BIOSを開くと必ず目に入る「Resizable BAR」の項目。有効にすれば速くなると聞いて何となくオンにしたものの、実際にfpsが変わった実感はない。逆に「ReBARを切ったら安定した」という書き込みも見かけて、結局どちらが正解なのか分からないまま放置している人は多いと思います。
この記事の結論を先に言うと、Resizable BARの効果はゲームのジャンルとGPUの組み合わせで大きく分かれます。オープンワールドや大容量テクスチャを扱うタイトルでは体感できる差が出る一方、対戦系や軽量なタイトルではほぼ誤差です。さらに、NVIDIAはゲームごとに個別審査してドライバー側のホワイトリストに登録する方式を採っているため、BIOSで有効にしただけでは実際には使われていないゲームがあります。ごく一部の組み合わせでは、有効にすることでかえって不安定になる報告もあります。
Resizable BARは2021年にRTX 30シリーズと共に登場した機能で、検証記事の多くもその時期のデータのまま止まっています。この記事では、現行世代のGPUや2026年に入ってからのNVIDIA App側の仕様変更まで踏まえて、効果が出るケース・出ないケース・むしろ切るべきケースを整理します。
そもそもResizable BARとは何なのか
GPU、特にCPUがそのメモリ空間にアクセスできる範囲を指す「BAR(Base Address Register)」という仕組みに関わる機能です。
PCI Expressの規格上、従来のBARサイズは256MBまでという制限がありました。CPUがGPUのVRAM(数GB〜数十GB)にアクセスする際、この256MBの窓を何度も開け閉めしながら少しずつ転送する必要があり、そのたびにオーバーヘッドが生じていました。Resizable BARは、このBARのサイズをGPUのVRAM全体まで拡張できるようにする仕様で、CPUがVRAM全体に一度にアクセスできるようになります。
これに伴って必要になるのが「Above 4G Decoding」です。BARを4GBを超えるサイズまで拡張すると、そのぶん広いメモリアドレス空間をシステム全体に割り当てる必要があり、Above 4G Decodingはその64bitアドレス空間の割り当てを許可する設定です。多くのマザーボードでは、Above 4G Decodingを先に有効にしないとResizable BARの項目自体が表示されない仕組みになっています。
呼び方はメーカーによって異なりますが、指している技術はほぼ同じです。
- NVIDIA / Intel Resizable BAR
- BIOS上では「Re-Size BAR Support」と表記されることもあります。GeForce RTX 30シリーズ以降、Intel Arcシリーズが対応します
- AMD Smart Access Memory(SAM)
- 技術的な中身はResizable BARと同じで、AMDが自社のRyzen CPU + Radeon GPUの組み合わせに向けて付けたブランド名です。Radeon RX 6000シリーズ以降が対応します
- 対応に必要な条件
- CPU・マザーボード(BIOS)・GPU(VBIOS)・GPUドライバーの4つすべてが対応している必要があります。どれか1つでも非対応だと、他が対応していても機能しません
対応する主な組み合わせは、NVIDIA公式の情報によれば次のとおりです(NVIDIA公式)。
- 対応CPU(Intel)
- 第10世代Core以降。ただし第10世代はZ490・H470・B460・H410チップセットに限られ、第11世代以降のチップセットはすべて対応します
- 対応CPU(AMD)
- Zen 3以降のRyzen(Ryzen 3/5/7/9の5000シリーズ以降)で、400・500シリーズ以降のチップセットが対象です
- 対応GPU(NVIDIA)
- GeForce RTX 30シリーズ以降。RTX 3090・3080・3070・3060 Tiなど一部モデルは、発売時点では非対応で、後日のVBIOS更新で対応した経緯があります
BTOパソコンを購入した場合、条件を満たしていれば多くは出荷時に有効化されています。自分でパーツを組んだ場合や、マザーボードのBIOSを更新した直後は無効に戻っていることがあるため、確認する価値があります。確認方法とBIOSでの具体的な設定場所はゲーミングPCを買ったらやることにまとめてあるので、そちらを参照してください。
なぜ「有効にしたのに効果を感じない」ことがあるのか
ここがこの記事でいちばん伝えたいポイントです。
Resizable BARは、BIOSで有効にして、GPU-ZやNVIDIA Appで「Enabled」と表示されれば、それだけで全ゲームに効果が及ぶと思われがちです。しかし実際のNVIDIAドライバーは、もう一段階、ゲームごとの個別審査を挟んでいます。
