「microSDで容量を拡張できます」。当サイトの携帯ゲーミングPC関連の記事でも、この一文で済ませてきた部分があります。ですが実際に買う段になると、そこで足を止める人は多いはずです。店頭にもAmazonにも「microSD Express」と「microSDXC」という似た名前の商品が並んでいて、しかも値段が3倍近く違います。

結論から言うと、この2つは同じ土俵の製品ではありません。Nintendo Switch2はmicroSD Expressしか受け付けず、通常のmicroSDXCを挿してもゲームのダウンロードには使えません。ところがSteam Deck・Steam Machine・Steam FrameはValveが意図的にUHS-I止まりのカードリーダーを採用しており、高いExpressカードを挿してもUHS-Iの速度しか出ません。ROG AllyシリーズもX20という例外を除けば同じ状況です。つまり「高い方が正解」でも「Switch2で必須だからどの機種でも買っておけば安心」でもなく、機種ごとに答えが分かれます。

この記事では、規格そのものの技術的な違いから、Nintendo Switch2・Steam Deck・Steam Machine・Steam Frame・ROG Ally系・Legion Go系・そしてデスクトップPC本体まで、対応状況を機種別に整理します。型番だけを見て高いカードを買い、対応していない機種で宝の持ち腐れにしないための記事です。

そもそもmicroSD ExpressとmicroSDXCは何が違うのか

まず前提を整理します。「microSDXC」はカードの記憶容量による分類名(32GB超〜2TBまで)で、Express専用の呼び方ではありません。速度を左右しているのは、カードとリーダーの間をつなぐ「バス規格」のほうです。

UHS-I(多くのmicroSDXCカードが採用)
従来からあるバス規格で、SD Associationの公表値では理論上の最大転送速度は104MB/s。実際のカードやリーダーでは90〜100MB/s程度に収まることがほとんどです
UHS-II
ピンの列を2段に増やして帯域を広げた規格です。理論上の最大転送速度は312MB/s(片方向)。UHS-Iより高速ですが、後述するPCIe/NVMeベースのExpressとは仕組みが異なります
microSD Express
スマートフォンやカメラで使われてきたUHS方式ではなく、PCのSSDと同じPCIe(Peripheral Component Interconnect Express)とNVMe(Non-Volatile Memory Express)を土台にした規格です。2019年公開のSD 7.1仕様で登場し、当初の理論上の最大速度は985MB/s。2023年10月公開のmicroSD Addendum Ver.8.0仕様でPCIe Gen4 x1接続に対応し、理論上の最大速度は約1,969MB/s(ほぼ2GB/s)まで引き上げられています

SDカード バス規格別の理論上の最大転送速度(SD Association公表値)

実際のカード・リーダーの実効速度は理論値の6〜9割程度に収まるのが一般的です

Default Speed12.5MB/s
High Speed25MB/s
UHS-I104MB/s
UHS-II(片方向)312MB/s
UHS-III(全二重)624MB/s
microSD Express(Ver.8.0・PCIe Gen4 x1)1969MB/s

出典: SD Association公式|Bus Speed Overview

見てのとおり、microSD ExpressはUHS-Iの約19倍、UHS-IIと比べても約6倍の理論値を持っています。ただし注意点が一つあります。「microSD Express」を名乗るカードのすべてが約2GB/sを出せるわけではなく、2019年の初期仕様(985MB/s止まり)のカードと、2023年10月以降のVer.8.0対応カード(約1,969MB/s)が混在しています。パッケージの表記だけでなく、対応するSDバージョン(SD 7.xかSD 8.0か)まで確認したほうが確実です。

価格差も小さくありません。任天堂ライセンス品のmicroSD Express 256GBは、2026年8月の価格改定でサンディスク製・サムスン製とも6,980円から8,980円に値上がりしました。同容量のUHS-I専用カードは、ブランドや型番によって数千円で購入できる製品も多く、Expressは相応にプレミアムが乗った価格帯にあります。

