当サイトでは多くの記事で「メモリは2枚組に」と書いてきました。ところがBTOの製品ページを見ると、32GBを1枚で載せたモデルが実際に売られていますし、海外のレビューサイトでは「メモリが高い今は1枚で買って、安くなったら足せばいい」という記事も増えています。では同じ32GBで、1枚と2枚はどれくらい違うのでしょうか。
先に答えを書きます。32GB×1と16GB×2を同じ速度・同じタイミングでそろえた実測では、一般的なRyzen 7(9700X)で平均fpsが約8%、1% lowが約16%下がりました。3D V-Cacheを積んだX3D系CPUなら、平均で2.5〜5%程度に縮みます。遊べなくなる差ではありませんが、カクつきに近い指標ほど差が開きます。そして2026年10月12日時点の国内価格では、Crucialの同じ速度の製品では、32GB×1のほうが16GB×2より高いという逆転が起きていました。ブランドをまたいで最安同士を比べても、1枚のほうが高くつきます。
この記事では、容量をそろえた比較(32GB×1対16GB×2)と、海外で多い16GB×1対16GB×2の検証を分けて読み、なぜ数字が割れるのかを整理します。そのうえでドスパラ、パソコン工房、マウスコンピューター、フロンティア、SEVENの製品ページを開き、32GB×1を選べるのか、2枚にするといくらかかるのかを確認しました。
先に結論
- 選べるなら16GB×2にしてください
- 性能が上で、2026年10月時点の国内相場ではむしろ安く手に入ります。1枚を選ぶ理由が価格面でもほとんど残っていません
- 32GB×1のPCを買ってしまっても致命的ではありません
- どのタイトルも遊べる範囲に収まります。差が目立つのはCPUの処理が重い場面のカクつきです
- X3D系CPUなら気にしなくていい差です
- 9800X3Dでは5本の総合で平均fpsの差が2.5%でした。一方でRyzen 7 7700や9700Xのような通常版では、1% lowの差を体感する可能性があります
- グラボなし(内蔵GPU)なら必ず2枚にしてください
- 内蔵GPUはメインメモリを描画に使うため、1枚では帯域の不足がそのまま性能の天井になります
- 「後で同じものを1枚足す」は当てにしないでください
- 同じ型番が数か月後も売っているとは限りません。実際にMicronは、Crucialブランドの一般向け製品の出荷を2026年2月末で終えると発表しています
1枚挿しと2枚挿しで何が違うのか
デスクトップ向けのRyzenやCore Ultraは、メモリの通り道(チャネル)を2本持っています。2枚挿せば2本とも使うデュアルチャネル、1枚だと片方しか使わないシングルチャネルです。BTOの製品ページでは「デュアルチャンネル」と書く会社もありますが、同じ意味です。
DDR5はここが少しややこしく、1枚のメモリの中に32ビット幅のサブチャネルが2つあります。Tom’s Hardwareはこれを「1枚の上の疑似デュアルチャネル」と表現していて、DDR4の1枚挿しほどは性能が落ちない理由として説明しています。ただし同じ記事で、2枚のほうが同時にこなせる処理の数は倍になるので、2枚が上であることに変わりはないとも書いています。
帯域の差はベンチマークにはっきり出ます。ComputerBaseのAIDA64測定では、書き込み速度が1枚で38GB/s、2枚で約60GB/sでした。PCGHの測定でも、2枚にすると読み込みが88%、書き込みが82%上がっています。問題は、この差がゲームのfpsにどれだけ出るかです。
- 32GB×1はたいてい2ランク構成です
- 16Gbitのチップで32GBを作ると計算上16個のチップが必要になり、2ランク(2R)になります。ランクが多いと同じチャネル内で処理を切り替えながら読み書きできるので、16GB×1よりはやや有利です。ただし帯域そのものは1枚分のままです
- 容量は同じでも、通り道の数が違います
- 32GB×1と16GB×2は容量が同じなので、メモリ不足で比較が濁ることはありません。純粋に帯域の差だけを見る比較になります
32GB×1と16GB×2を同じ条件で比べた実測
容量をそろえて1枚と2枚を比べた検証は、意外なほど少数です。ここではイギリスのeTeknixが2026年1月に公開したテストを中心に見ます。
