GTX 1080 Tiや GTX 1660 SUPER、Radeon RX 5700 XT。数年前まで十分な性能を持っていたGPUが、いくつかの新作でまったく起動できないという報告が増えています。エラーメッセージも「重い」ではなく、起動画面にすら進めない、というものです。

原因は性能不足ではありません。ハードウェアレイトレーシングに対応したグラフィックボードであることが、起動そのものの条件になっているゲームが出てきたためです。当サイトのタイトル別記事を横断して確認したところ、2024年末から2026年秋にかけて、この条件を明記するタイトルが少しずつ増えています。

この記事では、対象になるGPUの世代を一次情報(Steam公式API・NVIDIA公式・AMD公式)で確認したうえで、なぜこの条件が広がっているのか、どのタイトルが該当するのか、そして買い替えるならどこまでのGPUが必要なのかを整理します。似た内容の記事に性能は足りているのに遊べないゲームがありますが、あちらはSecure BootやWindows 11必須といった起動条件全般を扱う記事で、この記事はハードウェアレイトレーシングの条件だけを掘り下げます。GPUの世代ではなくOS(SteamOS/Windows)が原因で遊べないケースはSteam Deck・Steam Frameで遊べない人気ゲーム一覧で扱っています。

対応ラインの結論

先に結論です。ハードウェアレイトレーシング対応の有無は、性能ではなく世代で決まります。

NVIDIA — RTX 20シリーズ以降なら対応
RTX 2060以上であれば世代の条件は満たします。GTX 16シリーズ・GTX 10シリーズ・GTX 900シリーズ以前は、ラスタライズ性能がどれだけ高くても対象外です。
AMD — RX 6000シリーズ以降なら対応
RX 6600以上であれば条件を満たします。RX 5000シリーズ(RDNA 1)、Vega世代、Polaris世代(RX 500/400シリーズ)にはレイトレーシング用の専用回路がなく対象外です。
Intel — Arc Aシリーズ以降なら対応
Arc A380・A750・A770やBシリーズは対応世代です。Iris Xe以前の内蔵GPU、UHD Graphicsは対象外です。

この線引きは、当サイトのエースコンバット8やGears of War: E-Dayの動作環境記事でも確認済みの内容です。GTX 1080 Tiのようにラスタライズ性能ではRTX 3060クラスに匹敵する旧世代の高性能カードでも、専用のレイトレーシング回路(RTコア・レイアクセラレータ)を持っていなければ、この条件を満たすタイトルは起動できません。

なぜ急にこの条件が広がっているのか

ここ数年、ハードウェアレイトレーシングは「対応していると綺麗になるオプション」という位置づけでした。それが「無いと起動しない必須条件」に変わったタイトルが出てきたのはなぜか。断定はできませんが、有力な要因が見えてきます。

該当する4本(後述)はいずれもUnreal Engine 5を採用しており、UE5の動的グローバルイルミネーション機能であるLumenを使っています。Lumenには、GPUのシェーダーで計算する「ソフトウェアレイトレーシング」モードと、GPU上の専用回路を使う「ハードウェアレイトレーシング」モードの2種類があり、Epic Games公式ドキュメントによれば、後者はRTコアやレイアクセラレータのような専用ハードウェアを必要とします。開発側がクオリティやパフォーマンスの都合でハードウェアレイトレーシングモードを前提に据えると、対応GPUを持たない環境はそもそも動かせなくなります。Lumenをハードウェアレイトレーシングモードで動かす設計を選んだタイトルが、結果としてGPU世代を条件にする、という筋道です。

この仮説を補強する材料が、当サイトが以前検証した別の新作にあります。同じUE5タイトルであるPhantom Blade Zeroは、開発中ビルドの技術分析でLumenもNaniteも使っていないと報じられており、実際に最小要件はGTX 1660(6GB)という控えめな設定で、ハードウェアレイトレーシングは必須になっていません。同じエンジンを使っていても、Lumenのハードウェアレイトレーシングモードを採用するかどうかで明暗が分かれている、と見ることができます。