NVIDIAはResizable BARを2021年に対応させた当初から、「タイトルによっては性能が下がる場合がある」ことを公式に認めており、そのためゲームを一つひとつテストしたうえで、効果がプラスに出ると確認できたタイトルだけをドライバー側のプロファイル(ホワイトリスト)に登録し、有効化する方式を採ってきました(NVIDIA公式)。つまり、BIOSとシステム全体では有効になっていても、遊んでいるゲームがそのホワイトリストに載っていなければ、実際にはResizable BARは使われていません。海外メディアXDA Developersの2026年8月の記事でも、この二段階の仕組みが改めて指摘されています(XDA Developers)。
この状況は2026年に入って変わり始めています。NVIDIA Appのベータ版(11.0.9.239)に、ゲームごとにResizable BARを手動で「自動・有効・無効」に切り替えられる機能が追加されました。設定場所は「グラフィックス」タブでゲームを選び、「プログラム設定」の「ドライバー設定」内にある「Resizable BAR」の項目です。この機能自体は2026年8月下旬に発表され、実際に機能するには対応するGame Ready Driverの適用が必要とされていました(TweakTown)。これにより、NVIDIAのホワイトリストに載っていないゲームでも、自己責任で個別に有効化を試せるようになりました。ただし前述のとおりホワイトリスト外のタイトルは効果が未検証のまま強制することになるため、フレームタイムの乱れなど不安定な挙動が出ないか、有効化した後に自分の目で確認することが前提になります。
AMD・Intelにはこうした細かいゲーム単位の切り替えUIは(2026年9月時点で)公開されておらず、Above 4G DecodingとSAM(Resizable BAR)をBIOSで有効にすれば、対応する全ゲームで動作する仕組みです。裏を返すと、NVIDIAのような個別の安全弁がない分、後述する不安定化の報告が出た場合はBIOS側で丸ごと無効にする以外の対処がしにくいとも言えます。
結局何パーセント速くなるのか 数字がバラつく理由
検索すると「12%速くなる」「2〜4%」「14%」など、情報源によって数字がまちまちに出てきます。これは検証がいい加減というより、測っている対象がそもそも違うことが主な原因です。
- NVIDIA公式(2021年、RTX 30シリーズ)
- ホワイトリストに登録された対応タイトルに限定した検証で、『数パーセントから最大12%』の向上があったとしています。同時に『性能が下がるタイトルもある』ことも明記しており、この記述こそがホワイトリスト方式を採る理由になっています
- TechPowerUp実測(2021年、RTX 3090/3080/3070/3060 Ti・22タイトル)
- 解像度別・タイトル別に幅広く実測したところ、平均では2〜4%程度の向上にとどまったと報告されています。『few percent』という表現どおり、体感しにくい差のタイトルが多く含まれていたことになります
- 現行世代(RTX 50・RX 9000シリーズ)のまとまった検証
- 大手メディアによる網羅的なReBAR単体比較は、2026年9月時点でもほとんど見当たりません。個人勢のベンチマーク動画で、Forza Horizon 6のRTX 5080において特定シーン(降雨時の描写など)でfpsが51から77まで伸びたとする報告はありますが、単一チャンネルによる限定的な検証であり、大手メディアによる追試は確認できていません
まとめると、「オープンワールド・レース系の一部タイトルでは二桁%に届くこともあるが、対応タイトル全体を平均すると数%程度」というのが、現時点で裏付けの取れる範囲の実態に近いと考えられます。
効果が大きいジャンル
Resizable BARは、CPUとGPUの間で大量のデータを細切れにやり取りする場面ほど効果が出やすい機能です。具体的には次のようなタイトルが該当します。
- 広大なオープンワールドタイトル
- マップを移動しながら大量のテクスチャ・オブジェクトデータを継続的にストリーミングするため、CPUからGPUへのデータ転送効率が結果に直結しやすいジャンルです。NVIDIAが2021年に公開した対応タイトル一覧にも、Cyberpunk 2077やRed Dead Redemption 2など、この系統のタイトルが多く含まれていました
- 高速で景色が流れるレースゲーム
- 常に高解像度のテクスチャを高速で切り替え続ける必要があり、XユーザーやYouTubeの検証でForza HorizonシリーズやForza Motorsportにおいて大きな向上を報告する例が複数あります。ジャンルの特性上、効果が出やすい部類と考えられます
- 高解像度テクスチャパックを導入したタイトル