機種別の対応早見表

ここからが本題です。規格の話を踏まえたうえで、実際の機種がどちらに対応しているかを一覧にしました。

機種カードリーダーの規格Expressを買う意味
Nintendo Switch2microSD Express専用必須(通常のmicroSDXCは使えません)
Steam Deck(OLED)UHS-Iほぼありません(UHS-Iに頭打ち)
Steam MachineUHS-I(Valveの設計方針)ほぼありません
Steam FrameUHS-I(Valveの設計方針)ほぼありません
ROG Ally/ROG Ally XUHS-II非対応(挿さっても動くが速度は出ません)
ROG Xbox Ally/ROG Xbox Ally XUHS-II非対応
ROG Xbox Ally X20microSD Express対応(ASUS公式仕様)意味はあるはずですが実効速度は未検証です
Legion Go/Legion Go Gen 2UHS-II非対応
デスクトップPC本体大半は非搭載、搭載機もUHS-I・IIが主流ほぼありません(専用の外付けリーダーが必要)

以下、機種ごとに根拠と注意点を掘り下げます。

Nintendo Switch2はmicroSD Express以外を受け付けません

任天堂のサポートページによれば、Nintendo Switch2はmicroSD Expressカードのみに対応しており、従来のNintendo Switchで使っていた通常のmicroSDXC(UHS-I)カードは本体に挿しても「microSD Expressメモリーカード以外は使えません」という表示が出て使用できません。ダウンロードソフト・アップデートデータ・DLC・スクリーンショットや動画の保存先には、Express対応カードが必須です。

唯一の例外はスクリーンショット・動画の取り込みです
初代Nintendo Switchで使っていた通常のmicroSDカードは、そこに保存されていたスクリーンショットや動画をSwitch2の本体メモリーに一度だけ取り込む用途に限り使えます。ゲームのプレイやセーブには使えませんNintendo公式サポート(英語版)
対応容量は2TBまでです
microSD Express規格に準拠していれば、2TBまでのカードが利用できるとNintendo公式が案内しています
セーブデータは本体メモリー固定です
ダウンロードソフト本体やアップデートはmicroSD Expressに保存できますが、セーブデータ自体は本体メモリーに保存される仕様です

なぜここまで厳格にExpress専用としたのか、任天堂は明確な理由を公表していません。ただし複数の周辺機器メーカーの解説記事では、PCIeチャンネルを使うことでUHS-Iカードの約10倍にあたる800MB/s超の転送速度を実現でき、大容量化するゲームデータの読み込みをスムーズにするためという趣旨の説明がされています。携帯機は据え置き機と違って内蔵ストレージの増設が事実上できないため、外部ストレージの実効速度を内蔵SSDに近づける必要があったという見方です。

なお、任天堂ライセンス品であっても個体差による認識不良の報告は一定数あります。購入後にカードが認識されない場合は、まずパソコンでFAT32/exFAT形式に再フォーマットを試し、改善しなければ購入店やメーカーのサポート窓口に相談してください。

Steam Deck・Steam Machine・Steam FrameはあえてUHS-Iのままです

ここが「高い方が正解とは限らない」を象徴する部分です。ValveはSteam Deck・Steam Machine・Steam Frameの3機種すべてで、カードリーダーをUHS-I止まりに統一しています。海外メディアの報道によると、Valveのハードウェアエンジニアはこの方針についてインタビューで「SDカードは低性能だと言われがちだが、私たちのテストと経験では実際にはかなり良好に動作する」という趣旨の発言をしており、速度よりも既存のSDカード資産をそのまま使い回せる手軽さを優先した設計だとうかがえます。

参考: PC Gamer|Valve recommends sharing your game library on microSD card(3機種間でのカード共有を推奨しているという趣旨の報道)

実際の速度も、この設計方針と整合的です。Steam Deckのユーザーによる実測レポートでは、512GBのUHS-Iカードでシーケンシャル読み込みが約88MB/sにとどまり、カード自体の定格速度(160MB/sや190MB/s)を上げても数値はほとんど変わらないという結果が繰り返し報告されています。ボトルネックになっているのはカードではなく本体側のリーダーだということです。

Steam Deck(OLED)
UHS-I採用。実測ではシーケンシャル読み込みが85〜90MB/s前後で頭打ちになるという報告が複数あります。Expressカードを挿しても物理的には動作しますが、UHS-I相当の速度しか出ません
Steam Machine
512GBまたは2TBの内蔵NVMe SSDに加え、microSDで拡張できます。カードリーダーはSteam Deckと同じUHS-I系統とみられ、ゲームライブラリをSteam Deckと共有できる設計になっています。詳しくはSteam Machineは買いかで扱っています
Steam Frame
256GBまたは1TBのUFSストレージに加え、microSDXCカードで拡張可能です。他の2機種と同じくUHS-I系統のリーダーとみられ、Steam Deck・Steam Machineとカードを共有してすぐ遊べる設計です。詳しくはSteam FrameはMeta Quest 3と比べて買いかで扱っています

