スリープを選んで画面が消えたと思ったら、数秒後にファンが回り出して元に戻ってしまう。寝る前にスリープにしたはずなのに、朝になるとPCが起きていて、ケースのRGBが一晩中光っていた。あるいは、放っておいてもいつまでもスリープに入らない。ゲーミングPCでよく聞く症状ですが、検索すると「マウスの設定を変える」「Wake on LANを切る」「Windows Updateのせい」と答えがバラバラです。
答えがバラバラになるのは、スリープを解除できる経路が何本もあるからです。マウスやキーボード、ネットワークアダプター、Windowsの自動メンテナンス、タスクスケジューラ、BIOSのタイマー。どれが犯人かはPCごとに違います。ただ、Windowsには「何が起こしたか」「何が起こす予定か」「何がスリープを止めているか」を答えるコマンドが用意されていて、当てずっぽうに設定を切る必要はありません。
この記事では、Microsoftのドキュメントと、手元のWindows 11デスクトップで実際にコマンドを実行した結果をもとに、powercfg の出力の読み方から、犯人ごとの止め方までを順に整理します。あわせて、powercfg /lastwake が何も教えてくれないときの進め方や、Windows 11の初期設定ではハイブリッドスリープが実は動いていないことがある点など、ほかの解説ではあまり触れられていない落とし穴も扱います。
まず症状を4つに分ける
「勝手に起きる」と一口に言っても、起きるタイミングで原因の系統が変わります。最初に、どれに当てはまるかを確認してください。
- スリープした直後、数秒〜数分で復帰する
- マウスやキーボードなどのUSB機器、ネットワークアダプターが起こしているケースが中心です。この記事のlastwakeとdevicequeryで確認します
- 夜中の決まった時刻(深夜2時ごろなど)に起きている
- スリープ解除タイマーが動いています。Windowsの自動メンテナンス、Windows Update、タスクスケジューラに登録されたタスクが候補で、waketimersで予定を確認できます
- そもそもスリープに入らない
- 解除ではなく、アプリやドライバーがスリープを止めている状態です。requestsで止めている相手を表示できます
- シャットダウンしたのに電源が入る
- スリープとは別の経路で、主にBIOSの設定(Wake on LAN、時刻指定の起動、停電復旧後の自動起動)が関係します。後半の「シャットダウン中に電源が入る場合」で扱います
なお、近い症状でも別の記事で扱っているものがあります。スリープから戻ったのに画面だけ映らない場合はスリープ復帰後に画面が映らない原因、シャットダウン後もファンやLEDが消えない場合はシャットダウン後もファンやLEDが消えない原因、ゲーム中に電源が落ちたり再起動したりする場合はゲーム中にPCの電源が落ちる・再起動する原因を確認してください。
犯人を特定するコマンドと記録
ここからはコマンドを使います。スタートボタンを右クリックして「ターミナル(管理者)」を開いてください。手元のWindows 11で試したところ、/lastwake と /devicequery は通常の権限でも動きましたが、/waketimers と /requests は「このコマンドには、管理者権限が必要です」と表示されて実行できませんでした。最初から管理者で開いておくのが確実です。
各オプションの正式な説明は、MicrosoftのPowercfg のコマンドライン オプションにまとまっています。以下では、その中からスリープの調査に使うものだけを取り上げます。
powercfg /lastwake で「直前に何が起こしたか」を見る
powercfg /lastwake
最後にスリープから復帰したとき、何が解除したかを表示します。解除元が記録されていれば、その種類と名前が出ます。種類がデバイスなら、マウスやネットワークアダプターなど具体的な機器名が表示されるので、そのまま次の「止め方」の該当箇所へ進めます。電源ボタンで起こした場合は、電源ボタンを表す「Fixed Feature」系の表示になり、スリープ解除タイマーが起こした場合はタイマーとして記録されます。
ただし、ここで空振りすることは珍しくありません。手元のデスクトップで、前日の夜にスリープさせて翌朝に起こした直後に実行した結果は次のとおりでした。
スリープ状態の解除履歴カウント - 0
解除履歴が0件で、何も分かりません。lastwakeで答えが出なくても、それで調査が終わるわけではありません。次の記録へ進んでください。
イベントビューアーで「いつ寝て、いつ起きたか」を見る
lastwakeが空振りしても、スリープに入った時刻と起きた時刻は記録に残ります。スタートボタンを右クリックして「イベントビューアー」を開き、「Windows ログ」の「システム」を選びます。右側の「現在のログをフィルター」で、イベントソースを絞り込むと探しやすくなります。
- Power-Troubleshooter(イベントID 1)