ただし、これはあくまで4本の共通点から見えてくる仮説です。各社が必須化の理由を技術的に明言しているわけではなく、今後Lumenを使わない設計でも同種の条件を課すタイトルが出てくる可能性は否定できません。この点は正直にお伝えしておきます。

GPU世代の技術的な根拠

対応ラインの裏付けを、NVIDIAとAMDそれぞれの一次情報で確認しておきます。

NVIDIA — RTコアの有無がGTXとRTXを分けています
NVIDIA公式は、GeForce RTX GPUのRTコアがBVHトラバーサルとレイ・三角形交差判定を専用ハードウェアで高速化する一方、GeForce GTX GPUではこの計算をプログラマブルシェーダーコア(他の描画処理と共有するリソース)で行うと説明しています。GTX 16シリーズはRTX 20シリーズと同じTuring世代のアーキテクチャですが、このRTコアを搭載していません。NVIDIA公式(GeForce News)で確認する
AMD — Ray AcceleratorはRDNA 2から搭載されました
AMD公式のRadeon RX 6000シリーズ発表資料は、RDNA 2アーキテクチャの各コンピュートユニットに専用のRay Accelerator(固定機能のレイトレーシング高速化エンジン)を搭載したと説明しています。前世代のRDNA(RX 5000シリーズ)にはこの専用回路がありません。AMD公式ニュースルームで確認する

つまりGTX 16シリーズも、ドライバの更新によってDirectX Raytracing(DXR)を「動かすこと」自体はできます。NVIDIAは2019年、GTX 1660以降のGTX 16シリーズおよびGTX 10シリーズの一部に、ドライバ経由でDXR対応を追加しました。しかしこれは専用ハードウェアではなくシェーダーによる代替処理で、後述するタイトルが求める「ハードウェアレイトレーシング対応」の条件は満たしません。この誤解は当サイトのエースコンバット8の記事でも触れましたが、混同しやすいポイントなので改めて強調しておきます。

ハードウェアレイトレーシング必須のゲーム一覧

2026年9月時点で、Steam公式の動作環境ページに「ハードウェアレイトレーシング対応GPUが必須」と明記されているタイトルは4本です。発売順に並べます。

『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』(2024年12月8日発売)
最低要件の時点でGeForce RTX 2060 SUPER・Radeon RX 6600・Intel Arc A580のいずれかが必須です。Steam公式の動作環境には「GPU Hardware Ray Tracing Required」と明記されています。開発はMachineGames、Unreal Engine 5製です。
DOOM: The Dark Ages(2025年5月14日発売)
最低要件はNVIDIAまたはAMDのハードウェアレイトレーシング対応GPU(VRAM 8GB以上)で、具体例としてRTX 2060 SUPER・RX 6600が挙げられています。id Techエンジンの最新版を使用しています。
『ACE COMBAT 8: WINGS OF THEVE』(2026年10月2日発売予定)
最低要件からハードウェアレイトレーシング対応のグラフィックボードが必須です。RTX 2060(6GB)・RX 6600 XT(8GB)が最低ラインです。詳しくはエースコンバット8向けおすすめゲーミングPCにまとめました。
Gears of War: E-Day(2026年10月6日発売予定)
最低要件のGPU欄にRTX 5050・RTX 2060・Radeon RX 6600・Radeon RX 9060のいずれかで「ハードウェアレイトレーシング対応が必須」と明記されています。詳しくはGears of War: E-Day向けおすすめゲーミングPCにまとめました。

2024年末に登場したこの条件が、2026年秋には同じ月に発売される2本(エースコンバット8とGears of War: E-Day、4日違いで発売)にまで広がっている点は見ておく価値があります。とはいえ、2026年9月時点で確認できているのはこの4本にとどまり、新作のすべてがこの条件を採用しているわけではありません。