条件は、32GB×1(Apacer NOX DDR5-6000 CL40)と16GB×2(XPG Lancer Blade)をDDR5-6000で走らせ、タイミングとサブタイミングも同じ値にそろえたものです。CPUはRyzen 7 9700X、Ryzen 7 9800X3D、Ryzen 9 9950Xの3つ、GPUはRTX 5090、解像度はすべて1080pです。GPUを最上位にしてあるのは、メモリの差を見えやすくするためです。
Ryzen 7 9700X 1枚(32GB×1)にしたときの1% low低下率
eTeknix(2026年1月4日公開)のグラフから当サイトで算出。1080p、RTX 5090、DDR5-6000でタイミングをそろえた32GB×1と16GB×2の比較。値は16GB×2を基準にした低下率
平均fpsで見ると、9700Xの低下は5本の総合で8.1%(197fps→181fps)です。タイトル別ではCyberpunk 2077が12.6%、The Riftbreakerが13.2%で、CS2は1.9%でした。
目立つのは1% lowのほうです。1% lowは「一番重かった1%の場面のfps」で、カクつきの感じ方に近い指標です。Shadow of the Tomb Raiderは平均fpsの差が10%なのに、1% lowは159fpsから112fpsへ約3割落ちました。eTeknixも結論で、2枚にすると性能の「底」が上がると書いています。
CPUを替えると、差の出方が大きく変わります。
CPU別 5本の総合で見た1枚化の低下率
eTeknixの総合グラフ(5タイトル・1080p・RTX 5090)から算出。32GB×1と16GB×2の比較
9800X3Dは、Shadow of the Tomb Raiderではむしろ1枚のほうが平均で5%速く、再テストでも同じ結果だったそうです。大容量のL3キャッシュがメモリへのアクセスを肩代わりするため、メモリの帯域に左右されにくいのがX3D系の特徴です。とはいえ同じ9800X3DでもSpider-Man 2では平均9.7%、1% lowで11.6%落ちているので、「X3Dなら全タイトルで差がない」わけではありません。どんなゲームでX3Dが効くのかはシミュレーション・ストラテジー向けゲーミングPCの選び方でも扱っています。
なお、eTeknixのCS2のグラフは9700Xと9950Xの表記が入れ替わっているようです(グラフ上は9700Xが489fps→447fps、9950Xが370fps→363fps)。本文の説明(9700Xは2%、9950Xは9%の差)と総合グラフの値は、9700Xを370fps→363fps(1% lowは249fps→242fps)としたときだけ一致するため、この記事では本文と総合グラフに合わせています。
16GB×1の検証とあわせて読むと
海外で話題になった検証の多くは、32GB×1ではなく16GB×1と16GB×2の比較です。「最初は16GBを1枚、あとでもう1枚足す」という買い方を想定しているためで、容量も16GBと32GBで違います。そのぶんを差し引いて読む必要があります。
- TechSpot(Hardware Unboxed)— 9700X、13本で平均12%・1% low 16%低下
- 2025年12月公開。DDR5-6000 CL30の同じキットから1枚抜いた比較で、RTX 5090・1080pの総合です。4Kでも平均9%・1% low 13%の差が残りました。タイトル別ではMarvel Rivalsが195fps→129fpsと大きく、Cyberpunk 2077はほぼ差がありませんでしたTechSpot(英語)
- Tom's Hardware — 通常版CPUで8〜11%、9800X3Dで2.8%低下
- 2026年7月公開。13本の総合で、Ryzen 5 7600Xが10.9%、Core Ultra 7 270K Plusが8.7%、Core i5-14600Kが8.3%、9800X3Dが2.8%下がりました。1080p・RTX 5090、AMDはDDR5-6000、IntelはDDR5-7200ですTom's Hardware(英語)