- スリープから復帰したときの記録です。スリープした時刻(Sleep Time)、復帰した時刻(Wake Time)、解除元(Wake Source)が書かれています。手元の日本語版Windows 11では、この本文が英語のまま表示されました
- Kernel-Power(イベントID 42)
- スリープに入った記録です。手元の環境ではスリープに入った理由(Sleep Reason)も併記されていました
- Kernel-Power(イベントID 107)
- スリープから再開した記録です。42と組み合わせると、寝ていた時間帯が分かります
- TaskScheduler(イベントID 808)
- 「アプリケーションとサービス ログ」→「Microsoft」→「Windows」→「TaskScheduler」→「Maintenance」に残る記録です。Microsoftの資料では、どのタスクが次回の自動メンテナンスでスリープ解除を要求したかが書かれるとされています
手元の記録では、イベントID 1の解除元は「Wake Source: Unknown」でした。lastwakeと同じく、解除元そのものは分からないことがあります。
それでもこの記録には意味があります。注目するのは時刻です。スリープしてから数秒〜数分で起きているなら、デバイスの可能性が高くなります。毎晩2時台、3時台のように同じ時刻に起きているなら、タイマーの可能性が高くなります。何日分か並べて、規則性があるかを見てください。
powercfg /waketimers で「これから起こす予定」を見る
powercfg /waketimers
現在有効になっているスリープ解除タイマーを一覧にします。Microsoftの説明では、タイマーが有効なら、期限が来たときにスリープや休止状態からシステムを起こします。過去ではなく「これから起こす予定」を見るコマンドなので、夜中に起きる症状の調査ではlastwakeより頼りになります。
Microsoftのトラブルシューティング記事(英語版)には、実際の出力例が載っています(Windows 8当時の資料のため、パスや時刻は環境で異なります)。
Timer set by [PROCESS] \Device\HarddiskVolume1\Windows\System32\services.exe expires at 2:59:29 AM on 12/4/2012
Reason: Windows will execute 'NT TASK\Microsoft\Windows\TaskScheduler\Regular Maintenance' scheduled task that requested waking the computer.
読むべきは2か所です。「expires at」の時刻が、PCが起きる予定の時刻です。「Reason」の部分に、どのタスクが起こそうとしているかが書かれています。この例では「Regular Maintenance」、つまり自動メンテナンスのタスクが犯人だと分かります。日本語版では見出しの文言が日本語になりますが、タスクのパス(NT TASK\…)の部分は同じ形で表示されます。
何も出ない場合は、その時点で有効なタイマーがありません。ただしタイマーは後から登録されることもあるので、寝る直前にもう一度実行すると確実です。出典はMicrosoft Learn(デスクトップがスリープまたは休止状態から予期せず起動する)です。
powercfg /devicequery wake_armed で「起こす権限を持つ機器」を見る
powercfg /devicequery wake_armed
現在、スリープを解除できるように設定されているデバイスの一覧です。lastwakeが空振りしたとき、すぐ復帰する症状の容疑者リストになります。手元のゲーミングデスクトップでの結果は次のとおりでした。
HID 準拠マウス
Realtek Gaming 2.5GbE Family Controller
HID キーボード デバイス
Logicool HID-compliant Unifying Mouse
HID キーボード デバイス (001)
HID 準拠マウス (001)
Logicool HID-compliant Unifying keyboard (106 keys)
特に設定を変えた覚えはないのに、マウスとキーボードが複数、そして有線LANのアダプターまでスリープ解除の権限を持っていました。マウスやキーボードが「(001)」付きで複数並ぶのは、1台の機器が複数の入力デバイスとして認識されているためで、珍しいことではありません。ゲーミングマウスや無線レシーバーをつないでいると、この一覧は長くなりがちです。
powercfg /requests で「スリープを止めている相手」を見る
powercfg /requests
スリープに入らない症状のときに使います。Microsoftの説明では、アプリやドライバーが出している「電源要求」を一覧にするコマンドで、電源要求があるとディスプレイの自動オフや、スリープへの移行が止まります。