今のところ必須ではない2026年秋の新作

同じ2026年秋に発売される他のタイトルは、性格がまったく異なります。

SILENT HILL: Townfall(9月24日発売)
公式要件にハードウェアレイトレーシング必須の記載はありません。推奨GPUのRTX 3080は現行のRTX 5060 Ti 16GBとほぼ同格です。詳しくはSILENT HILL: Townfall向けおすすめゲーミングPCをご覧ください。
The Blood of Dawnwalker(9月3日発売)
2026年8月時点でレイトレーシング対応の有無自体が公式に明言されていません。最小要件はGTX 1060・RX 580という、レイトレーシング非対応世代のGPUです。詳しくはThe Blood of Dawnwalker向けおすすめゲーミングPCをご覧ください。
CONTROL Resonant(9月24日発売)
最小要件はGTX 1070、推奨要件はRTX 3070です。目玉機能のパストレーシングはあくまで追加要素で、起動条件としては求められていません。詳しくはCONTROL Resonant向けおすすめゲーミングPCをご覧ください。

「秋の新作=ハードウェアレイトレーシング必須」と決めつけて構成を組むと、必要以上のGPUを買うことになります。遊びたいタイトルの公式要件を個別に確認するのが確実です。

起動できない具体的なGPU

「対応していない世代」を、実際に人気のあった製品名で確認しておきます。いずれも当時は十分な性能を持っていたモデルです。

NVIDIA — GTX 1080 Ti、GTX 1070、GTX 1660 SUPER、GTX 1650など
GTX 10シリーズ・GTX 16シリーズ・それ以前のGTX 900シリーズは、性能に関係なく対象外です。GTX 1080 Tiは2017年当時のハイエンドで今も現役の方が多いカードですが、この条件では起動できません。
AMD — RX 5700 XT、RX 590、RX 580など
RDNA 1世代のRX 5000シリーズ、Polaris世代のRX 500/400シリーズ、Vega世代にはレイトレーシング用の専用回路がなく対象外です。
Intel — Iris Xe以前の内蔵GPU、UHD Graphicsなど
Arc Aシリーズより前の内蔵グラフィックスは対象外です。

自分のGPUがどちらに該当するか分からない場合は、Windowsの「dxdiag」やタスクマネージャーのパフォーマンスタブでモデル名を確認し、上記のリストと照らし合わせてください。型番だけでは新しさが分かりにくいことがある点は、ゲーミングPCのスペック表の見方でも扱っています。

買い替えるなら何が必要か

中古GPUを買って要件だけ満たす、という選択肢はおすすめしません。型落ちのRTX 20シリーズやRX 6000シリーズは流通からすでに数年が経っており、動作に不安が出たときに経年劣化なのか個体差なのかを切り分けにくいためです。これから新しく組む、または買い替えるなら、現行世代のGPUを選ぶのが現実的です。

最低限の対応ラインで組むなら
RTX 20シリーズ以降・RX 6000シリーズ以降であれば条件は満たしますが、いま新規に買うメリットはほぼありません。現行のエントリーGPUのほうが価格・省電力・対応機能のいずれでも有利です。
新規に組むなら現行のRTX 5060クラスが入口です
2026年9月時点のBTOの目安で、THIRDWAVEブランドのRTX 5060搭載機が17万円台〜、GALLERIAブランドで21万円台〜です。ハードウェアレイトレーシング対応はもちろん、対象の4タイトルが要求する最低ラインも上回ります。
レイトレーシングを常時使う前提なら一段上を
エースコンバット8やGears of War: E-Dayのようにレイトレーシングが常時走るタイトルを快適に遊ぶなら、RTX 5060 Ti 16GBクラス(THIRDWAVEブランドで22万円前後〜)以上を目安にしてください。

価格は変動が激しい局面が続いているため、あくまで2026年9月時点の目安として捉えてください。GPU選びの基本はグラフィックボードの選び方、NVIDIAとAMDどちらを選ぶかはRadeonは買いかにまとめています。すでに使っているPCのグラフィックボードだけを載せ替える場合の手順はグラボ交換手順ガイドを参考にしてください。