- テクスチャ品質を上げるほどVRAMとのやり取りが増えるため、Resizable BARの恩恵を受けやすくなります。4K解像度でのプレイや高精細MODを導入している場合は、特に確認する価値があります
効果がほぼないジャンル
一方で、次のようなタイトルでは体感できるほどの差は出にくいと考えられます。
- 対戦系・競技系タイトル
- VALORANTやCS2のような軽量なタイトルは、そもそもテクスチャ量が少なく、ボトルネックがCPU側の処理(描画コール数やゲームロジック)にあることが多いジャンルです。GPU-CPU間のデータ転送効率を上げるResizable BARの効果が出る余地自体が小さいと考えられます
- DirectX 11世代のエンジンを使う古めのタイトル
- 海外メディアXDA Developersの分析でも、以前の制約に最適化されたエンジンやDX11対応タイトルでは効果が乏しい傾向が指摘されていますXDA Developersの記事
- そもそもNVIDIAのホワイトリストに登録されていないタイトル
- 前述のとおり、システム全体で有効になっていても、そのゲームがドライバーのプロファイルに登録されていなければ実際には機能しません。効果を感じない場合、まずこれを疑う価値があります
逆に不安定になる・無効化が検討されるケース
Resizable BARは「有効にして損はない」機能として紹介されがちですが、無条件にそう言い切れるわけではありません。
- NVIDIA自身が『性能が下がるタイトルもある』と明言している
- 2021年の公式発表で、NVIDIAは対応タイトルをテストする理由について『性能が向上するタイトルがある一方、性能が下がるタイトルも存在するため』と説明しています。これが、全タイトル一律ではなくゲームごとの個別審査を行っている根拠ですNVIDIA公式
- 特定のGPU構成でコード43につながる報告がある
- Above 4G DecodingとResizable BARの組み合わせが、まれにグラフィックボードの認識異常(コード43)につながるという報告があります。詳しい切り分け方はグラフィックボードが認識されない・コード43エラーの原因と対処法で扱っています
- 特定タイトルでSteamコミュニティ上に不安定化の報告がある
- 海外のフォーラムやSteamコミュニティでは、DirectX 12を使うタイトルの一部で、Resizable BAR(AMD環境ではSmart Access Memory)を有効にしたままだとフレームタイムが乱れる、まれに画面が固まるといった報告が見られます。すべてのユーザーで再現するわけではなく、ドライバーバージョンやBIOSの世代による差も大きいため、確定した不具合というより『相性が悪い組み合わせがある』程度に捉えてください
- 当サイトのDELTA FORCE攻略記事でも無効化を対処法として案内
- DirectX 12関連の処理でカクつく場合の切り分けとして、[DELTA FORCEの推奨スペック解説](/articles/delta-force-gaming-pc/)ではSmart Access Memory(Resizable BAR)の一時的な無効化を挙げています。特定のタイトルに限った対処法である点に注意してください
なお、Intel Arc搭載GPUは事情が異なります。Intel公式のサポート文書では、Resizable BARが無効でもArcシリーズは動作するとしたうえで、『最適なパフォーマンスにはResizable BAR(またはSmart Access Memory)の有効化が必要』と明記されています(Intel公式サポート)。他社と違い無効化によるデメリットが大きい設計のため、無効にする発想自体が基本的にありません。実際、CoD MW4の推奨スペック解説でもIntel Arc搭載機はResizable BARを有効にするよう案内しています。
AMD Radeon RX 9000シリーズ(RDNA4世代)では、さらに前提条件が変わります。AMD公式のサポート情報によれば、この世代はUEFI専用での動作を前提に最適化されており、旧来のレガシーBIOS互換モード(CSM)を有効にしたままだと、Smart Access Memoryを含む一部機能が正しく動作しなくなるとされています。CSMを使っている場合はUEFIモードへの切り替えも合わせて確認してください。
有効になっているか確認する方法
確認方法自体は難しくありません。
- GPU-Zで確認する
- TechPowerUpが配布する無料ツールです。メイン画面の「Resizable BAR」の項目が「Enabled」になっていれば、システムレベルでは有効です。もっとも手軽な確認方法です
- NVIDIA Appで確認する(NVIDIA環境)
- 「システム」タブのディスプレイ情報から確認できます。対応するGame Ready Driver以降であれば、「グラフィックス」タブの個別ゲーム設定からゲームごとの状態も確認・変更できます
- BIOSで確認する