出力はDISPLAY、SYSTEM、AWAYMODEなどの見出しごとに分かれていて、要求がなければ「なし」と表示されます。スリープに入らない場合に見るのはSYSTEMの欄です。ここに [PROCESS] で始まる行があればアプリが、[DRIVER] で始まる行があればドライバーがスリープを止めています。よく見かけるのは、サウンドのドライバーに「An audio stream is currently in use.」(日本語版では同じ意味の日本語)と出るパターンで、どこかのアプリが音声を再生し続けていることを示しています。
powercfg /a で、そもそもどのスリープなのかを確認する
powercfg /a
そのPCで使えるスリープの種類を表示します。手元のデスクトップでは、利用可能な状態として「スタンバイ (S3)」「休止状態」「高速スタートアップ」が並びました。デスクトップのゲーミングPCではこのS3が一般的ですが、利用可能な側に「スタンバイ (S0 低電力アイドル)」が出る場合は、モダンスタンバイと呼ばれる別方式です。後半で違いを説明します。
犯人別の止め方
マウス・キーボード・USB機器
すぐ復帰する症状で最も多いのがこのパターンです。光学センサーは机のわずかな振動や、マウスに触れた程度の動きでも反応することがあり、スリープした直後に指が当たっただけで起きてしまいます。無線マウスの場合は、受信機(レシーバー)がスリープ解除の権限を持っています。
止め方は、デバイスマネージャーから個別に設定します。
- スタートボタンを右クリックして「デバイスマネージャー」を開きます
- 「マウスとそのほかのポインティング デバイス」を展開し、該当するマウスを右クリックして「プロパティ」を開きます
- 「電源の管理」タブで「このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」のチェックを外して「OK」を押します
devicequery で同じ名前が複数出ていた場合は、それぞれに同じ操作をします。「電源の管理」タブが表示されない機器は、Windows側からは設定できません。Bluetoothのコントローラーやヘッドセットを使っている場合は、デバイスマネージャーの「Bluetooth」にあるアダプターにも「電源の管理」タブがあることがあるので、同じように確認してください。
コマンドで止める方法もあります。デバイス名は devicequery wake_armed で表示された名前をそのまま使い、空白を含むので二重引用符で囲みます。
powercfg /devicedisablewake "HID 準拠マウス"
おすすめは、マウスのスリープ解除だけを切り、キーボードは残す設定です。これならマウスの誤反応では起きず、起こしたいときはキーボードのキーを押せば戻ります。すべての機器のスリープ解除を切ると、電源ボタンでしか起こせなくなるので注意してください。
USBハブやモニターのUSBポートを経由してつないでいるマウスは、本体のUSBポートに直接つなぎ替えて症状が変わるかも確認してください。マウス選びの段階で気をつけたい点はゲーミングマウスの選び方にまとめています。
ネットワークアダプター(Wake on LAN)
devicequery に有線LANや無線LANのアダプターが出ている場合、ネットワークからの通信でPCが起きている可能性があります。Microsoftは、Wake on LANを有効にした状態ではネットワーク上の特定の通信(自分宛てのパケットや、ルーターが接続を確認するためのARPなど)でも起きることがあり、スリープ直後に起きてしまう場合は「Magic Packet」だけで起きるように設定することを強く推奨しています。Windows 7時代の資料で、現行のWindowsとは待ち受けるパケットの種類が異なる可能性がありますが、Magic Packetだけに絞れば誤った起床を避けられる、という考え方は今も有効です(Microsoft Learn)。Magic Packetは、そのアダプターのMACアドレスを指定した専用の起動信号なので、普段の通信で誤って届くことはまずありません。
デバイスマネージャーの「ネットワーク アダプター」から該当アダプターのプロパティを開き、「電源の管理」タブを確認します。
- Wake on LANを使っていない
- 「このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」のチェックを外します。これでネットワークからは起きなくなります
- 外出先からPCを起こすなどWake on LANを使っている
- チェックは残し、「Magic Packet でのみ、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」にチェックを入れます