よくある失敗

GTX 1080 Tiのような高性能な旧世代GPUなら動くと思い込む
ラスタライズ性能ではなく、専用のレイトレーシング回路の有無で判定されます。GTX 10/16シリーズはどれだけ性能が高くても対象外です。
ドライバ経由のDXR対応を「ハードウェアレイトレーシング対応」だと誤解する
GTX 16シリーズや一部のGTX 10シリーズはドライバでDXRを動かせますが、これはシェーダーによる代替処理です。対象タイトルが求める条件とは別物です。
秋の新作は全部ハードウェアレイトレーシング必須だと思い込む
2026年9月時点で確認できているのは4本だけです。SILENT HILL: TownfallやThe Blood of Dawnwalkerのように必須でないタイトルも同じ秋に発売されます。
要件を満たすためだけに中古GPUを探す
型落ちのRTX 20シリーズやRX 6000シリーズは流通から数年が経っており、不調が出たときの原因切り分けが難しくなります。新規に組むなら現行世代を選んでください。

よくある質問

Q.ハードウェアレイトレーシングが必須のゲームはどれですか?

A.2026年9月時点でSteam公式が「ハードウェアレイトレーシング対応GPUが必須」と明記しているのは、インディ・ジョーンズ/大いなる円環、DOOM: The Dark Ages、エースコンバット8、Gears of War: E-Dayの4本です。

Q.GTX 1080 TiやGTX 1660 SUPERは対象外ですか?

A.対象外です。GTX 10シリーズ・GTX 16シリーズには専用のレイトレーシング回路(RTコア)がなく、性能に関係なく起動できません。GeForceならRTX 20シリーズ以降が必要です。

Q.RX 5700 XTのようなRadeonはどうですか?

A.こちらも対象外です。RDNA 1世代のRadeon RX 5000シリーズにはレイトレーシング用のRay Acceleratorが搭載されていません。AMDならRadeon RX 6000シリーズ(RDNA 2)以降が必要です。

Q.なぜハードウェアレイトレーシング必須のゲームが増えているのですか?

A.断定はできませんが、該当タイトルがいずれもUnreal Engine 5のLumenをハードウェアレイトレーシングモードで動かしていることが有力な要因と考えられます。同じUE5タイトルでもLumenを使わない設計であれば必須にはなりません。

Q.ドライバでDXRに対応していれば遊べますか?

A.遊べません。GTX 16シリーズなどのドライバ経由のDXR対応は、専用ハードウェアではなくシェーダーによる代替処理です。対象タイトルが求める「ハードウェアレイトレーシング対応」の条件は満たしません。

Q.秋の新作は全部この条件がありますか?

A.ありません。同じ2026年秋発売でも、SILENT HILL: Townfall、The Blood of Dawnwalker、CONTROL Resonantはハードウェアレイトレーシング必須の記載がなく、GTX 1060やGTX 1070クラスでも最低要件を満たします。

Q.買い替えるならどのGPUがおすすめですか?

A.条件を満たすだけならRTX 20シリーズ・RX 6000シリーズ以降ですが、中古の型落ち品はおすすめしません。新規に組むなら、2026年9月時点でBTOのTHIRDWAVEブランドのRTX 5060搭載機が17万円台〜、レイトレーシングを常時使うタイトルを見据えるならRTX 5060 Ti 16GBクラスが目安です。

まとめ・次に読みたい記事

ハードウェアレイトレーシング対応GPUが起動の必須条件になっているタイトルは、2026年9月時点で4本です。インディ・ジョーンズ/大いなる円環(2024年12月)、DOOM: The Dark Ages(2025年5月)、エースコンバット8(2026年10月)、Gears of War: E-Day(2026年10月)と、2年足らずの間に増えてきています。

対応の有無は性能ではなく世代で決まります。NVIDIAならRTX 20シリーズ以降、AMDならRX 6000シリーズ以降、IntelならArc Aシリーズ以降です。GTX 1080 Tiのような高性能な旧世代GPUでも、この条件の前では起動すらできません。

一方で、同じ2026年秋の新作にもSILENT HILL: TownfallやThe Blood of Dawnwalkerのように条件がまったく異なるタイトルがあります。遊びたい作品の公式要件を個別に確認したうえで、必要な範囲で買い替えを検討してください。