要です。
DDR5メモリやSSDは今買うべき?
現在使用しているパソコンに容量不足がなく、すぐに増設する予定もない場合は、値上がりを恐れて必要のないメモリやSSDを買う必要はありません。一方で、半年から1年以内に32GBメモリや2TB SSDへ増設する予定があるなら、大幅な値下がりを待つメリットは小さくなっています。Samsungは少なくとも2028年までの供給不足を予測し、SK hynixは2027年がもっとも厳しい年になると見ています。そのため、2027年まで待てば安くなるとは限りません。
ただし、ニュースを見てすぐに通常価格より高い製品を買うのも避けるべきです。Amazonのセール、楽天市場のポイント還元、PCショップの週末セール、BTOメーカーのメモリ・SSD無料アップグレードなどを利用し、相場より安いタイミングで必要容量を確保するのが現実的です。
ゲーミングPC用メモリなら、現在は32GBを基準に考えるのがおすすめです。ゲームだけでなく動画編集や配信も行う場合は64GB、ゲーム中心で軽いタイトルしか遊ばない場合は16GBでも使用できます。SSDは複数の大作ゲームをインストールするなら2TB、プレイするゲームをこまめに入れ替えるなら1TBでも対応できます。
2028年まで値上がりし続けるとは限らない
メモリ不足が2028年まで続くという予測は、価格が2028年まで一直線に上がり続けることを意味しません。メモリ市場は、需要と供給によって価格が大きく変動します。AI投資が減速した場合や、中国メーカーの生産量が増えた場合、PCやスマートフォンの販売が想定以上に落ち込んだ場合には、一時的に価格が下がる可能性があります。また、メーカーが新工場を稼働させ、生産歩留まりが改善すれば、供給量が予想以上に増えることも考えられます。
一方で、AIデータセンターへの投資が現在の予測を上回れば、不足期間が2028年より長引く可能性もあります。SK hynixは、設備を積極的に増強しても顧客需要が供給能力を上回る状態が2030年以降まで続く可能性があるとしています。今回の予測は確定した未来ではなく、現在確認できる需要と設備投資計画をもとにした見通しとして捉える必要があります。
まとめ
Samsungは、世界的なメモリ不足がさらに深刻化し、2028年まで続く可能性があるとの見通しを示しました。SK hynixも2027年をメモリ業界史上もっとも供給の厳しい年と予測しており、需要が供給能力を上回る状態は2030年以降まで続く可能性があるとしています。背景にあるのは、AIサーバー向けHBM、サーバーDRAM、データセンター向けSSDの急激な需要増加です。
今後はPC用DDR5メモリやM.2 SSDだけでなく、グラフィックボード、ゲーミングノートPC、BTOパソコンにも価格上昇が波及する可能性があります。ただし、2028年まで価格が一直線に上がり続けるとは限りません。為替、国内在庫、AI投資、生産設備の増強によって、短期的には値下がりする場面も考えられます。
半年から1年以内にメモリやSSDを増設する予定がある場合は、将来の大幅値下がりを待つより、セールやポイント還元を利用して必要容量を確保するのが現実的です。特にゲーミングPCでは、メモリ32GBとSSD 2TBが使いやすい構成です。これからPCを購入する場合は、本体価格だけでなく、メモリとSSDの容量、増設費用、空きスロットまで含めて比較しましょう。