アダプターによっては「詳細設定」タブにも「Wake on Magic Packet」「Wake on Pattern Match」のような項目があります。名称はドライバーによって異なりますが、パターン一致での起動を無効にすると、上と同じ効果が得られます。有線LANの省電力設定が通信の切断を起こしている場合の話は有線LANが頻繁に切れる原因で扱っています。
Windowsの自動メンテナンスとスリープ解除タイマー
夜中の決まった時刻に起きる場合、waketimers の結果に自動メンテナンス(Regular Maintenance)が出ていれば、ほぼこれです。自動メンテナンスはソフトウェアの更新やセキュリティスキャン、システム診断をまとめて実行する仕組みで、Windows 10では既定の実行時刻が午前2時です(@IT)。Windows 11でも同じ設定画面がコントロールパネルに残っています。
前出のMicrosoftのトラブルシューティング記事(Windows 8当時の資料)によると、デスクトップPCでは「スケジュールされたメンテナンスによるスリープ解除」が自動で有効になり、電源プランの「スリープ解除タイマーの許可」もAC電源時は「有効」が既定です。手元のWindows 11でも、バランスの電源プランでAC電源時は「有効」になっていました。同じ資料によると、ノートPCではこの2つが有効にならない条件があります。少なくともWindows 8当時の資料では、デスクトップのほうが夜中に起きやすい初期設定でした。
止め方は2段階あります。まず自動メンテナンス側の設定です。
- コントロールパネルを開き、「セキュリティとメンテナンス」を選びます
- 「メンテナンス」を展開し、「メンテナンス設定の変更」をクリックします
- 「スケジュールされたメンテナンスによるコンピューターのスリープ解除を許可する」のチェックを外します
この画面では実行時刻も変えられます。自動メンテナンスそのものは止めず、PCを使っている時間帯(昼休みなど)に動かす、という選び方もできます。
それでもタイマーで起きる場合は、電源プランの設定で止めます。Windowsキー+Rで powercfg.cpl と入力して電源オプションを開き、使用中のプランの「プラン設定の変更」から「詳細な電源設定の変更」を選びます。「スリープ」の中にある「スリープ解除タイマーの許可」が対象です。
- 有効
- タスクやアプリが登録したタイマーで起きることを許可します。デスクトップのAC電源時の既定です
- 重要なスリープ解除タイマーのみ
- Windowsが重要と判断したもの(更新後の再起動など)だけを許可します。夜中に起きる回数を減らしつつ、更新の適用は妨げにくい中間の選択肢です
- 無効
- タイマーによる解除を止めます。夜中に起きるのを確実に止めたい場合の選択肢ですが、更新の適用がPCを使う時間帯にずれ込むことがあります
まず「重要なスリープ解除タイマーのみ」で様子を見て、それでも起きる場合に「無効」にする順番がおすすめです。この設定は電源プランごとに保存されるので、別のプランに切り替えている場合はそちらも変更してください。電源プランを「高パフォーマンス」などに変えた経緯がある場合は、Windows側の設定でfpsを上げる方法で電源プランの実際の効果も確認しておくと、元に戻すかどうかの判断がしやすくなります。
タスクスケジューラのタスク
waketimers の「Reason」に自動メンテナンス以外のタスク名が出た場合は、タスクスケジューラで確認します。スタートメニューで「タスク スケジューラ」と検索して開き、Reasonに書かれたパスの順にフォルダーをたどると、該当するタスクが見つかります。
タスクのプロパティを開き、「条件」タブにある「タスクを実行するためにスリープを解除する」のチェックを外すと、そのタスクはPCを起こさなくなります。周辺機器のユーティリティやバックアップソフト、メーカー製のアップデーターなど、自分で入れたソフトのタスクが対象です。
\Microsoft\Windows\ 以下にあるWindows自身のタスク(UpdateOrchestrator など)は、書き換えても更新で元に戻ったり、権限の都合で変更できなかったりします。こちらは個別にいじらず、前の項目の電源プランの設定で止めてください。
スリープを止めているアプリ
requests にアプリやドライバーが出ている場合は、まずそのアプリを終了してから、もう一度 requests を実行して消えるか確認します。ゲーミングPCで常駐しがちなものとして、ゲームランチャー、ボイスチャット、配信ソフト、ブラウザーの動画や音楽、動く壁紙のアプリ、RGBライティングの制御ソフトなどがあります。どれが原因になるかは環境と各アプリの設定次第なので、決め打ちはせず、requests の表示に出てきたものから順に確認してください。
ゲームをタイトル画面や一時停止のまま放置していると、BGMが流れ続けてサウンドドライバーがスリープを止めることがあります。スリープさせる前にゲームを終了する習慣をつけるだけで解決するケースもあります。
なお、powercfg /requestsoverride という、特定のアプリの電源要求を無視させるコマンドもあります。ただ、設定は残り続けるうえ、取り消し方がヘルプで明確に案内されていないため、この記事ではおすすめしません。アプリ側の設定で解決できないか先に確認してください。