3機種に共通するのは、「同じカードを挿せばどの機種でもすぐゲームが遊べる」という相互運用性を優先した設計思想です。Valveはこの3機種間でmicroSDカードをそのまま差し替えられることを公式に推奨しており、速度よりも手軽さを取ったという理解が近いでしょう。したがって、これらの機種のために高価なmicroSD Expressカードを新調しても、体感できる差はほぼ期待できません。

ROG Allyシリーズは「X20」だけが例外です

ASUSのROG Allyシリーズは、これまで一貫してUHS-II止まりのカードリーダーを採用してきました。公式スペックページで確認したところ、以下のとおりです。

ROG Ally(2023)/ROG Ally X(2024)
いずれも「1x UHS-II microSD card reader」と明記されており、microSD Expressには対応していません
ROG Xbox Ally/ROG Xbox Ally X(2025)
こちらもASUS公式スペック上はUHS-II止まりのカードリーダーです。ROG Ally X・ROG Xbox Ally Xについては海外のユーザーレポートでDDR200相当のモードで動作しているという報告もありますが、ASUS公式スペックに明記はありません。DDR200はUHS-I規格の拡張モードで、PCIe/NVMeベースのmicroSD Expressとは別物です
ROG Xbox Ally X20(2026)
ASUS公式スペックには「1x microSD Express card reader (supports up to SD v8.0, PCIe Gen4 x1; UHS-I with DDR200 mode)」と記載されており、ROG Allyシリーズで初めてmicroSD Express(最新のVer.8.0仕様)に対応したカードリーダーを搭載しています。UHS-I・DDR200モードとの後方互換も明記されているため、旧世代のカードもそのまま使えますASUS公式|ROG Xbox Ally X20スペック

ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。ASUSの公式スペックはROG Xbox Ally X20がmicroSD Expressの規格(PCIe Gen4 x1)に対応していると明記していますが、実際にカタログどおりの実効速度が出ているかを検証した第三者のベンチマークやレビューは、この記事の執筆時点で見つけられませんでした。ROG Ally Xの例では、公式スペック上はUHS-IIやDDR200モードに対応しているにもかかわらず、内蔵リーダーでの実測値が理論値をかなり下回り(海外メディアの実測でおよそ97MB/s、外付けリーダー経由では150〜170MB/s)、内蔵リーダー側の実装が足かせになっていたという報告があります。X20のmicroSD Expressリーダーについても、同様に理論値どおりの速度が出ない可能性は否定できません。Switch2のように多数のレビューサイトがカード単位でベンチマークを公開している段階ではないため、現時点では「規格上はExpressに対応している」以上のことは断定を避けます。実機レビューが出そろい次第、この記事も更新する予定です。

Legion Go系とデスクトップPCの本体はどうか

Legion Go/Legion Go Gen 2
Lenovoの公式資料・製品情報では、いずれもUHS-II対応のmicroSDカードリーダーと案内されています。microSD Expressには対応していません
デスクトップPC本体
多くのミドルタワーPCケースやマザーボードには、そもそもmicroSDカードスロットが標準搭載されていません。前面パネルにカードリーダーが付いているケースでも、UHS-IまたはUHS-II止まりが一般的です。デスクトップでmicroSD Expressの速度を本当に活かしたい場合は、PCIe/NVMe接続に対応した専用の外付けUSBリーダー(Lexarのportable readerなど)を別途用意する必要があります

普段デスクトップでゲームをしていて、Nintendo Switch2用に買ったmicroSD Expressカードの中身をPCで見たい、というケースはよくあります。その場合、一般的なUSBカードリーダーやカードスロット搭載のノートPCではUHS-I相当の速度しか出ないという点は覚えておいてください。読み込み自体はできますが、大容量データの移動は体感どおり遅くなります。