- ComputerBase — 9850X3Dで平均5%、フレームタイム8%低下
- 2026年1月公開。DDR5-5600 CL26、720p・RTX 5090という極端にCPU寄りの条件です。最も差が出たMarvel's Spider-Man 2では平均16%、フレームタイムで最大20%悪化しましたComputerBase(ドイツ語)
- PCGH — Gothic Remakeでは2枚のほうがP1 fpsが28%高い
- 2026年7月公開。Core Ultra 9 285K・RX 9070 XT環境で、DDR5-7200の1ランクキットを使って3本を比較し、Baldur's Gate 3はほぼ差なし、Cyberpunk 2077はP0.2 fpsで最大11%差でしたPCGH(ドイツ語)
TechSpotの9700X(16GB×1)は平均12%・1% low 16%、eTeknixの9700X(32GB×1)は平均8%・1% low 16%でした。タイトルもメモリのタイミングも違うので条件がそろった比較ではありませんが、1% lowはどちらも16%でした。1枚にしたときの落ち込みの大部分は、容量より帯域が半分になったことによると考えられます。32GBにしたからといって、1枚の弱点が埋まるわけではありません。
同じテーマなのに数字が割れる理由
「1枚でもほとんど変わらない」という記事と「2割落ちる」という記事が並んでいて、混乱した方もいると思います。数字がぶれる原因は主に4つです。
- CPUがX3D系かどうか
- ComputerBaseはX3D系CPUだけで測っており、Tom's Hardwareも見出しに9800X3Dの2.8%を掲げています。通常版のRyzenやIntelでは差が3倍前後(8〜11%)になります
- 平均fpsを見るか、1% lowを見るか
- 平均では1桁の差でも、1% lowでは2〜3割の差になるタイトルがあります。見出しの数字がどちらなのかを確認してください
- 解像度とGPUの重さ
- PCGH以外の4本はRTX 5090でCPU側の差を見やすくしています。RTX 5060クラスでGPUが先に頭打ちになる設定では、差は小さくなります。TechSpotもMarvel Rivalsについて、100fps強しか出ないGPUなら影響はかなり小さくなると書いています
- メモリの速度とタイトルの選び方
- DDR5-5600とDDR5-7200では1枚の帯域自体が違います。CS2のような軽いタイトルを多く入れると、総合の差は小さく見えます
差が出やすい場面、出にくい場面
ここまでの実測から、1枚と2枚の差が体感に結びつきやすいのは次のような場面です。
- 出やすい — CPUの処理が重いゲーム
- Spider-Man 2のような広いオープンワールド、The Riftbreakerのように大量のユニットを動かすゲーム、Cyberpunk 2077の人の多い街中など。1% lowが2割前後落ちる例が並びます
- 出やすい — 高リフレッシュレートで遊ぶとき
- 144Hzや240Hzを狙う設定では、GPUより先にCPUとメモリが限界になります。フルHDで高fpsを出したい人ほど影響を受けます
- 出にくい — 4KやGPUが限界の設定
- GPUの描画待ちが長くなるほど、メモリの差は隠れます。ただしTechSpotの4Kでも1% lowで13%差が残ったので、ゼロにはなりません
- 出にくい — 軽い対戦ゲーム
- CS2は9700Xで平均1.9%の差、363fpsと370fpsの違いでした。モニターのリフレッシュレートを大きく超えている範囲の差は、体感しにくいところです
内蔵GPUで遊ぶなら1枚は避けてください
グラフィックボードを積まず、Ryzen 7 8700GのRadeon 780Mのような内蔵GPUで遊ぶ場合は事情が変わります。内蔵GPUは専用のVRAMを持たず、メインメモリを描画に使います。上で見た帯域の差(ComputerBaseの書き込みで38GB/s対約60GB/s)のように帯域が大きく減る影響を、内蔵GPUは直接受けます。