シャットダウン中に電源が入る場合
シャットダウン中の起動は、スリープ中とは見る場所が変わります。Microsoftは、Windows 10のシャットダウン(既定の高速スタートアップでも、完全なシャットダウンでも)では、ネットワークアダプターをWake on LAN用に待機させないと説明しています。シャットダウン状態のユーザーは消費電力ゼロを期待しているから、というのが理由です。一方で、PCによってはWindowsを介さずに、ファームウェア(BIOS)側がアダプターを待機させる場合があるとも書かれています(Microsoft Learn(Wake on LAN の動作))。
そのため、まず見るのはネットワークアダプターのドライバー設定とBIOSです。RealtekのLANアダプターには、「詳細設定」タブに「Shutdown Wake-On-Lan」という、シャットダウン中からの起動を制御する項目があります。Dellのサポート記事によると、RealtekのNDISドライバーは休止状態(S4)とシャットダウン(S5)を区別しないため、「Wake on Magic Packet」を無効にしただけでは止まらないことがあり、「Shutdown Wake-On-Lan」側で制御する必要があります(Dell サポート記事 000296551)。Dell製PCを対象にした記事ですが、同じRealtekのアダプターを積んだゲーミングPCでも、Wake on LANを使っていなければこの項目を「Disabled」にしておくと確実です。項目名はドライバーの版によって異なり、日本語表示では別の名前になっていることもあります。
そのうえで、BIOSの設定を確認します。項目名はメーカーや製品、BIOSの版で違いますが、代表的なものは次のとおりです。
- Wake on LANやPCIe機器からの起動
- ASUSでは「Power On By PCI-E」、MSIでは「Resume By PCI-E Device」、GIGABYTEでは「Wake on LAN」などの名称です。使っていなければ無効にします
- 時刻を指定した起動
- ASUSでは「Power On By RTC」、MSIでは「Resume By RTC Alarm」、GIGABYTEでは「Resume by Alarm」などです。設定した覚えがないのに有効になっていれば、無効にします
- 停電から復旧したときの起動
- ASUSでは「Restore AC Power Loss」、GIGABYTEでは「AC BACK」などです。「Power On」や「Last State」になっていると、電源が一度切れて戻ったときに起動します
- USB機器からの起動
- MSIの「Resume By USB Device」のように、キーボードやマウスでシャットダウン中のPCを起動する機能です
停電復旧時の設定について、ASUSは「Power Off」「Power On」「Last State」の3つから選べると説明しています(ASUS FAQ)。夜中にブレーカーが落ちた、雷で瞬間的に停電した、電源タップのスイッチを入れ直した、といった心当たりがあれば、この設定を確認してください。停電への備え方はゲーミングPCにUPSは必要かで扱っています。
BIOSのErP(またはDeep Sleep)を有効にすると、シャットダウン中のUSBやLAN、時刻指定からの起動がまとめて無効になる製品が多く、手っ取り早い解決策になります。ただし、Wake on LANやシャットダウン中のUSB充電も使えなくなります。ErPの詳しい設定方法は、上で紹介したシャットダウン後もLEDが消えない原因の記事で、メーカー別にまとめています。
モダンスタンバイのPCは仕組みが違う
powercfg /a で「スタンバイ (S0 低電力アイドル)」が利用可能になっていた場合、そのPCはモダンスタンバイ方式です。ノートPCで多い方式で、スマートフォンのように、画面が消えている間もネットワークにつながったまま一部の処理を続けることがあります。従来のS3のように完全に眠るわけではないので、「スリープ中にファンが回った」「カバンの中で熱くなった」といった症状は、故障ではなくこの方式の動作の範囲であることがあります。
モダンスタンバイのPCでは、直近3日間のスリープ中の状況をまとめたレポートを作る powercfg /sleepstudy が使えます。どのアプリやデバイスがスリープ中に動いていたかを確認できます。
powercfg /sleepstudy
デスクトップのゲーミングPCは、手元の環境のようにS3を使っている場合がほとんどです。S3とモダンスタンバイを切り替える方法としてレジストリを書き換える手順が出回っていますが、BIOS側の対応も関係するため、この記事では扱いません。
それでも直らない場合
ハイブリッドスリープが実は動いていない