- 起動時にDeleteキーやF2キーでBIOSに入り、「Above 4G Decoding」と「Resizable BAR」(または「Re-Size BAR Support」)の両方が有効になっているか確認します
いずれの方法でも「システム全体では有効」までしか分かりません。特定のゲームで効いているかどうかを厳密に知りたい場合は、そのゲームで実際にfpsやフレームタイムを計測し、BIOS側でResizable BARを一時的に無効にした状態と比較するのが確実です。ゲーミングPCの初期設定全般についてはゲーミングPCを買ったらやることにまとめてあります。
有効にすべきか 判断基準
- 特に不具合を感じていないなら有効のままでよい
- 対応条件を満たしているなら、多くのタイトルでは有効にしておいてマイナスになることはありません。NVIDIA環境ではホワイトリスト方式が安全弁になっているため、放置していても大きな実害は出にくい設計です
- オープンワールド・レース系を中心に遊ぶなら積極的に確認する価値がある
- 効果が出やすいジャンルなので、有効になっているかをGPU-Zなどで一度確認しておくと安心です
- 対戦系・軽量タイトルが中心なら過度な期待はしない
- 有効にしても体感できる差はほとんど出ません。設定自体は残しておいて構いませんが、fps向上のために積極的に触る優先度は低い項目です
- 特定のゲームだけ不安定・コード43が出る場合は個別に無効化を試す
- システム全体で無効にする前に、NVIDIA Appの個別ゲーム設定(対応環境のみ)やゲーム内の起動オプションで、そのタイトルだけ無効化できないか確認してください。全体を無効にすると、他のタイトルで得られていた効果まで失うことになります
よくある質問
Q.Resizable BARは意味ないというのは本当ですか?
A.タイトルによります。NVIDIA公式の検証でも平均すると数パーセントにとどまり、対戦系や軽量なタイトルではほぼ体感できません。ただしオープンワールドやレース系の一部タイトルでは二桁%の向上が報告されることもあり、一律に『意味ない』とは言い切れません。
Q.Above 4G Decodingとは何ですか?Resizable BARとの違いは?
A.Above 4G Decodingは、4GBを超えるメモリアドレス空間をシステムに割り当てることを許可する設定です。Resizable BARを使うにはこの設定が前提になるため、多くのマザーボードではAbove 4G Decodingを先に有効にしないとResizable BARの項目自体が表示されません。
Q.BIOSで有効にしたのに、GPU-Zで見ても効果を感じません
A.NVIDIA環境では、ゲームごとにドライバー側のホワイトリストに登録されていないと実際には機能しません。2026年8月以降のNVIDIA Appでは、対応するGame Ready Driver適用後にゲームごとの手動切り替えができるようになっています。
Q.AMDのSmart Access MemoryとResizable BARは別の機能ですか?
A.技術的な中身は同じです。Smart Access MemoryはAMDがRyzen CPUとRadeon GPUの組み合わせに付けたブランド名で、NVIDIAやIntel環境でのResizable BARと同じPCI Expressの仕様に基づいています。
Q.ゲームが不安定になったらまず何を疑えばいいですか?
A.そのゲームだけで起きているなら、まずResizable BARを一時的に無効にして再現するか確認してください。NVIDIA Appの個別ゲーム設定が使える環境なら、システム全体ではなくそのゲームだけ無効化する方法もあります。デバイスマネージャーでコード43が出ている場合は原因が別にある可能性もあるため、専用の切り分け記事もあわせて確認してください。
Q.Intel Arcを使っています。無効にしてもいいですか?
A.おすすめしません。Intel公式もArcシリーズでは最適なパフォーマンスにResizable BARの有効化が必要と明記しており、他社GPUと比べて無効化による性能低下の影響が大きい設計です。
まとめ
Resizable BARは、対応条件さえ満たしていれば有効にしておいて基本的に損はない機能ですが、「有効にすれば必ず速くなる」と単純化できるものでもありません。NVIDIA自身がゲームごとに個別審査してホワイトリストに登録している時点で、効果にばらつきがあることは公式に織り込み済みです。
オープンワールドやレース系を中心に遊んでいるなら、GPU-ZやNVIDIA Appで有効になっているか一度確認しておく価値があります。逆に対戦系が中心なら、この設定にこだわる優先度は高くありません。そして、特定のゲームだけ不安定になる場合は、疑わしいゲームだけを個別に無効化することから試し、システム全体の無効化は最後の手段として考えてください。