内蔵GPUで1枚と2枚を同じ条件で比べた最近のゲーム実測は、信頼できるものを見つけられませんでした。そのため数字は出しませんが、Tom’s Hardwareも「内蔵GPUを使うならデュアルチャネルは必須」と明記しています。BTOの内蔵GPU機が1枚構成で売られている実例と、2枚にした場合の価格はグラボなし(内蔵GPU・APU)でゲームはできるかにまとめました。
DDR4ではどうか
DDR4は1枚の中にサブチャネルを持たないので、理屈の上では1枚にしたときの落ち込みがDDR5より大きくなります。ただ、DDR4で32GB×1と16GB×2を同条件で比べた最近のゲーム実測は見つかりませんでした。参考になるのはTom’s Hardwareの結果で、Core i5-14600Kでは、DDR5-7200の1枚が多くのタイトルでDDR4-3200のデュアルチャネル(8GB×4)より速く、Starfieldでは6.9%上回ったとしています。
BTO各社で32GB×1は選べるか
ここからは実際の買い方です。2026年10月12日に各社の製品ページとカスタマイズ画面を開いて、メモリの選択肢を確認しました。価格はすべて税込です。
- ドスパラ(THIRDWAVE・GALLERIA)— 32GB×1の選択肢なし
- Ryzen 7 7700+RTX 5060のTHIRDWAVE AD-R7A56Aは、黒の01Bが21万3,880円、白の01Wが20万8,880円(白が5,000円安い)。標準は16GB×1で、8GB×2へ+1万5,000円、16GB×2へ+5万6,100円、32GB×2へ+15万4,000円です。DDR4のRyzen 7 5700X機(AD-R7X56A)は8GB×2が+5,000円、16GB×2が+4万9,900円。GALLERIA XPR7M-R57-GDなどの上位機も加算額は同じでした
- パソコン工房 — 通常モデルに32GB×1の選択肢なし
- 16GB×1標準のLEVEL-M17B-144F-TKXW(23万9,800円)も、8GB×2標準のLEVEL-M88M-225F-TKXBなども、32GBは16GB×2の1択で+5万1,000円(DDR4機は+4万9,000円)でした
- マウスコンピューター(G TUNE・NEXTGEAR)— 32GB×1標準のモデルあり
- G TUNE FG-A7G7T(TGS2026出展記念モデル第2弾、Ryzen 7 7700・RTX 5070 Ti・1TB)は39万9,800円で、メモリは32GB×1(DDR5-5200)が標準です。選択肢は32GB×2(64GB)への+15万2,900円だけで、16GB×2は選べません。一方、確認したNEXTGEARの16GB×1標準機2機種(JG-A5G60のRyzen 5 7500F・RTX 5060版、JG-A7G70のRyzen 7 7700・RTX 5070版)は、8GB×2への変更が0円、16GB×2が+6万7,100円でした
- フロンティア — 確認した32GB搭載機は16GB×2
- ゲーミングPC特集ページで確認した範囲では、32GB搭載機はすべて16GB×2で、32GB×1は見当たりませんでした。確認した16GBモデル(FRGKB550シリーズ)は16GB×1で、スロットは2本のうち1本が空いています。カスタマイズでメモリ構成を変えられるかは確認できていません
- パソコンショップSEVEN — 32GBは16GB×2
- DDR4のZEFT R66AT・R66AY・R66BDは16GB×1標準で、16GB×2への変更が+2万9,800円でした
調べた範囲では、同じモデルで「32GB×1か16GB×2か」を選ばせてくれる会社はありませんでした。BTOで32GB×1に出会うのは、マウスのG TUNE FG-A7G7Tのように最初から1枚で組まれたモデルを選んだときです。パソコン工房の「Memory Re」シリーズのように、認定再生メモリを使うかわりに必ず1枚構成になる例もあります。その中身はBTOの「認定再生メモリ」搭載モデルは信用できるかで検証しました。
もうひとつ見えてきたのは、16GBのまま2枚にする費用の差です。マウスは0円、ドスパラは1万5,000円(DDR4機は5,000円)でした。一方、パソコン工房のLEVEL-M17B-144F-TKXWとSEVENのZEFTは8GB×2を選べず、2枚にするには32GB化(+5万1,000円、+2万9,800円)が必要です。32GBまでは要らないけれど1枚構成は避けたい、という場合はここも比べてください。製品ページで枚数を読み取る方法はゲーミングPCのスペック表の見方にまとめています。