デスクトップ向けの電源プランでは、ハイブリッドスリープが既定でオンになっていることがあります。ハイブリッドスリープは、スリープに入るときにメモリの内容をストレージにも保存しておき、スリープ中に電源が切れても作業を失わないようにする仕組みです。
ところが手元のWindows 11では、電源プランで「ハイブリッド スリープを許可する」がオンなのに、powercfg /a では「ハイブリッド スリープ」が利用できない側に並び、「ハイパーバイザーはこのスタンバイ状態をサポートしていません」と表示されました。この環境では仮想化ベースのセキュリティ(VBS)とメモリ整合性が動いています。メモリ整合性のほか、Hyper-V、WSL2、仮想マシンプラットフォームなど、ハイパーバイザーを使う機能が有効だと、ハイブリッドスリープは使えなくなるという報告が海外のユーザーフォーラムなどにあります。Windows 11ではメモリ整合性が既定で有効になっていることが多いため、powercfg /a で一度確認してみてください。
スリープ自体の不具合とは別の話ですが、「ハイブリッドスリープがあるから停電しても大丈夫」と思っていると、実際には守られていないことがあります。だからといって、ハイブリッドスリープのためにメモリ整合性を切るのはおすすめしません。セキュリティ機能であるうえ、VALORANTのように有効であることを求めるゲームもあります。扱い方はSecure Boot・TPM 2.0・メモリ整合性(VBS)を有効にする手順にまとめています。停電対策が必要なら、ハイブリッドスリープに頼らず保存してからスリープする、休止状態を使う、UPSを用意する、のいずれかが確実です。
休止状態を使う
マウスの誤反応で起きる場合は、スリープの代わりに休止状態を使う方法があります。休止状態はメモリの内容をストレージに書き出して電源を切るため、マウスなどのUSB機器では起きないPCが多くなります。ただし、スリープ解除タイマーは休止状態からもPCを起こすため、夜中の決まった時刻に起きる症状には効きません。その場合は前述の自動メンテナンスと「スリープ解除タイマーの許可」を先に設定してください。また、Microsoftは、ユーザーが明示的に休止状態にした場合はWake on LANでの起動に対応すると説明しているため、LANで起きている場合もアダプター側の設定が先です。復帰はスリープより遅くなりますが、NVMe SSDのゲーミングPCなら大きな負担にはなりにくいはずです。電源オプションの「電源ボタンの動作を選択する」で、休止状態をメニューに表示できます。項目が出ない場合は、管理者のターミナルで powercfg /hibernate on を実行すると有効になります。
ドライバーとBIOSを更新する
設定を見直しても、特定のデバイスで起き続ける、あるいはlastwakeに出てくる機器を無効にしても別の機器が起こしてしまう場合は、チップセットドライバーとBIOSの更新を検討してください。スリープとの往復は、マザーボードのファームウェアとドライバーの組み合わせに左右されます。Windowsの更新プログラムを入れた直後から症状が出た場合は、その更新の既知の問題も確認してください。BIOSの更新は設定が初期化されることが多いので、更新後はこの記事で変更した項目(ErP、Wake on LAN、停電復旧時の動作など)をもう一度確認します。
サポートに相談する目安
BTOのゲーミングPCで、購入直後から周辺機器を最小限(キーボードとマウスだけ)にしても症状が出る、BIOSの設定を初期値に戻しても変わらない、という場合はメーカーのサポートに相談する段階です。そのとき、powercfg /lastwake、/waketimers、/devicequery wake_armed の出力と、イベントビューアーで確認した起床時刻を控えておくと、話が早く進みます。
当サイトは中古のゲーミングPCを、特に初めての1台としてはおすすめしていません。この記事のような症状が出たとき、新品なら「出荷時の設定」という基準から切り分けを始められますが、中古では前の持ち主がBIOSやタスクスケジューラに何を設定したかが分からず、どこまでが元からの状態なのかを切り分けられないためです。考え方は中古ゲーミングPCは買っても大丈夫?で説明しています。
夜中に起きたままだと電気代はどれくらいか
夜中に起きたPCが、requestsに出てくるアプリのせいで朝までスリープに戻れないと、アイドル状態のまま電気を使い続けます。ゲーミングPCの電気代の記事で使っているアイドル時50Wを仮定し、午前2時から7時までの5時間起きたままの日が1か月続くと、50W×5時間×30日で7.5kWhです。東京電力の第2段階の単価36.40円/kWhで計算すると、月およそ273円になります。
大きな金額ではありませんが、ファンの音やRGBの光で寝室にいる人の睡眠を妨げる、SSDやファンが余計に動き続ける、といった実害のほうが気になる人も多いはずです。原因を一度突き止めておく価値はあります。
よくある質問
Q.スリープしても数秒ですぐ復帰します。最初に何をすればいいですか?