買う前に確認すること

自分の機種がどのバス規格を採用しているか先に調べる
メーカーの公式スペックページで「UHS-I」「UHS-II」「microSD Express」のどれが書かれているかを確認してください。型番だけでなく発売年でも仕様が変わる機種(ROG Ally系)があるため、購入前の型番確認が欠かせません
Switch2用に買うなら必ず「microSD Express」表記のものを選ぶ
「Nintendo Switch対応」とだけ書かれた従来品はSwitch2では使えません。任天堂ライセンス品か、SD Association準拠を明記した製品を選んでください
Steam Deck・Machine・Frame用ならUHS-Iの高耐久・高容量モデルで十分
速度面でExpressを選ぶ理由は薄く、価格差の分だけ容量を増やすほうが体感的な満足度は高くなります
個体差による認識不良に備える
microSD Express・UHS-Iのどちらでも、特定のカードが特定の端末で認識されないという報告は一定数あります。購入後はすぐに動作確認を行い、初期不良の返品期限を過ぎる前に問題がないか確かめてください

Nintendo Switch2向けであれば、任天堂ライセンス品のmicroSD Expressカードを選んでおくのが最も無難です。

【任天堂ライセンス商品】SanDisk microSD Express Card 256GB for Nintendo Switch 2

よくある質問

Q.microSD ExpressカードをSteam DeckやROG Ally(無印)に挿すとどうなりますか

A.物理的には挿さり、認識もします。ただしこれらの機種のカードリーダーはUHS-I(Steam Deck・Steam Machine・Steam Frame)またはUHS-II(ROG Ally系、ROG Xbox Ally X20を除く)止まりのため、Express本来の速度は出ず、UHS-IまたはUHS-IIの速度に制限されます。高いカードを買っても、その機種では性能を発揮できません。

Q.通常のmicroSDXCカードをNintendo Switch2に挿すとどうなりますか

A.本体が「microSD Expressメモリーカード以外は使えません」という趣旨のエラーを表示し、ダウンロードソフトの保存やプレイには使えません。唯一の例外は、初代Switchで撮影したスクリーンショット・動画を本体メモリーに一度だけ取り込む用途です。

Q.ROG Xbox Ally X20は本当にmicroSD Expressのフルスピードが出ますか

A.ASUSの公式スペックはPCIe Gen4 x1のmicroSD Express対応を明記していますが、この記事の執筆時点で実効速度を検証した第三者ベンチマークは見つかっていません。同シリーズのROG Ally Xでは、公式スペック上の性能を内蔵リーダーが発揮できていないという実測報告もあるため、断定は避けています。

Q.microSD Expressは全部同じ速度ですか

A.いいえ。2019年のSD 7.1仕様(理論上の最大985MB/s)と、2023年10月公開のmicroSD Addendum Ver.8.0仕様(PCIe Gen4 x1・理論上の最大約1,969MB/s)が混在しています。パッケージに「Express」とだけ書かれていても世代が異なる場合があるため、対応SDバージョンまで確認すると安心です。

Q.デスクトップPCでmicroSD Expressの速度を活かすにはどうすればいいですか

A.多くのデスクトップPCやノートPCの内蔵カードリーダーはUHS-I・UHS-II止まりです。Express本来の速度を使うには、PCIe/NVMe接続に対応した専用の外付けUSBカードリーダーを別途用意する必要があります。

Q.Legion Go・Legion Go Gen 2はmicroSD Expressに対応していますか

A.対応していません。Lenovoの公式情報ではいずれもUHS-II対応のカードリーダーと案内されており、Expressカードを挿してもUHS-IIの速度が上限になります。

まとめ・次に読みたい記事

microSD ExpressとmicroSDXC(UHS-I)は、見た目は同じ小さなカードでも、中身はPCIe/NVMeベースかUHS方式かという別の規格です。Nintendo Switch2はExpress専用で通常のカードは使えず、逆にSteam Deck・Steam Machine・Steam FrameはValveの設計方針であえてUHS-I止まりのため、Expressを買っても宝の持ち腐れになります。ROG Allyシリーズも同様にUHS-II止まりで、ROG Xbox Ally X20だけが例外的にExpress対応カードリーダーを搭載しています。ただしその実効速度は、この記事の執筆時点では第三者による検証が見当たらず、断定を避けました。

買う前に一手間かけて、自分の機種がどのバス規格を採用しているかを公式スペックで確認してください。それだけで、高いカードを買って損をする失敗は避けられます。