32GB×1のG TUNE FG-A7G7Tは買っていいか
Ryzen 7 7700はX3D系ではない通常版なので、eTeknixの9700Xに近い差を見込んでおくのが安全です。CPUの重い場面で1% lowが1〜2割落ちる可能性があります。しかもBTOの標準メモリはDDR5-4800〜5200で、検証のDDR5-6000より1枚あたりの帯域がさらに狭いので、差は検証値と同じかそれ以上と見ておくのが安全です。ただしRTX 5070 TiでWQHD以上を遊ぶならGPU側が先に限界になる場面が増え、差は縮みます。
気になったときの手直しは2通りです。注文時に64GB(32GB×2)にする+15万2,900円か、あとで同じ32GBを1枚足すかです。後者は次の節で書くとおり、国内では思ったほど安くありません。
市販品では32GB×1のほうが高い
海外記事が「1枚で買う」ことを勧める前提には、価格があります。TechSpotは記事中で、16GB×1が100ドル、同じシリーズの16GB×2キットが255ドルという米国の例を挙げていました。1枚のほうが割安だから、1枚から始める意味があったわけです。
国内はどうか。2026年10月12日に価格.comで、DDR5-5600の製品を比べました。まず同じブランド・同じシリーズの組み合わせです。
Crucial DDR5-5600の価格.com最安値(2026年10月12日)
Crucial(無印)CT32G56C46U5(32GB×1)、CT2K16G56C46U5(16GB×2)、CT16G56C46U5(16GB×1)、CT2K32G56C46U5(32GB×2)。いずれもDDR5-5600 CL46
同じ32GBで、1枚のほうが2万700円高い結果です。上位のCrucial Proでも、32GB×1(CP32G56C46U5)が10万384円、16GB×2(CP2K16G56C46U5)が8万1,565円と、同じ向きでした。KingstonのFURY BeastやCORSAIRのVENGEANCEの32GB×1は、価格.comに販売店の掲載がありませんでした。
ただし、どのブランドでも1枚が高いわけではありません。KingstonのValueRAMでは、32GB×1(KVR56U46BD8-32)が7万7,800円で、同じシリーズの16GB×1(KVR56U46BS8-16、4万3,800円)を2枚買うより安くなっていました。同じシリーズの16GB×2キット(KVR56U46BS8K2-32)は販売店の掲載がなかったため、キット同士では比べられていません。そこでブランドをまたいで、最安同士でも比べました。DDR5の32GB×1で最も安かったのはKLEVV KD5BGUA80-56G460A(DDR5-5600)の6万9,800円です。16GB×2キットは、KOWIN KWEU560032が5万5,980円ですが取扱いは1店舗だけで、複数の店で買えるものではApacer FL.32GAC.PKRK2の6万2,800円が最安でした。複数店で買えるもの同士でも1枚のほうが7,000円高く、最安同士で比べても、1枚が安いという状況にはなっていません。
注意点がもうひとつあります。Micronは2025年12月にCrucialブランドの一般向け事業から撤退すると発表し、2026年2月末で出荷を終えるとしていました(StorageReview)。いま売られているCrucialは流通在庫で、価格がこの先も同じ傾向とは限りません。メモリ相場の見通しはメモリ不足は2028年まで続くのかで追いかけています。
「1枚で買って後で足す」は得か
32GB×1を選ぶ理由として挙げられるのが、後からもう1枚足せば64GBのデュアルチャネルになる、という点です。これは事実で、16GB×2から64GBにする場合と比べると構造上の利点があります。
- 利点 — 2枚のまま64GBにできる