A.ターミナル(管理者)で powercfg /lastwake を実行し、解除元のデバイス名が出るか確認してください。出なければ powercfg /devicequery wake_armed で、スリープ解除を許可されている機器を一覧にします。多くの場合、マウスかネットワークアダプターが犯人です。デバイスマネージャーの「電源の管理」タブで、マウスの「このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」を外すところから試してください。
Q.毎晩2時ごろにPCが勝手に起動しています。何が原因ですか?
A.Windowsの自動メンテナンスの既定の実行時刻が午前2時なので、まずこれを疑います。powercfg /waketimers を実行して、Reasonに「Regular Maintenance」などのタスク名が出るか確認してください。コントロールパネルの「セキュリティとメンテナンス」から、「スケジュールされたメンテナンスによるコンピューターのスリープ解除を許可する」のチェックを外すと止められます。
Q.powercfg /lastwake を実行しても何も表示されません
A.解除履歴が0件と出たり、イベントビューアーで解除元が「Unknown」と記録されたりすることは珍しくありません。その場合は、イベントビューアーのPower-Troubleshooter(イベントID 1)で起きた時刻を確認し、スリープ直後ならデバイス、決まった時刻ならタイマーと見当をつけて進めてください。
Q.マウスでスリープ解除できないようにすると、どうやって起こせばいいですか?
A.キーボードのスリープ解除を残しておけば、キーを押して起こせます。キーボードもすべて無効にした場合は、PC本体の電源ボタンを短く押すと復帰します。電源ボタンを長押しすると強制終了になるので注意してください。
Q.スリープ解除タイマーを無効にしても問題ありませんか?
A.夜中に起きることは止められますが、Windows Updateの適用や再起動が、PCを使っている時間帯にずれ込むことがあります。まず「重要なスリープ解除タイマーのみ」を試し、それでも起きる場合に「無効」にする順番がおすすめです。
Q.シャットダウンしたのに勝手に電源が入ります
A.Windowsはシャットダウン中にネットワークアダプターをWake on LAN用に待機させないため、LANアダプターのドライバー設定(Realtekなら詳細設定の「Shutdown Wake-On-Lan」)とBIOS側の設定を確認します。Wake on LANやPCIe機器からの起動、時刻指定の起動(RTC)、停電復旧時の動作(Restore AC Power LossやAC BACKなど)が候補です。BIOSのErPを有効にすると、これらがまとめて無効になる製品が多くあります。
まとめ・次に読みたい記事
ゲーミングPCが勝手にスリープから起きる原因は、デバイス、タイマー、アプリ、BIOSの4系統に分かれます。最初に、すぐ起きるのか、決まった時刻に起きるのか、スリープに入らないのか、シャットダウン中に起きるのかを見分けてください。
調べ方は、ターミナル(管理者)で powercfg /lastwake、/waketimers、/devicequery wake_armed、/requests を順に実行するのが近道です。lastwakeが空振りしても、イベントビューアーの起床時刻と、スリープ解除を許可されている機器の一覧から消去法で絞れます。
止め方は、犯人に合わせて最小限にとどめるのがおすすめです。マウスだけ解除を切ってキーボードは残す、Wake on LANを使うならMagic Packetだけにする、タイマーはまず「重要なスリープ解除タイマーのみ」にする。すべて切ってしまうより、使い勝手を保ったまま症状を止められます。