- 16GB×2に16GB×2を足すと4枚挿しになり、速度が落ちます。AMDの公式仕様では、Ryzen 7 7700の対応速度は2枚ならDDR5-5200ですが、4枚ではDDR5-3600です。ドスパラのGALLERIAでも、128GB(32GB×4)を選ぶとDDR5-3600に下がると明記されていますAMD Ryzen 7 7700 仕様(英語)
- 弱点 — 同じものが後で手に入るとは限らない
- Crucialのように、ブランドごと店頭から消えることがあります。同じ型番でも中のチップが変わっていることがあり、Tom's Hardwareは同じ仕様の2枚なら「動くはず」と書きつつ、その「はず」に頼りすぎないよう注意しています
- 弱点 — 別々に買った2枚は相性の保証がない
- CORSAIRは公式に、同じ速度表記でも別のキット同士を組み合わせることを推奨していません。不安定になったり、EXPO/XMPが有効にできなかったりする場合があるためです。同じ型番をフリマや中古で1枚だけ探すのもおすすめしません。相性の保証がないうえ、不具合が出ても元の1枚と新しい1枚のどちらが原因か切り分けられないためですCORSAIR「Can I mix CORSAIR memory kits?」(英語)
- 弱点 — いまの国内価格では高くつく
- Crucial DDR5-5600で64GBにする場合、32GB×1を2回買うと19万960円、最初から32GB×2キットなら12万3,000円です。差は6万7,960円になります
いまの価格で計算すると、64GBが最終目標でも最初から32GB×2キットを買うほうが安くつきます。32GBで十分なら、16GB×2がもっとも安く、性能も上です。「1枚で買って後で足す」が合理的になるのは、1枚のほうが明らかに安い時期に、どうしても予算が足りない場合に限られます。eTeknixも、1枚が2枚組より3〜4割安い場合に初めて検討の余地が出る、という書き方をしていました。
BTOの16GB×1に、市販の16GBを1枚足す場合
BTOで多い16GB×1の標準構成から32GBにする経路も比べておきます。市販の16GB×1(CrucialのCT16G56C46U5やKingston ValueRAMのKVR56U46BS8-16)は、どちらも価格.com最安が4万3,800円でした。注文時のカスタマイズで16GB×2にする場合は、パソコン工房が+5万1,000円、ドスパラが+5万6,100円、マウスが+6万7,100円、SEVEN(DDR4機)が+2万9,800円です。
自分で1枚足すほうが安く見える会社もありますが、元の1枚と別々に買った2枚の組み合わせになり、前の節の相性の問題を抱えます。カスタマイズなら2枚とも店が組んで動作を確認した状態で届き、保証もそのまま効きます。差額が1万円前後なら、注文時に2枚にしておくほうが無難です。
それでも自分で足す場合は、いきなりEXPO/XMPを有効にせず、まず定格(JEDECの標準速度)のまま起動とメモリテストが通るかを確かめてください。問題がなければ、そのあとでEXPO/XMPを有効にして同じテストを繰り返します。定格で通らないなら組み合わせそのものが合っていない、EXPO/XMPで落ちるなら速度設定が合っていない、と切り分けられます。
32GBが本当に必要なタイトルかどうかはメモリ32GBが必要なゲーム一覧で確認できます。BTOの注文時に増やすか、あとから自分で増設するかの考え方はBTOのカスタマイズは何を足すべきかに、混在させるときの注意と取り付け手順はメモリ・SSD増設の正しいやり方にまとめています。
すでに1枚構成のPCを使っているなら
自分のPCが何枚挿しかは、タスクマネージャーの[パフォーマンス]→[メモリ]で、スロットの使用数を見れば分かります。DDR5の速度表示が半分に見える件はCPU-ZでDDR5-6000が3000MHzと表示される理由で解説しました。
1枚構成だと分かっても、今のゲームが快適なら急いで手を入れる必要はありません。カクつきが気になる、X3D系ではないCPUで高fpsを狙っている、内蔵GPUで遊んでいる、のどれかに当てはまるなら2枚化を検討してください。その場合も、既存の1枚に別の1枚を足すより、2枚組のキットに入れ替えるほうが相性の心配がありません。
よくある質問
Q.メモリは32GB×1と16GB×2のどちらがいいですか?
A.16GB×2をおすすめします。同じ速度・タイミングでそろえた実測では、Ryzen 7 9700Xで32GB×1のほうが平均fpsで約8%、1% lowで約16%低くなりました。2026年10月12日時点の国内価格でも、同じCrucialなら16GB×2キットのほうが約2万円、ブランドをまたいで複数店で買える最安同士でも約7,000円安く買えます。
Q.メモリ1枚と2枚の違いは何ですか?
A.メモリの通り道(チャネル)を1本使うか2本使うかの違いです。2枚挿しのデュアルチャネルでは帯域が約2倍になります。DDR5は1枚の中に2つのサブチャネルがあるのでDDR4ほどは落ちませんが、2枚のほうが速いことに変わりはありません。
Q.シングルチャネルにするとfpsはどれくらい落ちますか?
A.CPUとタイトルによって大きく変わります。通常版のRyzenやIntelでは平均fpsで8〜12%、1% lowで15%前後の低下が目安です。X3D系CPUでは平均2.5〜5%程度に収まる検証が多い一方、Spider-Man 2のようにX3Dでも10%前後落ちるタイトルもあります。GPUの負荷が高い設定では差は縮みます。
Q.BTOで32GB×1のモデルは避けるべきですか?
A.避けなければならないほどの差ではありませんが、同じ価格帯で16GB×2のモデルがあるならそちらを選んでください。2026年10月12日時点で確認したBTO5社では、同じモデルで32GB×1と16GB×2を選び分けられる例はなく、32GB×1はマウスコンピューターのG TUNE FG-A7G7Tのように標準構成で組まれているモデルでした。
Q.あとから同じ32GBを1枚足せばデュアルチャネルになりますか?
A.なります。ただし別々に買った2枚は動作の保証がなく、メーカーも別のキット同士の組み合わせは推奨していません。また2026年10月12日時点のCrucial DDR5-5600の価格では、32GB×1を2回買うより最初から32GB×2キットを買うほうが6万7,960円安い計算でした。同じ型番が後で手に入る保証もありません。
Q.内蔵GPUで遊ぶ場合も同じくらいの差ですか?
A.内蔵GPUのほうが影響は大きいと考えてください。内蔵GPUはメインメモリを描画に使うため、帯域が半分になる影響を直接受けます。同条件の信頼できる最新のfps実測は見つかりませんでしたが、内蔵GPUで遊ぶなら2枚構成は必須です。
まとめ・次に読みたい記事
32GB×1と16GB×2の差は、平均fpsで見ると1桁%です。カクつきに近い1% lowで見ると、通常版のCPUでは1〜3割落ちるタイトルがあります。X3D系CPUなら小さく、通常版のCPUでCPUの重いゲームを高fpsで遊ぶほど大きくなります。どちらでも遊べなくなることはありませんが、差は確かにあります。
そして2026年10月時点の国内では、32GB×1は「安いけれど遅い」選択肢ですらなくなっています。Crucialの同じ速度の製品では16GB×2のほうが約2万円安く、最安同士で比べても1枚が安いわけではありません。BTOでも32GB×1を選ばされる場面はほとんどありません。迷ったら16GB×2、64GBまで見据えるなら最初から32GB×2。この順で考えれば外しません。メモリ選び全体の考え方はゲーミングPCのメモリの選び方をご覧ください。



